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男子バレー 東京五輪へのサバイバル。髙橋、大塚、高梨ら新星が躍動! 西田、清水、柳田は?

大林素子スポーツキャスター、女優
東京五輪のメンバー入りへ前進した髙橋と大塚(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 東京オリンピックのテストも兼ねた「バレーボール日本代表国際親善試合~東京チャレンジ2021~」が5月1、2日にオリンピックの会場である有明アリーナで行われ、男子代表は中国に2連勝しました。また、8、9日には紅白戦が高崎アリーナで行われました。

荒々しさも加わった髙橋藍

 男子は、東京オリンピックが1年延びたことで、特に若い選手など、いろんな選手にチャンスが広がりました。中でも、やはり、髙橋(藍)、大塚(達宣)、高梨(健太)、この三人衆です。3人は、中国戦でも紅白戦でも存在感がありました。

 高橋は良かったですね。髙橋、大塚もそうですが、私は、春高バレーでコートサイドレポートを担当、大学でも全日本インカレ(全カレ)などもずっとこの3年くらい密着してきているので、普段の感じや成長する様は一番見てきたと自負していますが、元々二人はバレー脳というか、頭もとても良く、自分でいろんなことを考え、自分で分析でき、対応や順応できる選手。高校時代からできあがっていた選手です。石川(祐希)もそうでした。ここ数年、高校時代で完成されているという選手が目立ちますが、間違いなく二人もそうです。

 髙橋の場合は、この前まで春高バレーに出ていたという印象がありますが、全カレで、日体大でプレーしている髙橋というのは、高校までとは全く表情が変わっていました。東山高校時代は春高を制すなど、チームが強かったので、のびのびと楽しくプレーしているという印象でしたが、日体大では、苦しい中で、彼の力で決勝まで行った時などは、今まではどちらかというと爽やかな王子様キャラ的な姿でしたが、ちょっと泥臭さもあるような荒々しい猛々しいプレースタイルも加わり、厚みを増したように見えました。そんな姿を見て、いろいろ揉まれているな、新たな環境の中で強く大きく逞しくなっているなと嬉しく思っていました。そういった状況での日本代表での国際試合デビューだったので、最初は少し緊張気味な様子は見られたものの、冷静にプレーを見ながらこなすのを見て、大きくなったなと感じました。今年に呼ばれた人というか、巡り合わせ、この1年延期の中で、吸い寄せられた人の一人なのかなと思います。

 髙橋の持ち味は守備。そこが大きいと思います。練習などを見ていても、ブロックを抜けてきたボールをどんどん上げています。もちろん、それでも海外のサーブ、海外の攻撃に対しての守備というのは、実際戦ってみないとわからないところがあるのでネーションズリーグで戦ってどうなのか? と試合中継が楽しみでなりません。

荒々しい猛々しいプレースタイルも加わり、厚みを増した髙橋
荒々しい猛々しいプレースタイルも加わり、厚みを増した髙橋写真:松尾/アフロスポーツ

安定感が強みの大塚

 大塚も非常に飄々として、彼のバレーセンスも髙橋と同じくらい素晴らしいものがありますし、人間的にも素晴らしい。ネーションズリーグではもっと使われると思います。髙橋の方が一歩先にスタートしましたが、いやいや、ある意味、目立たなかったというよりも、派手さよりも、実は安定しているのが大塚の強みだったりします。どんな状況、チームにも対応できる。選手として、玄人受けな(笑)味も感じる彼の成長にもぜひ注目してほしいです。

高梨、クールの中にある豪快さ

 高梨も虎視眈々と成長して伸びてきた選手だったので、「よし出てきた」というのが私の中ではあります。ウルフドッグス名古屋は、個人的によく見ていたので、アンディッシュ(・クリスティアンソン)監督やトミー(・ティリカイネン)監督が就任してから、選手が口を揃えていっていたのが、バレーへの考え方、取り組み方が変わったということ。より自覚を持ちバレーに向き合うようになったそうです。今期のウルフドッグスの戦いもそれを象徴するようでしたし、高梨もクールなスタイルですが、プレーで魅せる豪快な姿に魅せられた人も多いでしょう。小川(智大)も同じで、いかなる場所でも動じない姿、落ち着いてプレーができたのはチームで自力・地力をつけたからだと思います。

安定感の大塚、豪快さが魅力の高梨
安定感の大塚、豪快さが魅力の高梨写真:YUTAKA/アフロスポーツ

新戦力の活躍で西田が進化

 高梨や、髙橋、大塚、入った選手が活躍してくれたことは、確実に日本代表の力になっていくでしょう。正直、中国戦のような、西田(有志)がこんなに打たない(笑)試合も珍しいですから。そういう意味で、西田が新人選手を気にかけ、自分が引っ張っているという意識を持つことにより、エースとしての自覚にもつながるし、それによってプレースタイルも厚みを増す。いろんなものを見極めてリーダーシップを持つことで、さらなる進化になるでしょう。

