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中国のカフェと携帯ショップがトランプ氏の新型コロナ感染「セール」――ネット上に出回る不謹慎な“祝福”

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
中国の携帯電話店の看板(左)とカフェの看板=リンゴ日報サイトより筆者キャプチャー

 トランプ米大統領が新型コロナウイルス感染で入院したことを受け、中国のカフェや携帯電話店がこれを「吉報」として割引セールに乗り出している、との情報がインターネット上で出回っている。自国と激しく対立する国の元首の非常事態を揶揄するような内容だが、中国当局は不謹慎だとして次々に削除している。

◇トランプ氏感染を「国慶節の祝い」

 中国政府に批判的な論調で知られる香港紙「リンゴ日報」は4日、「トランプ米大統領が新型コロナ感染と診断された後、中国人は歓声を上げた」と伝えた。

 同紙は、北京にあるとされるカフェの看板の写真を掲載した。そこには次のような文言が書かれている。

「吉報」

「トランプ大統領が不幸にも新型コロナに感染してしまったことに対する支持を表明するため、イベントをやります。店にお越しのすべての人に“アメリカンコーヒー”を差し上げます」

 別の写真には携帯電話ショップのものとみられる看板が写されている。

「トランプ(大統領)の感染を祝うため、すべての携帯電話の値段を200~500元(3100~7800円程度)引き下げる。トランプ(大統領)の“コロナへの道”がどんどん長くなってほしい」

 また、同紙によると、中国河北省保定の自動車修理会社が「あらゆる車の修理とメンテナンスを原価で請け負う」という値下げを申し出たという。

 中国では10月1日が国慶節(建国記念日)にあたり、8日まで大型連休となっている。これに引っ掛けて「米大統領は今年の国慶節を祝ってくれない、と思っていたが、大統領が“この方法”を使うとは思わなかった」と書き込むネットユーザーもいる。

 こうした書き込みが急増したため、中国当局は関連するメッセージや記事を削除し始めたという。

◇見舞い電の速さは韓国、北朝鮮、日本、中国の順か

 米中対立が激化する中でのトランプ氏の感染だっただけに、中国側による見舞い電の報道もワンテンポ遅れた感が拭えない。

 トランプ氏がツイッターで「陽性だった」と伝えたのは2日午後2時(日本時間)の少し前。午後3時すぎには韓国・聯合ニュースが「文在寅大統領が快癒を祈念するという内容の見舞いの電報を発送した」と伝えた。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は翌日午前6時すぎ、金正恩朝鮮労働党委員長が見舞いの電報を送ったと伝えている。「あなたと令夫人が一日も早く全快することを心から願います。あなたは必ず、耐え抜くでしょう。あなたと令夫人に温かいあいさつを送ります」などという中身だったと明らかにしている。

 菅義偉首相も少しあとの同6時半すぎ、ツイッターで「大統領とメラニア夫人がコロナに感染したとのツイートを見て心配しました」「速やかにコロナを克服し、日常を取り戻すことを祈っています」と日本語と英語で綴った。

 ここから半日ほど遅れた同日午後6時(日本時間同7時)すぎ、中国国営新華社通信が「習近平主席がトランプ大統領夫妻に見舞いの電報を送った」と伝えた。

 習主席は「大統領とメラニア女史が新型コロナウイルスに感染していることを知り、私と妻の彭麗媛は、あなたと奥様にお見舞いを申し上げます。迅速な回復を願っています」と伝えている。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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