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大坂なおみ選手も「ショック」――中国の著名女子テニス選手へのセクハラ問題追及に新たな課題

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
彭帥さんに関する大坂なおみさんのツイート=筆者キャプチャー

 中国の著名女子プロテニス選手の彭帥(Peng Shuai)さんが共産党最高指導部の元メンバーによるセクハラ被害を告発し、消息を絶ったことについて、日本のプロテニス選手である大坂なおみさんが17日、彭さんを支持する文章をツイッターに記した。彭さんをめぐっては女子テニス協会(WTA)側も透明性のある調査を求める声明を出しており、セクハラ問題は新たな段階に入っている。

◇「今の状況にショックを受けている」

 彭さんは今月2日、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」上に実名で、張高麗(Zhang Gaoli)氏との性的関係を告白する文章を書いた。張氏は、2012~17年に習近平(Xi Jinping)総書記(国家主席)が率いる最高指導部メンバーである共産党政治局常務委員を務め、副首相も兼任した超大物だ。投稿はスクリーンショットなどの形式で国内外に出回り、米国の主要紙が「#MeToo(私も被害者)」(世界に広がった反セクハラ運動)と関連づけて報じるなど波紋が広がった。その後、彭さんは消息不明になっている。

 大坂さんの投稿は次のような内容だ。

「みなさん、ニュースをご覧になっているかわかりませんが、テニス仲間の一人が性的暴行を受けていたことを明かし、その直後に行方不明になったというニュースを最近知りました。検閲はどんなことがあってもokではありません。彭帥と彼女の家族が安全で無事であることを願っています。今の状況にショックを受けています。そして、彼女の行く道に愛と光を送ります」

 これに「#whereispengshuai(彭帥はどこに)」というタグを添えた。

 大坂さんの投稿には、18日正午現在、4万7000件の「いいね!」がつき、リツイートは1万8000件に上る。

◇中国との広範なビジネス関係への懸念も

 このツイートに先立ち、女子テニス協会(WTA)会長のスティーブ・サイモン氏が14日、声明を発表している。

 今回の問題について「非常に憂慮すべきもの」との認識を示し、「彭選手、そしてすべての女性は、意見を聞いてもらう権利があり、検閲されるのではない」と訴えた。

 また「名乗り出た彭さんの勇気と力強さをたたえたい」としたうえ「(彼女の)申し立ては、完全に、公正に、透明性を持ち、検閲なしに調査されなければならない」と求めた。

 そのうえで「われわれの絶対的かつ揺るぎない優先事項」として「われわれの選手の健康と安全」と強調した。

 サイモン氏は米紙ニューヨーク・タイムズに対し「中国テニス協会を含む複数の情報源から、彼女が安全であり、物理的な脅威にさらされていないという確証を得ている」と明らかにしている。

 一方で、次のような考えも表明している。

「もし、最終的に適切な結果が得られなければ、われわれは中国でのビジネスをやらないというステップを踏むことも覚悟している」

 同紙によると、WTAは最近、中国市場を重視しており、2019年に始まった広東省深圳での「ファイナルズ」開催に関して有利な10年契約を結んでいる。中国側の主催者は新たなスタジアム建設費用を含め契約期間中に「10億ドル(約1140億円)以上」の投資を予定しており、大会の賞金額を1400万ドル(約16億円)に倍増させたという。

 このため「サイモン氏の発言は、ツアーに関わる中国との広範なビジネス関係を危うくする可能性がある」(同紙)との懸念も持ち上がっているのだ。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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