 海外の(ミハウ・)クビアクとか(バルトシュ・)クレクなど、プレースタイルは全然違うけれども、二人は素晴らしい選手ですが、自分以外の周りに対してのサポートが素晴らしい。トップ選手というのはそれができる人。西田も、自分が打つのは当たり前。西田スタイルができているので、さらに新たなメンバーとの中で、どんなパフォーマンスをするか、それが、プラスアルファになってくると思います。楽しみです。確固たる上のレベルのものを作っていこうぜというふうになればいいなと思います。

 紅白戦で右足首をねんざしてしまったのは残念ですが、中垣内監督によると、「骨折はない」とのことで、東京五輪に間に合うように、万全の治療体制で、一日でも早く復帰できるようにベストを尽くすとのことです。今後も帯同するそうなので、一日も早く復帰できることを願っています。

リーダーシップを持つことで、さらなる進化が期待される西田
リーダーシップを持つことで、さらなる進化が期待される西田写真:YUTAKA/アフロスポーツ

才能豊かな攻撃陣を生かすのはセッター

 世界のトップチームは絶対的に強いので、西田がいい、髙橋がいい、誰かが調子がいいだけでは勝てない。セッターが配分を含めて、見極め、ゲームを作っていくのが重要になってくると思います。司令塔にはよりランクアップしたトスワークも求められる。若い選手が育ってきたので、嬉しい悩みというか、普通じゃない組み立て方も必要。今まで以上にセッターが重要になってくると思います。若い戦力、西田といった得点源のアタッカー陣を生かすも殺すもセッターです。とはいえ、何をどうしたら、という話を書くとするならば、セッターだってボールが返ってこないことには始まらないので、まずはレシーブありき、なのですが。この話はまたの機会にすることとします。

ベテラン枠の清水邦広が完成、福澤のサポートも頼もしい

 若手だけでなく、清水(邦広)や福澤(達哉)らベテランとってもこの1年は悪くはなかったと私は思っています。髙橋も言っていましたが、中国戦で髙橋がサーブレシーブで崩されたとき、代わって入った福澤がきっちり返し、ピンチを救いました。やはり頼りになります。清水の場合は、けがからの復活で、新たな清水になって、それが完成したという感じがします。2019年のワールドカップ(W杯)の時から、新しい自分を作り始めて新しいプレースタイルやサーブの強化に取り組んできました。2020‐2021シーズンのVリーグでも好調を保っています。北京オリンピックでは、西田みたいな存在だった清水ですが、今を持って、ベテラン枠の清水邦広が完成し、福澤ともども土台ができ、嬉しく思います。

東京オリンピックへのメンバー入りを目指すベテラン清水
東京オリンピックへのメンバー入りを目指すベテラン清水写真:松尾/アフロスポーツ

柳田のサーブはやはり絶対的な日本の武器

 最後に、中国戦には出場しませんでしたが、やはり柳田(将洋)についてもふれておきます(紅白戦には出場)。髙橋、大塚、高梨ら新戦力起用により、中国戦のメンバー入りはしませんでしたが、今期からキャプテンが変わったこともあり、4月の始動記者会見でも、メディアから聴かれる質問に答える姿、彼のみならず、サバイバルのアウトサイドのポジション。当然、危機感を感じ、また少し遠慮し、様子見しながらの立ち振る舞い、黙々と会見、練習に向かっていました。会見と練習を少し見ただけですが、空気感というのは選手が一番感じることですが、私も痛いほどそれを感じました。

 今年勝つために、日本代表に何が必要かと考えながら、中垣内(祐一)監督やブラン(・フィリップ)コーチもメンバーを選んでいくわけですが、このチームには西田、石川というビッグサーバーがいるけれども、強豪相手には、サーブで崩せないと本当に大変だと考えた時に、私は中国戦を見ながら、ここで「マサくんのサーブ」柳田のビッグサーブがあればと、何度か思っていました。柳田のサーブというのは絶対的な日本の武器です。お互い刺激しあい、切磋琢磨することが彼らのレベルアップに繋がります。

柳田のビッグサーブは日本に必要
柳田のビッグサーブは日本に必要写真:松尾/アフロスポーツ

 東京オリンピックの12人入りを懸けて、若い選手もベテラン選手もネーションズリーグでは熾烈な戦いを繰り広げます。皆さん、楽しみにご覧ください。そして選手には、とにかくけがをしないこと。今ここで致命的なけがをすると、絶対的にアウトになります。新型コロナウイルス感染症対策も含めての体調管理。そこも勝負です。本当に頑張ってほしいと祈り願います。

5月17日、ネーションズリーグを前に男子代表の記者会見が行われました。セリエAのリーグ戦を終え、イタリアから帰国したキャプテンの石川(祐希)選手もチームに合流し、会見でキャプテンとしての意気込みや東京オリンピックへの思いを語りました。

石川新キャプテンの話はまた改めて書きたいと思います。

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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