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「あなたは習近平主席にそっくりすぎる」――顔を問題視されてアカウントを閉じられた中国オペラ歌手

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
アカウントをブロックされた劉克清氏(筆者キャプチャー)

 中国語圏の複数のネットメディアによると、中国のインターネット上に開設された欧州在住の中国人オペラ歌手、劉克清氏の動画チャンネルが繰り返しブロックされる出来事があった。再開されたあとも頻繁に当局にブロックされるため、視聴者らが原因を調べたところ、ある推論が持ち上がった。「顔があのかたに似ているから」

◇認証を繰り返すもブロック

 劉克清氏は2019年9月、中国企業が開発・運営するショートビデオのプラットフォーム「抖音(TikTok)」にチャンネルを開設し、美しい声で歌う方法などを指導するビデオを公開。37万人を越える賛同を得るほどに人気を博していた。

 ところが、その後、劉克清氏の容姿がネット上で話題になり、チャンネルに関連してこんな書き込みが相次いだ。「習近平(中国国家主席)さんにそっくりだ」

習近平・中国国家主席(右)=中国外務省のホームページより
習近平・中国国家主席(右)=中国外務省のホームページより

 ネット上の情報を総合すると、TikTokの運営会社が「劉氏の姿が“敏感な問題”に発展する恐れがある」と判断し、アカウントを閉鎖したという説が成り立つ。

 劉克清氏は当初、「中国の建国記念日(10月1日)が近づいているため、当局が敏感になっている」と考え、アカウント閉鎖を受け入れていた。ただ、再開したあとも同様の処置が繰り返されたことから、運営会社に対する不信感を募らせたようだ。

 劉氏がネットユーザーに「迅速にブロックを解除する方法はないか」と尋ねたところ、「整形手術をして顔を変える」「影武者になる」「中南海(共産党や政府要人の居住区)に自由に出入りできる」など、冷やかしのコメントが相次いだそうだ。

 劉克清氏は1987年、米フィラデルフィアのアカデミー・オブ・ヴォーカル・アーツ(AVA)から奨学金を受けてテクニックを磨き、欧米のコンテストなどで優勝を重ねた実力派。フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなど15カ国・地域でソロコンサートも開いた経験もある。2016年には中国初の民間運営のオペラ会社を設立している。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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