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今冬の初雪事情 南岸低気圧通過でないのに東京など関東南部で平年より遅い初雪を観測

饒村曜気象予報士
雲 雪 ドット絵(提供:イメージマート)

今冬の初雪

 今冬、最初に初雪を観測したのは、令和5年10月21日の北海道の旭川です。平年より2日遅い初雪でした。

 その後、北日本では平年より遅い初雪の観測となりましたが、これは、夏の暑さが秋まで続いていたためです。

 北日本では遅い冬の訪れとなりましたが、11月中旬には西日本を中心に強い寒気が南下してきたため、11月18日に福岡で平年より30日も早く初雪を観測するなど、西日本では早い冬の訪れとなりました。

 その後は気温が高めに経過していましたが、冬至(12月22日)の頃の強い寒気の南下(冬至寒波)によって、12月17日には名古屋で平年より5日早く、12月21日には大阪で平年より5日、鹿児島で平年より16日早く初雪を観測しました。

 冬至寒波の後は、寒気の南下が平年より弱く、平年より遅い初雪の所が多くなっています(図1)。

図1 今冬(2023~2024年)の初雪
図1 今冬(2023~2024年)の初雪

 令和6年(2024年)1月13日、関東南岸の水戸では平年より25日遅く、銚子では8日遅く、東京では10日遅く、横浜では25日遅く初雪を観測しました。

 このうち、東京では、雨が降りだした15時頃には気温が10度位ありましたが、3時間後の18時には気温が約1度にまで急降下し、雨が霙(みぞれ)に変わっています(図2)。

図2 東京の1月13日の1時間ごとの気温変化
図2 東京の1月13日の1時間ごとの気温変化

 これで、東京に初雪が降ったということになるのです。

南岸低気圧通過でないのに関東南岸で雪

 東京など、関東南岸で雪が降るときの多くは、低気圧が西~東日本の南海上を通過するときです。

 いわゆる南岸低気圧による雪です。

 しかし、今回は南岸低気圧の通過による雪ではありません。

 地上天気図には関東地方に前線が描かれていませんが、気圧が低くなっており、図3の黄色の線のような潜在的な前線が存在していました。

図3 地上天気図と衛星画像(1月13日18時、図中の黄色の曲線は潜在的な前線)
図3 地上天気図と衛星画像(1月13日18時、図中の黄色の曲線は潜在的な前線)

 カムチャッカ半島付近の低気圧からのびる寒冷前線の延長線上にある潜在的な前線によって関東南岸で雨が降り、関東の東海上の冷たい空気が流入したことで気温が下がって雨が霙に変わったのです。

週明けには再び強い寒気南下

 1月14日は、大きな移動性高気圧に覆われるため、北日本では雲が多く、午後を中心に雪や雨の降る所があるものの、その他の地域は概ね晴れる見込みです(図4)。

図4 予想天気図(左は1月14日9時、右は15日9時の予想)
図4 予想天気図(左は1月14日9時、右は15日9時の予想)

 最高気温は全国的に平年並みか高くなる見込みですが、日本海北部には低気圧が発生し、この低気圧が発達しながら東進する見込みです。

 このため、週明けの1月15日は、西高東低の強い冬型の気圧配置となって再び強い寒気が南下する見込みです。

 ただ、今冬一番の寒気である冬至寒波の時を超えない見込みです。

 令和5年(2023年)12月22日(冬至)の頃に西日本を中心に南下してきた寒波(冬至寒波)では、福岡では最高気温が12月21日に3.7度、22日に4.3度と、平年の最低気温をも下回る厳しい寒さでした。

 12月22日に全国で最高気温が0度を下回った真冬日を観測したのは264地点(気温を観測している全国914地点の約29パーセント)、最低気温が0度を下回った冬日は774地点(約85パーセント)もありました(図5)。

図5 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年11月1日~2024年1月16日、1月14日以降は予測)
図5 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年11月1日~2024年1月16日、1月14日以降は予測)

 1月13日に冬日を観測したのが全国で595地点(約65パーセント)、真冬日を観測したのが179地点(約20パーセント)でした。

 そして、1月14日~16日の冬日や真冬日の予想地点数をみると、冬日は冬至寒波の頃を超えない予想ですが、1月16日の真冬日の予想地点数は304地点(約33パーセント)と今冬最多となる予想です。

 全国の約3分の1が冷蔵庫の中にはいることになります。

 暖冬傾向とはいえ、ときおり強い寒気(寒波)が南下してきますので、最新の気象情報に注意して寒さを乗り切ってください。

図1、図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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