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日本列島に寒気南下も台風28号発生で暖冬の予兆か

饒村曜気象予報士
日本海の寒気吹き出し雲とマリアナ諸島近海の台風28号の雲(11月26日12時)

寒気の南下

 沖縄県先島諸島近海まで北上してきた台風27号、および台風27号から変わった熱帯低気圧、その熱帯低気圧から変わった温帯低気圧によって11月最後の日曜日、24日は全国的に暖かい日曜日になりました。

 しかし、週明けは、寒気が南下し、東日本から北日本では気温が急降下しています。

 日本海には寒気が南下したことを示す筋状の雲が出現しています(タイトル画像参照)。

 東京の最高気温は11月24日(日)19.1度、25日(月)21.9度であったものが、26日(火)12.5度と、9.4度も下がる見込みです。

 ただ、体感はもっと急降下を感じます。というのは、26日の最高気温は、12.5度となる見込みであるからです。

 この12.5度は、未明の0時4分に観測されたもので、このあと気温がどんどん急降下して、11時21分には7.3度になっています(図1)。

図1 東京の気温変化(11月26日13時以降は予測)
図1 東京の気温変化(11月26日13時以降は予測)

 つまり、昼間の気温だけからいえば、25日の約22度から約8度へと1日で14度も下がるからです。

 そして、東京の明日の気温は一日中10度前後です。

 日本に南下する本格的な寒気の目安は、上空約5500メートルの気温が氷点下30度です。

 現在、上空約5500メートルで氷点下30度以下の寒気は、北海道北部まで南下していますが、徐々に南下して、南下のピークは29日(金)の金曜日、東北地方南部までの南下です(図2)。

図2 上空約5500メートルの気温分布(11月29日昼)
図2 上空約5500メートルの気温分布(11月29日昼)

台風28号の発生

 日本列島は、強い寒気が南下して冬の様相ですが、11月26日(火)9時にマリアナ諸島で台風28号が発生し、夏の名残が残っています。

 台風28号は、11月に入って6個目の台風発生です。

 11月に6個発生したのは、台風資料のデータベースができている昭和26年(1951年)以降では、平成3年(1991年)と昭和39年(1964年)しかありません。

 11月台風発生数の一位タイ記録です。

 台風28号が発生したグアム島の海域の海面水温は、台風が発生・発達する目安となる27度よりも高い29度以上です。

 このため、台風28号は発達しながら北西進し、30日(土)には、フィリピンの東海上で非常に強い台風になる見込みです(図3)。

図3 台風28号の進路予報(11月26日15時)
図3 台風28号の進路予報(11月26日15時)

 台風予報は最新のものをお使いください

 図4は、筆者が以前調査した11月の台風の統計です。

図4 11月の台風の平均経路
図4 11月の台風の平均経路

 これによると、台風28号が発生した海域にある台風(図4のA)は、西北西進してフィリピンに向かうものが多い(図4のB)ものの、一部は東経140度線を越えたあたりから北上します(図4のC)。

 台風28号の進路予報では、東経140線を越えたあと北上し、そのあと、少し停滞してから西へ向かう予報です。

 北上か西進か、ちょっと迷ったあと、多数派の西へ向かうという予報に見えます。

 台風28号は仮に北上したとしても、日本列島に大きな影響を与えないと思われますが、この海域で、台風などにより対流活動が活発になると日本列島に影響を与えます。

今冬は寒気の南下が弱い

 気象庁が発表した3か月予報では、12月は北日本で「平年並みか平年より高い」他は、「平年より高い」、1月は全国的に「平年並みか平年より高い」、2月は全国的に「平年並み」の予報です(図5)。

図5 今冬の平均気温の予報
図5 今冬の平均気温の予報

 つまり、今冬の気温が平年より低いところはありません。

 これは、今冬は寒気の南下が弱いことを示しているのですが、その根拠となっているのが、熱帯域の対流活動です(図6)。

図6 予想される海洋と大気の特徴(12月~2月、気象庁による)
図6 予想される海洋と大気の特徴(12月~2月、気象庁による)

 気象庁によれば、今冬は、北太平洋中部から西部の熱帯域では、海面水温が平年より高く、積乱雲の発生が多くなることが予想されています。

 その結果として、積乱雲の発生が多くなる海域の北にある太平洋高気圧の勢力が強くなり、日本上空の偏西風の位置が北に押し上げられて寒気の南下が弱くなること、これに地球全体(全球)で大気の温度が高いことから、全国的に暖冬の予報となっています。

 現在、日本列島に寒気が南下して寒くなっていますが、台風28号が発生するなど、北太平洋中部から西部の熱帯域では積乱雲の発生が多い状態となっています。

 この寒気が抜けたあとも、積乱雲の発生が多い状態が続くと、12月に入ってからの寒気の南下が弱くなりますので、台風28号発生は暖冬の予兆かもしれません。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」を著者加筆。

図5、図6の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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