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米国と中国、軍事力では果たしてどちらが上なのか?

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
(提供:PantherMedia/イメージマート)

 米中の覇権争いが鮮明になるなか、香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が今月12日、両国の軍事力を比較する記事を掲載した。公開情報に基づく数字の整理であり、分析は限定的ではあるものの、「中国は数の上では有利だが、米国には技術的、財政的なさまざまな優位性がある」との見解を示している。

【軍事費では米国】

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、米国の軍事費は世界最大であり、昨年では7780億ドル(約86兆円)と推定される。これに続く中国は2520億ドル(約28兆円)と推定され、その規模は大きく引き離されている。

 ただ、中国は20年以上にわたって軍事費を安定的に伸ばしていて、今年は前年比6.8%増と発表している。米国の専門家は「米国は軍事費で中国と同じペースにする必要がある」と警告している。

【総兵力では中国】

 最新の国防白書によると、中国の総兵力は2019年の段階で約200万人と、世界最大の軍隊とされる。米側は、国防総省の来年度予算案で「現役約135万人、予備役80万人」になっている。

 ただ、現代戦は技術・装備を重視するため、両国とも人員は減らす傾向にある。習近平(Xi Jinping)国家主席は2015年9月の演説で軍の兵力を30万人削減すると表明。バイデン米大統領も2022会計年度(2021年10月~2022年9月)の予算案で、約5400人の兵力削減を盛り込んでいる。

【地上軍では米国】

 米国防総省の報告書(2020年)によると、中国の陸軍は世界最大であり、91万5000人の現役兵を擁する。米国(48万6000人)の2倍近くだ。ただ、旧式の装備を使っていたり、より良い装備・訓練がなければ近代的な武器を効果的に使えなかったりする状態にあるという。

 また中国は地上軍に軽量で強力な自動化兵器を持たせているが、訓練が追いついていないとも指摘される。

 米経済誌フォーブスによると、戦車は米国が6333両を保有し、ロシアに次ぐ世界第2位。中国は5800両で第3位という。

【空軍力では米国】

 米国は1万3000機以上の軍用機を有して優位性を保つ。うち5163機を空軍が運用し、そこには次世代戦闘機F-35ライトニングIIやステルス戦闘機F-22ラプターといった世界最先端の戦闘機も含まれている。

 一方、中国は世界第3位の規模を誇り、米側の報告書によると、総計2500機以上の航空機と約2000機の作戦機を有する。最新鋭ステルス戦闘機には独自開発のJ20があり、米国のF-22に対抗するために設計された。

 両国は新型爆撃機の開発も進めており、米国は今月6日、開発中の次世代ステルス爆撃機B-21レイダーの画像と詳細を公開した。中国も新型ステルス爆撃機H-20の開発を進めている。

【海軍力では米国】

 米側の報告書によると、中国海軍は世界最大であり、約360隻の船を有する。対する米国は297隻。ただ、この数的な優位性は沿岸警備艇などの小型船に限られ、大型の軍艦となると、数的にも技術的にも経験的にも米国が優位に立つ。

 例えば、米国には11隻の原子力空母があり、従来型よりも長い距離を巡航できる。それぞれの空母には60機以上の航空機の搭載が可能だ。

 これに比べ、中国には空母は「遼寧」「山東」の2隻しかない。いずれも1980年代に旧ソ連が設計した空母をベースにしており、J-15戦闘機を24~36機搭載している。

 ただ、中国は太平洋地域で米国の海軍力に対抗するという野心を抱いており、2019年だけでコルベットや駆逐艦から巨大な水陸両用の上陸ドックまで、二十数隻の大型軍艦を進水させている。年内に最新鋭の電磁式カタパルト(射出機)を搭載した3隻目の空母を進水させ、4隻目の建造に着手する予定だ。

【核弾頭では米国】

 米国のウェブサイト「World Population Review」によると、核弾頭数は米国5800発に対し、中国320発となっている。中国は保有数を公表していないが、米側報告書は「200台後半」、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は「今年は350発」とそれぞれ推定しており、数字の上では米国に大きく見劣りしている。

 中国軍に近い関係者はSCMPの取材に対し、中国の核弾頭の備蓄は近年1000発に上るが、そのうち有効なものは100発にも満たない、と指摘している。

【ミサイルでは中国】

 米国は旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約(1988年発効)によって、地上発射型の中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルが禁止されてきた。したがって、こうしたミサイルは、条約の制約を受けない中国の独壇場となっていた。

 中国の中距離弾道ミサイル「東風26号」(推定射程4000km)は通常弾頭と核弾頭のどちらも搭載できる。米領グアムを射程に収めることから「グアムキラー」の別名が付けられ、その配備数を増やしているようだ。ただ、その数は公表していない。

 警戒を強めた米国は、トランプ政権時代の2019年8月、条約を破棄し、自らも中距離ミサイル開発に乗り出した。同月には地上発射型の中距離巡航ミサイルの発射実験、同年12月には地上発射型の弾道ミサイルの発射実験をそれぞれ実施した。

 ただ、このクラスのミサイルは、現状では中国が優位に立っているとみられる。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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