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平成30年7月豪雨と梅雨明け 今年は変な太平洋高気圧

饒村曜気象予報士
衛星画像と地上天気図(7月9日21時)

平成30年の梅雨明け

 太平洋高気圧が勢力を強めて日本付近に張り出してきたため、週明けの7月9日(月)は晴れて暑い日が多くなり、近畿地方など多くの地方で梅雨明けとなりました(図1、表)。

表 平成30年の梅雨明け
表 平成30年の梅雨明け
図1 上空約5キロの太平洋高気圧(7月10日未明)
図1 上空約5キロの太平洋高気圧(7月10日未明)

 これで梅雨明けしていないのは、梅雨のない北海道を除くと、東北地方北部、東北地方南部、四国、九州南部だけとなりました。ただ、梅雨前線が北日本まで北上する予報ですので、雨が降るなどして7月9日の梅雨明けを見送った四国地方と九州地方も、10日には梅雨明けする可能性が高いと考えられます(図2)。

図2 予想天気図(7月10日9時の予想)
図2 予想天気図(7月10日9時の予想)

 北日本を除いた日本列島は、太平洋高気圧に広く覆われて夏本番になりました。

 しかし、今年、これまでの太平洋高気圧はいつもとは違っていました。

関東地方のみに張り出し

 今年6月末の太平洋高気圧は、日本列島に向かって勢力を強めるというより、関東地方を中心に局地的に勢力を強めていました(図3)。

図3 上空約5キロの太平洋高気圧(7月1日夜)
図3 上空約5キロの太平洋高気圧(7月1日夜)

 このため、関東甲信地方の梅雨明けは6月29日と、統計をとり始めた昭和26年(1951年)以降、初めて6月の梅雨明けとなりました。

 沖縄・奄美地方を除くと、関東甲信地方だけが突出して梅雨明けでした。

 このあと、太平洋高気圧の勢力は少し後退しましたが、西日本や関東地方を除く東日本、北日本では、曇りや雨の日が多く、いわゆる「梅雨らしい天気」が続きましたが、関東甲信地方だけは晴れて暑い日が続きました。

太平洋高気圧の縁辺を熱帯からの暖湿気流

 太平洋高気圧は、西への張り出しが強くなかったことから、太平洋高気圧の縁辺部にあたる東シナ海から日本列島へ、熱帯からの暖湿気流の流入が続きました。

 普段より湿った空気が、普段より強い風によって日本列島にやってきましたので、桁違いに多い水蒸気が日本列島に運ばれ、大雨を降らせました(図4)。

図4 期間降水量分布図(6月28日0時~7月8日24時)
図4 期間降水量分布図(6月28日0時~7月8日24時)

 そのうちの一部が台風7号となって日本海を北上しましたが、その後も、太平洋高気圧の勢力が変わらなかったため、同じような状況が続き、各地で7月の平均雨量の約2倍の雨量が数日間で降るというような、記録的な大雨となって大きな被害が発生しました。

 気象庁では、平成 30 年7月9日に、「6月 28 日以降の台風第7号や梅雨前線の影響によって、西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨」に対し、全国各地で甚大な被害が発生したことを踏まえて「平成 30 年7月豪雨」と命名しました。

 太平洋高気圧は、西へ張り出し、梅雨前線を東北地方まで押し上げたものの、これ以上の北への張り出しはまだなく、北日本ではしばらく雨や曇りの天気が続きます。

 今後も、例年とは違った振る舞いをしている太平洋高気圧には注意が必要です。

 平成30年7月梅雨前線等による大雨被害に対して、緊急災害支援募金(Yahoo!基金)を行っていますので、ご協力をお願いいたします。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図4、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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