ドイツがアメリカ製「核攻撃機」の購入を決断

ドイツ国防省よりトーネード戦闘機。2030年に運用終了予定

 ドイツ国防省は21日、老朽化し2030年に運用が終了する予定のトーネード戦闘機の後継として、最大93機の欧州共同開発戦闘機ユーロファイターと共に45機のアメリカ製F/A-18E戦闘機を購入する方針を示しました。合計138機の戦闘機を購入することになります。なおF/A-18E戦闘機の45機中15機が派生型のEA-18G電子戦機となる予定です。

 トーネード1機種の後継に2機種を買うのは訓練や整備部品の用意などで余計に手間が掛かり、無駄な費用が掛かってしまいます。しかしドイツにはそうせざるを得ない事情がありました。それはドイツがアメリカと核兵器シェアリングを行っており、代替するトーネード戦闘機がB61戦術核爆弾による核攻撃任務を担っていたことが大きく影響しています。

 ドイツが新たに購入する138機の戦闘機のそれぞれの購入理由は以下の通りです。

  • ユーロファイター 93機 (国内産業保護目的)
  • F/A-18E 30機 (核攻撃用)
  • EA-18G 15機 (電子戦用、核攻撃機の支援)

アメリカ製F-35戦闘機を国内産業保護などを理由に選ばず

 実はドイツ空軍はF-35戦闘機を欲しがっていました。それは今すぐ買えるステルス戦闘機がF-35しか無かったからでした。レーダーに映り難いステルス戦闘機と非ステルス戦闘機では空中戦能力を含めて性能差が隔絶していて、性能面で考えればF-35一択でした。またF-35は近い将来にB61戦術核爆弾の運用能力が与えられる予定で、隠密に侵入できるステルス戦闘機は核攻撃任務の観点からも理想的な機材でした。

 しかしドイツ政府はフランスと新型ステルス戦闘機FCAS開発計画を結びます。ドイツ産業の保護の為、フランスとの付き合い、ドイツの自主性といった様々な観点から次期主力となるステルス戦闘機はFCASとしたいがために、F-35は買わないことに決めたのです。FCASは今から開発するので2040年に実戦配備を予定しています。つまり2030年までに退役するトーネード戦闘機の後継には全く間に合いません。そこでドイツで既に製造・配備しているユーロファイターを間に合わせの繋ぎとして買い足すことにしました。

 けれども重大な問題が起きてしまいます。ユーロファイターは核攻撃能力が付与されておらず、今から火器管制システムに核攻撃能力を適合しようとしたらトーネードを更新する時期までに改修が間に合わないと判明したのです。

アメリカ製「核攻撃機」の購入を決断

 ドイツ政府はアメリカとの核兵器シェアリングを維持する為の「核攻撃機」を購入する決断を迫られました。連立与党SPD(ドイツ社会民主党)はこの機会に核兵器シェアリングそのものを止めようと、核攻撃能力付きアメリカ製戦闘機の購入を阻止しようと動きましたが、しかしドイツ政府としてはNATOでの立ち位置を考えればそれは出来ない選択でした。

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 結局ドイツはアメリカとの核兵器シェアリングを維持し、「核攻撃機」を購入することを決断しました。選択肢はアメリカ製戦闘機しか無く候補はF/A-18Eの他にF-35やF-15Eなどもありましたが、独仏共同ステルス戦闘機FCAS開発計画との兼ね合いでF-35はやはり選ばれず、隠密侵入に最適なステルス戦闘機が選べない以上は強力な電波妨害で敵レーダーを封じ込める電子戦機の支援が必要なので、派生型にEA-18G電子戦機があるF/A-18Eが少しでも機種整理したいという観点から選ばれました。またドイツ空軍はユーロファイター電子戦機型の購入も予定していましたが、開発は遅れており完成は2030年以降になる見込みで間に合いません。今すぐ買える戦闘機ベースの最新仕様の電子戦機はEA-18Gしかなかったのです。

 ユーロファイターはFCASが実戦配備されるまでの繋ぎとして「間に合わせ」、F/A-18EとEA-18Gはユーロファイターが核攻撃任務に使えないので代替として「間に合わせ」です。ドイツ国防省がこうなることをもっと早く予想してユーロファイターの核攻撃能力付与と電子戦型の開発を早めていたら問題は無かったのですが、先送りされた結果がこうなりました。先送りされたのはドイツ国防予算削減の影響なのか、あるいはドイツ軍はF-35を購入する積りで準備していなかったのかもしれません。しかしトーネード後継機の選定は政治的、経済的な理由で決まった面が大きかったのです。