中国政府が巨大「29億円」銅像を撤去指示、移転にさらに26億円、市民「あまりに浪費すぎる」
中国国営企業が2016年に湖北省荊州市に1億7290万元(29億3700万円相当)かけて建立した巨大な銅像が、地元住民の「目障りだ」というクレームを受けて移転されることになった。銅像は解体・パーツ持ち運び・復元のプロセスで進められることになり、その費用も1億5500万元(26億3300万円相当)。莫大な資金が浪費されることになり、地元住民からため息が漏れている。
◇高さ規定に違反
銅像は、三国時代の蜀漢の武将、関羽をかたどったもの。
中国メディアの情報を総合すると、国有企業の荊州観光投資開発集団が、関羽ゆかりの地である荊州市への観光客の呼び込みを図るため、「世界最大の関羽の銅像」建立を計画。観光スポット「関公義園」にある「関公文化展示センター」(2階建て)の上に、4000個以上の純銅製パーツで銅像を組み立て、2016年6月に完成した。高さは台座を含めて57.3メートル、重さ1200トン以上。関羽が手にしている剣だけで136トンもある。「ギネス記録を作りたいという衝動があり、設計の過程で大きくなった」(荊州市文化観光局)そうだ。
だが、いざ巨大銅像ができあがると、地元政府に「目障りだ」「お金の無駄遣い」との苦情が殺到した。
加えて銅像が、「歴史文化名城保護計画」の「高さ24メートル以上の建物は禁止」という規定に違反して建てられていたことも判明した。
ただ、同開発集団が2014年に荊州市当局に建立の許可申請書を提出した際には、直ちに承認されたという。当局は当時、「『建物の高さ』には制限があると思っていたが、像については特に規定がない」と、ずさんな判断していたという。
結局、中央政府が対応に乗り出すことになり、住宅都市農村建設省は2020年10月、「像の高さが関連規定に違反し、歴史都市としての風貌と価値を台無しにしている」などとして撤去を命じた。
◇「冗談みたいな話」
中央政府の判断を受け、荊州観光投資開発集団は取り壊しではなく、別の場所への移転を計画。8キロ離れた郊外の観光地区で、関羽ゆかりの荊州市点将台に運ぶことにした。
その作業は▽関公義園で銅像からパーツを外す▽骨格解体▽「関公義園」の施設の修復▽運搬▽点将台での再設置▽点将台の広場や景観の工事――という流れになるという。
像の解体に約2カ月かかると予想されている。また、移転にかかる総額1億5500万元のうち、パーツ外しと復元だけで4000万元(6億7933万円相当)もかかるそうだ。
関公義園での撤去作業は6日に始まり、大型クレーンが動員されて銅像から次々にパーツが外された。その様子を地元住民は競って撮影し、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」などに写真をアップしていた。中には「作っては壊し、作っては壊し。巨大な労力とお金をかけるなんて、冗談みたいな話」というぼやきも。