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台風13号通過後の厳しい残暑と南の海の熱帯低気圧

饒村曜気象予報士
沖縄本島の南東方向にある熱帯低気圧の雲(9月10日15時)

台風一過の残暑

 9月5日21時に沖縄の南東海上で発生した台風13号は、発生当初から暴風域を伴うほどには発達しないものの、熱帯由来の暖湿気を持ち込むとして警戒が行われました。

 台風13号が発生する少し前の9月4日頃から下層に熱帯由来の暖湿気が流入し、大気が非常に不安定となって関東から東北南部などで、記録的短時間大雨情報が発表されるほどの局地的な豪雨が次々に発生しています。

 台風13号は北東に進み、9月8日21時に静岡県の南海上で熱帯低気圧に変わりましたが、千葉県から茨城県、福島県では線状降水帯が発生して大雨が降りました。

 このため、7月から続いていた記録的な猛暑は、一服し、最高気温が35度以上という猛暑日を観測することはありませんでした。

 9月10日は、台風13号が通過しましたが、南から暖かくて湿った空気の北上は続いており、東海から四国にかけて雨となり、雷を伴って激しく降っている所がありました。

 しかし、広い範囲で晴れて厳しい残暑となっている所が多くなりました。

 全国で気温が一番高かったのは、群馬県・桐生の35.4度、次いで、新潟県・新津の35.0度と、2地点で最高気温が35度以上という猛暑日となりました。

 猛暑日を観測したのは5日ぶりです。

 また、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが540地点(気温を観測している全国915地点の約59パーセント)と7〜8月の最盛期に比べれば大きく減っていますが、最高気温25度以上の夏日を観測したのが873地点(約95パーセント)と、高い数値に戻っています(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月10日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月10日)

 9月11日も、5地点くらいで猛暑日、395地点くらいで真夏日、545地点くらいで夏日となり、厳しい残暑が復活する見込みです。

 気温はこの先も全国的に平年より高い見込みで、まだまだ夏の様相ですが、熱中症警戒アラートの発表がなくなるなど、暑さの終焉も見えてきました。

熱中症警戒アラートの発表なし

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。

 このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上33未満:危険、28以上31未満:厳重警戒、25以上28未満:警戒、25未満:注意となっています。

 熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表されます。

 9月6日に熱中症警戒アラートが発表された地域は0となりましたが、これは、7月1日以降、68日ぶりでした。

 そして、その後、9月11日の前日発表まで、熱中症警戒アラートは発表とはなっていません。

 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表回数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月の前半までは前年、令和4年(2022年)より少ない発表回数で推移していたのですが、7月後半から急増し、昨年の889地域を約36パーセント上回る1205地域に発表されています(図2)。

図2 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図2 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 今年の暑さは、熱中症対策が大きな問題となった昨年以上に暑かったのですが、台風13号の通過によって終焉を迎えたともいえそうです。

【訂正(9月11日11時30分)】

 熱中症警戒アラートは、9月10日当日発表で、千葉県に発表されましたので、累計は1206地域になりました。9月11日当日発表では、どこにも発表されていません。

熱帯低気圧の発生

 日本の南の海上では積乱雲が増えており、この活発な雲の塊に対応して、天気図には熱帯低気圧ができています(タイトル画像)。

 この熱帯低気圧が台風に発達するかどうかは現時点ではわかりませんし、台風に発達した場合の進路はもっとわかりません。

 ただ、9月にこの位置に台風がある場合は、北西進して西日本から東日本に影響することが少なくありませんので要注意です。

 また、マリアナ諸島には、熱帯低気圧ではなく低圧部(周囲より気圧が低くなっているものの中心がどこかわからないというもの)もあります(図3)。

図3 予想天気図(9月11日9時の予想)
図3 予想天気図(9月11日9時の予想)

 この低圧部のどこかで渦を巻き始めると、熱帯低気圧になります。

 マリアナ諸島は、日本に大きな被害をもたらした台風の発生海域の一つで、この海域にも注目が必要です。

 まだまだ、日本の南の海上では夏が残っています。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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