「エアコンをつけて寝ると朝だるい」を防ぐには? 熱帯夜の上手な乗り切り方

Shutterstockより

毎夏やってくる「熱帯夜の睡眠」

 長い梅雨のあとに突然訪れた猛暑で、寝苦しい夜を過ごしている人も多いだろう。夜にエアコンをつけたままで寝ている人がほとんどだとは思うが、朝起きたときにだるさを感じる、あるいはだるくなるのではと不安で、モヤモヤしながらエアコンを使っている人もいるだろう。

 わたしが書いた2017年の記事「エアコンをつけたまま寝ると朝だるい理由 熱帯夜対策を再考する」に、エアコンでだるさが生じるメカニズムと簡単な対策は紹介した。今回は、アップデートした対策に絞って紹介する。

シャワーは寝つきによい

 快眠にぬるめの入浴がいいことは、ほとんどの人に知られている。しかし、わかってはいるが、猛暑で風呂に入るのもキツい、時間がないという人も多いはずだ。そこでシャワーならばサクッと浴びることができてラクだが、シャワーと入浴との違いはあるのだろうか。

 2019年にシャワーと入浴(Water-based passive body heating)と睡眠の関連を調べたメタ解析(きちんとした研究をまとめたもので、エビデンスレベルは高い)によると、入眠1~2時間前の入浴だけでなくシャワーも、主観的な睡眠の質を改善させ、寝つくまでの時間を短くしたという(1)。11人の少年サッカー選手を対象にした研究でも、寝る前のぬるめ(高くても40℃まで)シャワーで寝つくまでの時間が7分短くなり、寝つきやすくなった(2)。

 ぬるめのシャワーは、中途覚醒を減らすなど夜中~明け方までの睡眠を維持させるほどの効果はないようだが、寝つきやすくする効果はあるようだ。

 シャワーが難しければ、濡れたタオルで顔や腕などを拭いて、扇風機など風に当たる。冷たい足湯(足水?)に10分ほど足をつけるのも良い。シャワーが入眠に効果がある理由としては、深部体温を表面に放散させる効果だけでなく、ベタベタした皮膚のリフレッシュもある。足水による熱放散、あるいはタオル清拭によって皮膚がスッキリすれば、主観的に気持ちよくなるだけでなく、体温調整に重要な発汗がスムーズになる。

 身体がほてって熱いようであれば、血流が豊富な腋の下や鼠径部を冷水タオルなどで冷やせば、効率的なクールダウンになる。冷水にひたしたリストバンドのようなものでもいい。

 熱すぎるシャワー、冷水のシャワーは、刺激になって覚醒を高めてしまうのでよくないのは言うまでもない。

就寝直前のエクササイズと酒・コーヒーは禁止

 就寝直前の(激しい)運動は、やらないほうがいい。運動刺激によって、自律神経のアクセル役である交感神経は活発になり、リラックスの役割を果たす副交感神経が弱まってしまい、眠りにくくなる。眠る前に筋トレなどレジスタンス運動を行ったあとの睡眠では、副交感神経の働きの低下が実に数時間にわたって長く続くという(3)。

 寝ている間も、リラックスできず興奮し続けているということだ。自律神経系の負担は、暑い夏では特に睡眠に悪影響がでやすい可能性がある。身体を動かすならば、ヨガやストレッチなど、軽めで精神的にもリラックスできるものがよい。

 カフェイン、アルコールは睡眠の質を悪化させることも知られているが、夏は特に要注意だ。熱帯夜は発汗が多いため、人間の身体は脱水になりやすい。カフェインやアルコールは利尿作用も強く、特にアルコールは細胞内脱水を促すため、寝酒や寝る前コーヒーは、脱水になりやすくなってしまう。睡眠中に脱水が軽度でも生じていれば、疲れは取れず、だるさの遠因となる。

エアコンのつけ方

 過去記事に書いたように、温暖化した日本の夏は、北海道など冷涼地を除いては、一晩中エアコンは若干高めの温度でつけたままで過ごしたほうがいい。わたしは、27℃に設定して朝までつけたまま寝ているが、家族ともどもエアコンによるだるさは感じていない。

 人によって異なるので、26~28℃での調節になる。試してみて、自身の最適温度を見つけるしかない。わたしの27℃も、試行錯誤の結果である。

 注意点は、送風をできればオフにすることである。風に当たってしまうと、体温が低下し、だるさの原因となる。夏場の薄い掛けふとんでは、風による体温低下を防ぎきれない。最近のエアコンはおやすみ機能などを用いれば、送風はほとんどなくなる。

 それでもだるくなるという人は、起きる前に体温が上がるようにしておくことになる。朝までつけたままではなく、自身の起床時刻の1時間ほど前に、タイマーが切れる設定にするのも、まだ実証はされていないが、だるさが軽減する可能性がある。

