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北朝鮮が巡航ミサイルを潜水艦から水中発射

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より2023年3月12日「戦略巡航ミサイルの水中発射訓練」

 北朝鮮は3月13日に、前日の12日未明に潜水艦からの巡航ミサイル発射訓練を行ったと発表しました。日本海側の咸鏡南道の景浦湾からミサイル実験潜水艦「8.24英雄艦」から2発を発射したとしています。おそらく先月に「ファサル2(矢2)」と名称が公表された巡航ミサイルの水中発射型だと考えられます。

北朝鮮・労働新聞より2023年3月12日「戦略巡航ミサイルの水中発射訓練」
北朝鮮・労働新聞より2023年3月12日「戦略巡航ミサイルの水中発射訓練」

 発射された巡航ミサイルは日本海を8の字に1500km飛翔、7563秒~7575秒間(約2時間6分)飛行したと発表されています。諸外国の平均的な亜音速巡航ミサイルと比べると平均速度がやや遅く、性能秘匿の為に発表数値は一部が意図的に変更してある可能性があります。あるいは全飛行を超低空のまま飛んでいたので速度が遅めだったのかもしれません。

発射方法は垂直発射筒か、それとも魚雷発射管か

 北朝鮮のミサイル実験潜水艦「8.24英雄艦」は弾道ミサイル垂直発射筒はセイル(艦橋)の後方に一体化されて装備されています。これまで確認されているのは水中発射弾道ミサイル「北極星」シリーズと「KN-23水中発射型」を1発のみ搭載して試験を行ってきました。しかし今回は巡航ミサイル2発なので新たな方法で試験されている筈です。

  1. 弾道ミサイル垂直発射筒1本分のスペースに巡航ミサイル垂直発射筒2本分を搭載する改修が行われた。
  2. 魚雷発射管から巡航ミサイルを発射した。

 考えられる方法はこの二通りです。巡航ミサイルは細いので弾道ミサイル1本分のスペースに複数本搭載することも可能です。ただし発射の様子を見る限り巡航ミサイルは海面直後から斜めに上昇しており、垂直発射筒ではなく魚雷発射管(船体の水平方向に装着されている)の方から発射された可能性があります。

 もしも巡航ミサイルが魚雷発射管から撃てた場合、弾道ミサイル搭載専用設計ではない普通の潜水艦からも巡航ミサイルを水中発射が可能になるので、北朝鮮海軍の潜水艦戦力の有用性が飛躍的に向上してしまう可能性があります。

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北朝鮮2023年ミサイル発射数:3月12日時点で16発

  • 1月1日午前2時50分ごろ、600mm超大型ロケット弾1発
  • 2月18日午後5時21分ごろ、ICBM「火星15」1発
  • 2月20日午前7時20分ごろ、600mm超大型ロケット弾2発
  • 2月23日未明、戦略巡航ミサイル「ファサル」4発
  • 3月9日午後6時20分ごろ、新型小型短距離弾道ミサイル6発
  • 3月12日未明、戦略巡航ミサイル(潜水艦発射)2発

ミサイル種類別

  • ICBM×1 ※大陸間弾道ミサイル
  • SRBM×9 ※短距離弾道ミサイル
  • GLCM×4 ※地上発射巡航ミサイル
  • SLCM×2 ※水中発射巡航ミサイル
軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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