Yahoo!ニュース

極超音速滑空兵器「アヴァンガルト」の運搬手段「ストレラ」

JSF軍事/生き物ライター
左:ロシア軍広報より「アヴァンガルト」、右:比較用「ストレラ」のフェアリング

 13日、ロシア軍広報「TVチャンネル・ズヴェズダ」がロシア軍の極超音速滑空兵器「アヴァンガルト(Авангард)」の映像を初公開しました。アヴァンガルトは大陸間弾道ミサイル級の射程を持つ極超音速滑空ミサイルで、2018年3月1日に存在を初めて公式発表された時にはイメージCG動画と製造中の部品の一部が映っていただけでした。

 ただし今回公開されたのは運搬手段のロケット部分だけで、肝心の中身の滑空翼体はフェアリングの中に納まっていて見えません。そして公開されたのは衛星打ち上げロケット「ストレラ(СТРЕЛА)」そのものでした。ストレラはNPOマシノストロエニヤ設計局の大陸間弾道ミサイル「UR-100N UTTKh(УР-100Н УТТХ)」から派生した衛星打ち上げロケットです。(※地対空ミサイルのストレラとは別物)

Внешний вид баллистической ракеты «Авангард» впервые показали на видео(弾道ミサイル「アヴァンガルト」の外観が初めて動画で披露された)

ロシア軍広報「TVチャンネル・ズヴェズダ」よりアヴァンガルト
ロシア軍広報「TVチャンネル・ズヴェズダ」よりアヴァンガルト

 フェアリングの形状および細かい部品の特徴がストレラと全く同一です。アヴァンガルトの打ち上げロケットには大陸間弾道ミサイル「UR-100N UTTKh」を用いることは既に公表済みだったので、その派生型であるストレラが用いられるのは自然なことです。

 ただしこれではアヴァンガルト初公開とはいっても見せられているのは既知のロケットであるストレラに過ぎません。ロシア軍はまだアヴァンガルトの秘密を公開する積りは全く無かったようです。

 今回判明したのはアヴァンガルトの運搬手段は大陸間弾道ミサイル「UR-100N UTTKh」の派生型である衛星打ち上げロケット「ストレラ」そのものであり、滑空翼体はストレラのフェアリング内に収まる大きさであるということくらいです。

ОСМИЧЕСКИЙ РАКЕТНЫЙ КОМПЛЕКС «СТРЕЛА» NPOマシノストロエニヤ公式サイトより「宇宙ロケット複合体ストレラ」。フェアリング内の寸法が記載。

 また2018年3月1日にロシア国防省から公開されたアヴァンガルトの映像(イメージ動画および製造過程の部品の一部)を見比べてみます。

Комплекс «Авангард» с гиперзвуковым планирующим крылатым блоком(極超音速滑空翼体を搭載した複合体アヴァンガルト)

ロシア国防省公開動画よりアヴァンガルトの製造中の部品
ロシア国防省公開動画よりアヴァンガルトの製造中の部品

 公開動画のアヴァンガルトの部品らしき物は詳しい説明が何も無かったので、何の部品かは不明です。円錐形をしているので、当初はフェアリングかと思われていました。しかし・・・

参考比較:上写真はアヴァンガルト2018年公開、下写真は2020年公開
参考比較:上写真はアヴァンガルト2018年公開、下写真は2020年公開

 新しく公開されたアヴァンガルトの滑空翼体の運搬手段である衛星打ち上げロケット「ストレラ」のフェアリングとは角度が全く違います。それではこれはアヴァンガルトの滑空翼体の一部なのでしょうか? 

 しかし2018年公開のイメージ動画の滑空翼体の形状とは全く違います。イメージ動画の滑空翼体はリフティングボディのウェーブライダーです。しかし「部品」は円錐形です。

ロシア国防省公開動画よりアヴァンガルト滑空翼体のイメージCG
ロシア国防省公開動画よりアヴァンガルト滑空翼体のイメージCG

 一体どこに使われている部品なのか、現時点では謎は深まるばかりです。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

JSFの最近の記事