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記録的大雨の秋田は数日にわたって雨が降り続き、数日続く40度目前の猛暑の関東甲信等も梅雨明けはまだ先

饒村曜気象予報士
東北地方に残っている梅雨前線に伴う雲と東日本から西日本に広がる晴天域(7/16す

秋田県の大雨

 令和5年(2023年)7月14日夜から16日にかけ、強まった太平洋高気圧によって押し上げられた梅雨前線が東北北部で停滞し、秋田市仁別で415ミリなど、秋田県を中心に300ミリ以上の記録的な大雨が降りました(図1)。

図1 48時間降水量(7月14日15時~16日15時)
図1 48時間降水量(7月14日15時~16日15時)

 平年の一か月分の雨量が、わずか半日で降ったというほどの大雨により、大きな洪水被害が発生しました。

 ただ、この梅雨前線も次第にはっきりしなくなったことから、雨はいったんあがりました(図2)。

図2 地上天気図(7月16日9時)と予想天気図(7月17日9時の予想)
図2 地上天気図(7月16日9時)と予想天気図(7月17日9時の予想)

 しかし、大雨が降った秋田県では、土の中に多量の水分が含まれている状況ですので、土砂災害や低い土地の浸水などが起きやすくなっています。

 加えて、7月19日までは梅雨前線が再び顕在化して大雨となる可能性がありますので、引き続き警戒が必要です。

東日本の太平洋側から西日本の猛暑

 今年、令和5年(2023年)7月16日は、太平洋高気圧の強まりとともに、東北南部から東日本・西日本では晴れて気温が高くなったところが多くなりました。

 これまで、今年の最高気温は7月12日に東京都・八王子で観測した39.1度でしたが、群馬県・桐生で39.7度、埼玉県・鳩山で39.6度、埼玉県・所沢で39.4度、群馬県・館林で39.2度、栃木県・佐野で39.2度と、5地点でこれを上回りました。

 また、最高気温が35度以上の猛暑日は157地点(気温を観測している全国915地点の約17パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日は618地点(約68パーセント)と、今年最多となりました(図3)。

図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月16日)
図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月16日)

 最高気温が25度以上の夏日は786地点(約86パーセント)と、7月10日の884地点(約97パーセント)には及びませんでしたが、これは、北海道と東北北部で気温があがらなかったことによります。

 7月17日も、7月18日も優勢な太平洋高気圧におおわれ、ほぼ全国的に晴れて、強い日射により、気温が高くなる見込みです(図4)。

図4 最高気温の分布予報(上段:7月17日、下段:7月18日)
図4 最高気温の分布予報(上段:7月17日、下段:7月18日)

 関東から東海地方では、最高気温が35度以上の猛暑日の予報となっていますし、東北南部から九州・沖縄のほとんどのところで30度以上の真夏日の予報です。

 ひょっとしたら、めったに出現しない最高気温が40度をこすところがあるかもしれません。

熱中症

 熱中症は、気温が高いだけでなく、湿度が高いとより起きやすくなります。

 このため、熱中症対策には気温ではなく、湿度も考慮してある「暑さ指数」がつかわれており、気象庁と環境省は共同して暑さ指数が33以上の極めて危険と予想されるときに熱中症警戒アラートを発表しています(前日17時と当日5時に発表)。

 5月から6月に各地で真夏日が観測されましたが、この時は、湿度が低く、熱中症警戒アラートはほとんど発表されていませんでした。

 しかし、7月に入ると、湿度が高い日が増え始め、熱中症警戒アラートが発表されることも多くなっています。

 熱中症警戒アラートは、7月16日には前日予報で17地方、当日予報で21地方に発表されましたが、7月17日は前日予報ですでに21地方で発表となっています。

【熱中症警戒アラート(7月17日:前日発表)】

(関東甲信) 埼玉、千葉、神奈川、山梨 

(東海) 静岡、愛知、三重

(北陸) 富山、石川、福井

(近畿) 滋賀、大阪、和歌山

(中国・四国) 広島、徳島

(九州北部) 福岡、大分、長崎、熊本、

(九州南部) 宮崎、鹿児島(奄美地方を除く)

 ただ、熱中症警戒アラートは、極めて危険な地方に対しての発表です。前日の時点で熱中症警戒アラートが発表となっていない東京で暑さ指数32の危険が予想されているなど、広い範囲で熱中症対策が必要となっています(図5)。

図5 暑さ指数の日最高値の予想(7月17日)
図5 暑さ指数の日最高値の予想(7月17日)

【追記(7月17日9時15分)】

熱中症警戒アラートは、7月17日の当日発表で、東京等が追加され、福島県から沖縄県までの32地方に発表となりました。今年最多の発表地方数です。広い範囲で熱中症に警戒が必要です。

 梅雨前線が東北北部まで北上して弱まり、太平洋高気圧が強くなって晴天となると、例年であれば各地で梅雨明けとなりますが、今年は、沖縄・奄美地方を除いて梅雨明けをしていません。

梅雨明けはいつ?

 令和5年(2023年)は、現時点で梅雨明けしたのは沖縄地方と鹿児島県奄美地方だけです(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け

 気象庁が梅雨明けを発表しない(長い梅雨の中休みと考えている)のは、7月18日には梅雨前線が東北北部で顕在化してくると考えているからです(図6)。

図6 予想天気図(7月18日9時の予想)
図6 予想天気図(7月18日9時の予想)

 そして、この前線上がしばらく東北北部に停滞した後、週半ばの20日ごろに南下し、ほぼ全国的に雨が予想されていることから、梅雨明けは、この雨が終わってからと思われます(図7)。

図7 各地の天気予報(7月17日~23日は気象庁、24日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)
図7 各地の天気予報(7月17日~23日は気象庁、24日以降はウェザーマップの予報で数字はともに最高気温)

 大雨が降った秋田県では、土の中に水分が溜まっているところに、数日にわたって雨が降り続くという、非常に危険なことが心配されます。

 東北地方北部では、引き続き、大雨に対する警戒が必要です。

 また、東日本の太平洋側から西日本は、ここ数日は梅雨明けのような天気となり、晴れて気温がかなり上がる見込みです。最高気温が30度以上の真夏日が続く予報で、35度以上の猛暑日の予報も少なくありません。

 梅雨明けをしていないといっても、梅雨明け並みの湿度の高い暑さ、熱中症になりやすい危険な暑さとなりますので、適切にエアコンを使うなど、猛暑対策に努めてください。

タイトル画像、図1、図4、図5、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図6、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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