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東京都心で今年初の夏日も、花見期間の短縮と菜種梅雨の気配

饒村曜気象予報士
外出するときは日傘をさして紫外線対策(写真:イメージマート)

3月の日最高気温の記録

 令和6年3月31日は、低気圧と低気圧の間の晴天域に入り、各地で気温が上昇しました(図1)。

図1 地上天気図と衛星画像(3月31日12時)
図1 地上天気図と衛星画像(3月31日12時)

 東京都心(千代田区・北の丸公園)では最高気温が27度となり、3月としての最高気温の高い記録を大幅に更新しました(表1)。 

表1 東京都心の3月と4月の最高気温の高い記録
表1 東京都心の3月と4月の最高気温の高い記録

 東京都心では、明治9年(1876年)から149年分の記録がありますが、これまでの最も高い3月の気温は平成25年3月10日に観測した25.3度でした。

 これだけ長い間の観測があると、更新しても0.1度刻みでの更新というのが多いのですが、今回は、2.8度という大幅な更新でした。

 この28.1度という日最高気温は、仮に4月であったとしても、歴代5位に相当する、とんでもない記録です。

 今冬の東京の最高気温と最低気温の推移を見ると、令和5年(2023年)12月の前半までは、平年より暖かい日が多かったのですが、冬至(12月22日)寒波以降は、平年並みか平年より高い気温で推移していました(図2)。

図2 東京の最高気温と最低気温の推移(4月1日以降はウェザーマップの予報)
図2 東京の最高気温と最低気温の推移(4月1日以降はウェザーマップの予報)

 しかし、2月中旬になると2月としては記録的な暖かさの日も出現し、2月20日には最高気温23.7度を観測しました。

 しかし、その後の寒気南下で気温は急降下し、2月23日には最高気温4.0度になっています。

 3月に入っても大きな気温差が続きました。

 4月1日に最高気温の予想は、20度と平年より高いのですが、3月31日に記録的な暑さとなった後ですので、過ごしやすいと感じるかもしれません。

さくらの満開

 さくらの開花直前に気温が低いと開花が少し遅れ、高いと少し早まります。

 沖縄・奄美を除くと、トップのさくら開花は3月23日(土)の高知でした。

 その後、広島、宮崎、長崎、熊本が続きましたが、高知などとトップ争いをすると思われた東京の開花は3月29日と遅れました(表2)。

表2 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日
表2 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日

 これは、関東地方では、さくらの開花直前に寒気が流入したためです。

 さくらが開花した後に寒気が流入すると、開花から満開までの期間が長くなります。

 逆に暖かくなると開花から満開までの期間が短くなり、花見の期間は短くなります。

 さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日間、東日本での太平洋側の平年が6~9日間に対し、北海道の平年が2~5日間です(図3)。

図3 さくらの開花から満開までの期間の平年値
図3 さくらの開花から満開までの期間の平年値

 さくらがトップで開花した高知では、3月31日に満開となりましたので、開花から満開までの期間は8日間でした。

 しかし、4月に入ると各地とも平年より気温が高いという予報ですので、開花から満開までの期間は平年より短目で、お花見期間が短縮されるかもしれません。

菜種梅雨

 東京の16日先までの天気予報をみると、気温は高目に推移するものの雨の日が目立っています(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 これは、日本の南海上に前線が停滞しはじめるからで、16日間で8日も傘マーク(雨)があり、傘マークがなくても、4日間は黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)がついていますので、ほとんどの日で雨の心配があります。

 そして、降水の有無の信頼度は、一番高いAから、一番低いEまで5段階ありますが、この10日くらい先までの予報は、EやDが少ない予報です。

 お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)は少数派の予報で、菜種梅雨の気配です。

 今頃、菜種の花が咲くころに、梅雨のような天気になることを菜種梅雨と呼びます。

 菜種梅雨といっても、気温が上がって大気中の水蒸気の量が増えてくるなど、条件が揃ってくると、大雨になることがあります。昨年の3月22日には、菜種前線で発生した線状降水帯が、沖縄に大雨を降らせました。

 季節は初夏に向かって進んでいるということは、大雨の危険がある季節に向かって進んでいるということでもあります。

 今のうちから、大雨が降った場合の対策を考え、小さなことでも実行しはじめることが大切です。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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