各地で大雨による特別警報 見出しのみの情報や警報タイムテーブルも発表
活発な梅雨前線
前線が東日本から西日本に停滞し、前線に向かって南から暖かく湿った空気が流入し、九州北部・中国・近畿地方では記録的な大雨となりました。
7月6日15時00分までの1時間降水量をみると、近畿・中国・九州北部から五島列島にかけてのほぼ東西に延びる雨域と、九州北部・九州西岸から南西諸島にかけてほぼ南北に延びる雨域があります(図1)。
雨域の帯と雨域の帯が交差している場合、交差点付近では大雨が降りやすいことは、気象レーダーによる観測が始まったころから知られていました。交差している場所は、いろいろな方向からの空気が流入し、そこで上昇流が強まり、組織的に積乱雲が発達している場所であるからです。
九州北部での交差している場所では、特別警報が発表となるほどの記録的な大雨が降りました。そして、交差している場所の東進とともに、中国地方、近畿地方でも特別警報が発表となりました。
特別警報や警報の発表状況は常に最新のものをお使いください。
特別警報と避難行動
特別警報は、これまでの警報より強く警戒を迫るもので、従来は警報が発表されていても迅速な避難行動につながらなかったものを、確実に避難行動に移してもらうのが狙いで、スタートしたのは平成25年(2013年)8月30日です。
それまで、警報が発表されるときは、重大な災害が起きるときでしたが、特別警報が発表されるときは、警報の中でも特に危険な状態が迫ってるときです。
特別警報が発表されたときの基本行動は「緊急的な行動」です。市町村は、ただちに最善を尽くして身を守るよう住民によびかけをおこない、特別警報が発表され非常に危険な状況であることを住民に周知します。
住民も、避難所に避難するか、外出することが危険な場合は家の中で安全な場所にとどまるかなど、ただちに命を守る行動をとります。
これに対して、警報が発表されたときの基本行動は「安全確保」です。市町村は必要地域に避難勧告・避難指示をだし、避難所の準備や開設をおこないます。また住民も、自治体の指示に従い避難する、あるいは、指示がなくとも自主判断で避難します(表)。
つまり、避難指示や避難勧告は警報発表時に行うもので、特別警報が発表となったときに避難が済んでいないなら逃げ遅れです。だから、特別警報の呼びかけは「命を守る行動をしてください」です。
「避難行動」とは、決められた避難所に必ず行くことと考えている人が多いのですが、「避難」とは、命を守るための避難であり、「少しでも安全な場所」へ移動するということです。避難途中で災害に巻き込まれるという事態は、絶対に避けなければなりません。
市町村が「避難準備情報」を発表するのは、人的被害が発生する災害の可能性がある場合に、要援護者を早期に避難させるとともに、要援護者ではない人びとに対しても、避難を具体的に準備してもらう意味があります。
見出しのみの情報
気象庁が発表する情報は、見出し(短い文章)と本文(詳細な文章)からなっていますが、ときには、見出しのみの情報を発表することがあります。
これは、大雨・洪水警報や土砂災害警戒情報等で警戒を呼びかける中で、重大な災害が差し迫っている場合に一層の警戒を呼びかけるために発表するもので、始まったのは、平成 24 年(2012年)6 月27 日からです。
九州北部、中国、近畿地方に特別警報が発表されたとき、見出しのみの情報が3回発表されています。
記録的な大雨に関する全般気象情報 第9号
平成30年7月6日17時17分 気象庁予報部発表
(見出し)福岡県、佐賀県及び長崎県に大雨特別警報が発表されました。これまでに経験したことのないような大雨となっています。最大級の警戒をしてください。
(本文)なし
記録的な大雨に関する全般気象情報 第10号
平成30年7月6日19時42分 気象庁予報部発表
(見出し)広島県、鳥取県及び岡山県に大雨特別警報が発表されました。これまでに経験したことのないような大雨となっています。最大級の警戒をしてください。
(本文)なし
記録的な大雨に関する全般気象情報 第11号
平成30年7月6日22時53分 気象庁予報部発表
(見出し)兵庫県と京都府に大雨特別警報が発表されました。これまでに経験したことのないような大雨となっています。最大級の警戒をしてください。
(本文)なし
警報のタイムテーブル
気象庁が今年からはじめた新しい試みに、警報のタイムテーブルがあります(図3)。
警報がいつまで続くのかなど、今後数日にわたる見通しが詳しくわかるものですが、これまでは、各地域ごとに発表され、時間区切りも大きいものしかありませんでした(図4)。
今後の大雨
東日本の前線は、7月7日(土)から8日(日)にかけて北上し、北日本に達しますが、西日本の前線は8日(日)も停滞する見込みです(図5)。
このため、西日本の雨は長引きますので、引き続き警戒が必要ですし、北日本は再度大雨に警戒が必要です。
また、日本の南海上には、猛烈に発達した台風8号があります。
台風が接近・上陸した場合はもとより、上陸しなくても、台風からの湿った空気が日本列島に流入するようになれば大雨となりますので、台風の動きについても注意が必要です。
図1、図2、図3、図4、図5の出典:気象庁ホームページ
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供
表の出典:饒村曜(平成27年(2015年))、特別警報と自然災害がわかる本、オーム社。