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スリランカ大統領が辞任を表明、13日に正式発表へ。

にしゃんた社会学者/タレント
(写真:ロイター/アフロ)

 改めて強調したいが、7月9日はやはりスリランカの歴史に残る一日となった。その日の午前8時まで行われていた外出禁止令が解除された数時間後、何千人もの抗議者たちがコロンボの街に繰り出し、これまでで最大の反政府デモ行進となった。数千人のデモ隊がバス、列車、トラックで全国からコロンボに詰めかけ、経済危機を解決できない政府に対する憤りのエネルギーを一気に爆発させたように思えた。

(民衆にとって宴会場と化した大統領官邸。深夜歌い続ける人々)

 治安部隊の抵抗にもかかわらず、群衆はあっという間に大統領官邸と首相官邸を占拠した。その後、群衆が公邸内の大統領専用寝具でくつろぎ、当直室で電話をかけ、公邸内に緊急用に作られた隠れ家を紹介し、公邸内のプールに飛び込み、大合唱するなど夜通し公邸を満喫する映像がSNSなどで流された。 

(大統領官邸に押し入った群衆がその後、思い思いに過ごしている姿)

 国防当局によると、ラジャパクサ大統領は週末に予定されていたデモ隊の集会を前に、安全のために金曜日に公邸のから退避させられたと地元メディア(news wire)は報じた。時を同じくして、スリランカ海軍の艦船がコロンボの港で大統領のものとみられる荷物を急いで詰め込んでいるとソーシャル・メディアが報じた。

 群衆の大統領官邸への侵入を受け、マヒンダ・ヤパ・アベイワデナ国会議長によって、今後の政権の安定について話し合うための各党代表者会議が急遽招集された。この会議で過半数の賛成を得た決定の第一項は、大統領と首相の速やかな辞任要求であった。

 この会談の終了後まもなく、ラニル・ウィクラマシンハ首相は辞意を表明した。会議での決定事項が議長から文書で大統領に示された後しばらくして、大統領から辞意が表明された。議長はスリランカ国民に対し、「私は大統領から、平和的な権力移行を確実にするため、大統領は7月13日に辞任することを国民に伝えるよう要請された」と述べた。

 同じ頃、国防参謀長のシャウェンダラ シルワ将軍は、現在の国の政情不安定な状況に踏まえ、スリランカの平和を維持するために三軍と警察を支援するよう、すべてのスリランカ人に呼びかけた。

 海外からもスリランカの現状への懸念と将来への期待が表明され、米国務省は新政府に対し「新政府は長期的な経済的安定を達成し、スリランカ国民の不満に対処する解決策の特定と実施に迅速に取り組むべきである」と伝えられたとスリランカの地元メディア(news wire)が報じた。

(今回の民衆の力で起こされた改革を風刺した政治漫画)

社会学者/タレント

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「Mr.ダイバーシティ」などと言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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