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北朝鮮が新型小型短距離弾道ミサイル6発同時発射

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練

 北朝鮮は3月9日夕方にミサイルを発射、韓国軍の観測では北朝鮮の西部から黄海に向けて短距離弾道ミサイルが発射されたと見られていました。そして北朝鮮は翌日の3月10日にそのミサイルの発射の様子を公開しました。

新型小型短距離弾道ミサイル6発同時発射

 少なくとも6発同時発射。公開された写真を見る限り、昨年の2022年4月17日に初公開(発射はその前日)された新型小型短距離弾道ミサイルと同型のミサイルです。今回の発射では金正恩と娘が視察しており、火星砲兵部隊の第8火力襲撃中隊の発射訓練とあります。新型小型短距離弾道ミサイルは火星砲の名称が与えられているようですが、型番はまだ発表されていません。

北朝鮮・労働新聞より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練
北朝鮮・労働新聞より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練

北朝鮮・朝鮮中央通信より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練
北朝鮮・朝鮮中央通信より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練

・最大高度25km

・水平距離110km

・最高速度マッハ4以下

関連記事:北朝鮮が初登場の新型ミサイルを公開。小型の短距離弾道ミサイル(2022年4月17日)

 昨年の観測数値で分かる通り、新型小型短距離弾道ミサイルは短距離弾道ミサイルとしては射程が短く高度はかなり低く、遠くからではレーダーで探知し難いので(地球の丸みの陰に隠れてしまう)、韓国軍は今回の2023年3月9日の発射では完全に捕捉し切れていませんでした。韓国軍が3月9日の北朝鮮ミサイル発射当初には1発だと発表して後から複数発の可能性と訂正したのは、ある程度は無理からぬことです。

 北朝鮮の新型小型短距離弾道ミサイルは6輪トラックに4連装発射機が搭載されており、今回の訓練で6両が確認されています。ミサイルの飛行性能はアメリカ軍のATACMS初期型に近くやや射程が短く、もし同等の大きさと性能ならば弾頭重量は500kg前後かそれより少し重いと推定できます。ただしATACMSには無いジェットベーンが確認されており、むしろロシア軍のイスカンデルの技術に近いミサイルです。

発射地点は人工湖「태성호 (台城湖)」の半島

 なお今回の発表写真から、3月9日の発射訓練は湖の半島部分から発射されたことが判明しています。

北朝鮮・朝鮮中央通信より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練
北朝鮮・朝鮮中央通信より第8火力襲撃中隊のミサイル発射訓練

 北朝鮮の平安南道江西郡と龍岡郡にまたがる灌漑用人工湖「태성호 (台城湖)」に突き出した、島が繋がった半島のような場所にミサイル発射機が展開しています。発射方向は正確には分かりませんが、おおよそ南西に向けているようです。なおこの湖の沿岸に有名な平壌ゴルフ場があります。

Google地図より「태성호 (台城湖)」
Google地図より「태성호 (台城湖)」

地図座標:38.907250, 125.439900

Google地図より「태성호 (台城湖)」から110kmの円
Google地図より「태성호 (台城湖)」から110kmの円

 新型小型短距離弾道ミサイルの飛行距離を、仮に昨年2022年4月16日に発射した際の水平距離110kmを今回2023年3月9日も飛んだとした場合、予想される着弾推定地点はこのようになります。もしも南西方向に発射していた場合、黄海南道の龍淵郡の沿岸付近の着弾となります。

北朝鮮2023年ミサイル発射数:3月9日時点で14発

  • 1月1日午前2時50分ごろ、600mm超大型ロケット弾1発
  • 2月18日午後5時21分ごろ、ICBM「火星15」1発
  • 2月20日午前7時20分ごろ、600mm超大型ロケット弾2発
  • 2月23日未明、戦略巡航ミサイル「ファサル」4発
  • 3月9日午後6時20分ごろ、新型小型短距離弾道ミサイル6発

大陸間弾道ミサイル×1

短距離弾道ミサイル×9

巡航ミサイル×4

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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