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北朝鮮軍の基準では射程600kmは中等射程?

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮の公式発表の発射地点は黄海南道長淵郡、着弾地点は咸鏡北道清津市の無人島

 3月15日、北朝鮮は前日14日朝に発射した短距離弾道ミサイル2発について発表しました。公表された写真を見る限り、KN-23と呼ばれるイスカンデル型の短距離弾道ミサイルです。(※KNナンバーはアメリカ軍の命名したコードネーム。)

訓練には、軍部隊管下第11火力襲撃中隊が参加し、地対地戦術弾道ミサイル2発を中等射程体制で教育のために模範射撃した。

黄海南道長淵郡一帯で発射されたミサイルは、611.4キロメートル離れた咸鏡北道清津市青岩区域芳津洞前の目標島であるピ島を精密打撃した。

出典:「西部前線の軍部隊がミサイル発射訓練」:朝鮮中央通信(2023年3月15日)、日本語版より

 着弾場所の日本海沿岸の無人島「ピ島」は漢字では「避島」です。(朝鮮中央通信中国語版で確認)

  • 朝鮮:피도
  • 英語:Phi Islet
  • 中国:避岛
  • 日本:ピ島

 推定位置は地図座標(42.128051, 130.204080)になります。なお朝鮮語で「島」は도(ト)と섬(ソム)のどちらでも使うので、ピ島は피도(ピト)または피섬(ピソム)になります。北朝鮮の公式発表での表記は피도(ピト)でしたが、Google地図では피섬(ピソム)と表記されていました。

  • 避島(ピ島)
  • 피도(ピト)
  • 피섬(ピソム)
Google地図より咸鏡北道清津市青岩区域芳津洞の沖の無人島「ピ島」
Google地図より咸鏡北道清津市青岩区域芳津洞の沖の無人島「ピ島」

射程600kmは中等射程?

 今回の発表で北朝鮮は射程約600kmのこの射撃演習を「中等射程」と表現しています。しかし600kmは一般的には弾道ミサイルとしては短距離弾道ミサイル(SRBM、射程1000km以下)になります。

  • 朝鮮:중등사거리체제
  • 英語:medium-range system
  • 中国:中等射程方式
  • 日本:中等射程体制

 北朝鮮の朝鮮中央通信英語版の表現では「medium-range」です。一般的に弾道ミサイルでこの表現は準中距離弾道ミサイル(MRBM、射程1000~3000km)に該当します。

 ただし弾道ミサイルの射程区分は厳密な世界共通の基準というわけではないので、各国の軍隊で独自の射程の基準を持つことはそれほどおかしくはありません。北朝鮮軍の中では射程600kmは中等射程扱いなのでしょう。

 あるいはKN-23は最大射程800km飛べるのに対して射程600kmに抑えて発射した行為を中等射程と表現しているのかもしれません。

Goocle地図より筆者作成、黄海南道長淵郡から半径約600kmの円
Goocle地図より筆者作成、黄海南道長淵郡から半径約600kmの円

北朝鮮2023年ミサイル発射数:3月14日時点で18発

  • 1月1日午前2時50分ごろ、600mm超大型ロケット弾1発
  • 2月18日午後5時21分ごろ、ICBM「火星15」1発
  • 2月20日午前7時20分ごろ、600mm超大型ロケット弾2発
  • 2月23日未明、戦略巡航ミサイル「ファサル」4発
  • 3月9日午後6時20分ごろ、新型小型短距離弾道ミサイル6発
  • 3月12日未明、戦略巡航ミサイル(潜水艦発射)2発
  • 3月14日午前7時41分ごろ、KN-23短距離弾道ミサイル2発
軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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