 寝ついてから1、2時間ぐらいで、タイマーでエアコンがオフになる設定は、推奨できない。睡眠の前半は、徐波睡眠という深い睡眠が多く現れる大切な睡眠段階だ。この重要な睡眠前半というタイミングで、暑さで目が覚めたり、またリモコンのスイッチを気にしてしまうようでは、深い睡眠は減り、次の朝以降も睡眠不足と疲労が蓄積していく。就寝後もおよそ4時間はエアコンはつけたままにしておくべきだろう。

睡眠環境を整える

 熱帯夜は、エアコンをかけていても若干高めの室温になるので、脱水対策は欠かせない。寝る前に一杯の水とはよく言われるが、ノンカフェインで刺激味もなく、歯みがき後も大丈夫な飲料であれば、水でも麦茶でもいいので、補給はしておいたほうがいい。夜中に起きたときに補給できるように、冷蔵庫にも準備しておこう。

 寝具、寝衣も大切だが、これは個人の好みもある。ともに吸湿・速乾性、動きやすさが大切だ。敷きふとんには、ひんやりする市販のクールマットを敷く、掛けふとんはタオルケット、薄手のコットンやリネンなどだが、使って合うかどうか試すしかない。

 枕は、やや小ぶりの硬めのほうがいいだろう。大きくフワフワな枕では、頭が包み込まれてしまい、暑苦しく熱の放散にも適していない。発汗が多い季節なので、洗濯など清潔維持は、面倒かもしれないが地道な快眠のコツだ。深部体温がどうのこうのいっても、主観的な心地よさは重要である。

 わたしは、夏はスポーツメーカーのゆるめのジョギング用Tシャツを愛用している。合成繊維などは、吸湿・速乾性に劣るのですすめられない。エアコンによる寒さが怖いからといって、着込みすぎは熱放散を妨げ、睡眠の妨げとなる。

 夜中起きてしまい眠れないときは、さすがにシャワーを浴びるわけにはいかない。冷水のミストスプレーなどは、プラセボかもしれないが、つらい夏の中途覚醒にはあると精神的にラクになれる。

来夏以降の熱帯夜に備えて

 ベッドは滅多に買い換えるものではないが、理想を言えば、ベッド幅は大きいほうがいい。隣に子どものような発汗して激しく動くものと添い寝していれば、工夫にも限界がある。一人で寝ている人も、たとえば一方が壁で寝返りを打てない環境では、睡眠の質は落ちる。日本の居住環境では無理があるのは仕方がないが、今後買うならベッドをケチらず広めのものにしたほうがいい。

 マットレスも経年劣化があるため、10年以内に買い換えたほうがいいだろう。アスリートが宣伝している高反発マットレスは、深部体温を降下させる作用が強いため、夏の睡眠には特に向いている可能性がある(4)。

 エアコンを買って何年もたつ、あるいは電気代が高いなどの問題を感じている人には、買い換えを提案したい。もっとも、もう数週間すれば夏も終わりなので今すぐの話ではなく、来年以降の話である。

 エアコンのテクノロジーは、特に日本は諸外国に比べて格段にハイレベルである。わたしはエアコン製造の専門家ではないが、エアコン研究の最先端に個人的には非常に興味がある。一般財団法人 家電製品協会による「エアコンの進化した省エネ技術と技術トレンド」には、エアコンの驚異的な進化が解説してある。だるさだけでなく、電気代などわたしたちが心配しがちなエアコンに関する問題は、技術力によって目覚ましい改善が図られている。

 いくつか例を挙げれば、インバーター運転による省エネや熱リサイクル方式の再熱除湿、PM2.5や細菌・ウィルスなど空気清浄機能、AI(人工知能)による部屋の状況を学習し、人の状態を見極めての温度調整、などである。エアコンを適宜アップデートし、使いこなしていくことは、猛暑を乗り切る今後の時代においては欠かせないだろう。

 

1. Haghayegh S et al. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135.

2. Whitworth-Turner C et al. A shower before bedtime may improve the sleep onset latency of youth soccer players. Eur J Sport Sci. 2017;17(9):1119-1128.

3. Shioda K et al. The effect of 2 consecutive days of intense resistance exercise on sleep in untrained adults. Sleep and Biological Rhythms. 2019;17(1) 27- 35.

4. Chiba S et al. High rebound mattress toppers facilitate core body temperature drop and enhance deep sleep in the initial phase of nocturnal sleep. PLoS One. 2018;13(6):e0197521.

*著者はエアコンを製造・販売する企業団体と、申告すべき利益相反はない。

1970年石川県生まれ、東京医科歯科大学卒業。東京医科歯科大学助教、自治医科大学講師、ハーバード大学、スタンフォード大学の客員研究員などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授。精神科専門医、日本睡眠学会専門医など。専門は睡眠、身体運動とメンタルヘルス。著書に「『テンパらない』技術」(PHP文庫)、「休む技術」(大和書房)、「悪夢障害」(幻冬舎新書)など多数。

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