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【W杯バレー】「東京オリンピックでメダル」結果にこだわる中田ジャパンの戦い

大林素子スポーツキャスター、女優
メダル獲得へ大事なW杯初戦、ドミニカ共和国に勝利して笑顔の中田ジャパン(写真:松尾/アフロスポーツ)

危機感やメダルへの意識が高まって

 前回のワールドカップでは、メダルを取った3チームがリオオリンピックでメダルを獲得しました。W杯の結果がそのままオリンピックに直結したこと、またワールドカップでメダルを取ることが東京オリンピックのメダル獲得への挑戦権を得られるというふうに考えているので、「ワールドカップでメダルを獲得すること」に久美さん(中田久美監督)も選手たちもこだわっています。

 この大会で結果を出さなければ、東京オリンピックでも結果を出すことはできない。なぜならば、久美さんがオリンピックメンバーを今後選考する上で一つ言えることは、今年はワールドカップ、来年はオリンピックを目標に、同じようなシーズンを過ごすので、厳しいことではあるが、ワールドカップで結果を残さなければ、オリンピックでも活躍できないということだ。だから、今大会の結果にすごくこだわっているので、選手たちも危機感や意識がすごく高くなってきている中で迎えた初戦(ドミニカ共和国戦)でした。

高さやパワーに対する守備練習が実った

 ドミニカ共和国とは昨年のネーションズリーグ(3-2で勝利)、世界選手権(3-2で勝利)、今年のネーションズリーグ(2-3で敗戦)とフルセットゲームが続いていたので、エリカ(荒木絵里香)も「今一番ドミニカが強くて嫌かもしれない」と言っていたように、恐怖心のようなものがチームの中にあって……でも、かえってそれが引き締めや集中力につながってよかったのかなとも思いました。ドミニカの高さやパワーに対してのディグ(スパイクレシーブ)練習をすごくしてきて、その成果もすごく出ていましたし、上から打たれたスパイクに対しての位置取りもすごくよかった。やりたい自分たちの「テーマ」が実践できていたと思います。

伸びてくる重い新ボールへの対応も

 このワールドカップからボールが新しく変わりました。選手たちによると、これまでのボールでは「サーブが左右に揺れる」という特徴があったそうですが、今回のボールは前後の変化が大きくて伸びてきて重い。より重くなるので、手でコントロールできていたボール、サーブレシーブやディグでちょっと芯を外して受けてしまうと弾かれてしまう。「足を使って持って行かなければならないからけっこうしんどい」とリベロのメンバーやサリナ(古賀紗理那)も言っていましたが、その心配も見事にクリアしてきっちり体で受けて、ボールの特性を意識したレシーブができていました。

 新ボールでは、サーブも変わります。スピードを狙っていく、左右の変化ではなく、パワーのあるサーブがより重くなり変化する。日本も今までよりスピードとパワーを意識したサーブになってきていた。非常によかったと思いますが、ロシアなどパワーのあるサーブを打ってくるチームと対戦するときにはジャンプサーブや強いフローターサーブに対してのサーブレシーブがポイントになってくると思います。

セッター佐藤美弥を軸にバリエーションのある攻撃ができるように。古賀、石井の両エースの成長も頼もしい(著者撮影)
セッター佐藤美弥を軸にバリエーションのある攻撃ができるように。古賀、石井の両エースの成長も頼もしい(著者撮影)

課題だったセッターは佐藤が軸に

 一番の収穫はセッターの佐藤美弥。久美さんが代表監督になってから、けがで外れることがあったりしてセッターを定められないままでいたけれど、やっと3シーズン目に佐藤美弥を軸に組み立てられるようになりました。一番の収穫。それによって久美さんの大テーマ、速い攻撃やバックアタック、バリエーションのあるバレーがようやく展開できるようになった。いいところが出たと思います。ただ、ドミニカに取られたセットに関しては、崩されてしまったところ、ミスが出たところのトス(レフトに偏るなど)は日本の良くないパターン。これをなくしていくことがメダルにつながる。苦しい状況でもミドル、ライト、バックアタックなどをどこまで使えるか? そういう場面でのセッターの一本のチャレンジングなトス、アタッカーの助走や引き付けそして声が必要だと思います。エリカ(荒木)や奥村(麻依)、ミドルの使い方が元々の持ち味なのが佐藤のトスワーク。これからに期待です。

けがした黒後、プラスに考えて強くなって

 黒後(愛)は右足首をけがしてすごくつらいと思いますが、なったのはしかたがないことなので今は割り切ってやるしかない。この試練を乗り越えてほしいと願います。一番近くで大会を見るのはすごくつらいこと。私も同じ右足首の靭帯を3本切って2回目のワールドカップは全試合ベンチで見ていました。12人だったのでギプスをしているのにベンチに入る。そばで見るほうがつらいです。でも、プラスに考えてこれをいい時間に変えるしかない。強くなって、またどの試合からかわからないけれども、みんなが愛(黒後)を待っているので、頑張ってほしい。期待しています。ちなみに徐々に回復していますので、コートに戻ってくる日を楽しみにしてください。

古賀の進化、軸となる石井の成長は頼もしい

 そんな中で、古賀(紗理那)や石井(優希)が頑張りました。彼女たちは責任感があって代わりはいないくらいの気持ちで臨んでいる。その危機感で、より頑張っている。サリナ(古賀)も最初、苦しかったけど立て直しました。修正力もついているし、修正しなきゃという思いもある。4年前は、ただがむしゃらに思いっきりやっていればよかった。今回は引っ張らなければという立場になったことで、素晴らしい進化が見えます。石井はもう完璧、円グラフで言うと1番円に近いのが石井。安定感はさすがだなと思います。昨シーズンとは全く違う。一つまた上にステップを踏んでいる。頼もしい。この軸がしっかりしているというのは今のチームにとって本当に大きいと思います。

 日本チームは、「メダルを取りたいです」「メダルを取ります」と言えるところまでこの3年で成長してきています。ワールドカップはまだまだ続きます。テレビで、会場でぜひ見て、応援してあげてください。

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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