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ドラマ評論家・成馬零一のドラマ短評 サスペンスが生み出す人間ドラマ『マイファミリー』

成馬零一ライター、ドラマ評論家
テレビとリモコン(提供:イメージマート)

 日曜劇場(TBS系日曜夜9時枠)で放送されているドラマ『マイファミリー』が今夜、最終回を迎える。

 本作は連続誘拐事件を題材にしたサスペンスドラマで、ノンストップファミリーエンターテインメントと銘打たれている。

 物語はゲーム会社「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」の社長・鳴沢温人(二宮和也)の娘が誘拐される場面からはじまり、スマホ、動画配信、SNSといった現代のテクノロジーを用いた誘拐犯との駆け引きが描かれる。

 さながら黒澤明が監督した1963年の映画『天国と地獄』の令和版といった印象だ。

 娘を無事に取り戻し、事件は一時収束するのだが、その後、第2、第3の誘拐事件が起こり、鳴沢の友人で元刑事の藤堂樹生(濱田岳)の娘が誘拐された4年前の未解決誘拐事件が関わっていることが明らかになっていく。

 脚本を担当しているのは黒岩勉。日曜劇場では『グランメゾン東京』『危険なビーナス』、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』を手掛けているのだが『マイファミリー』は黒岩の出世作となった『僕のヤバイ妻』(フジテレビ系)を彷彿とさせる。

 『僕のヤバイ妻』は、妻が誘拐された夫が主人公の物語なのだが、実は夫には愛人がおり、妻の殺害を目論んでいた。

 犯人だと警察に疑われる中、妻を殺害しようと悪戦苦闘する夫の姿は滑稽で、ブラック・コメディ色の強いサスペンスとなっていた。

 本作で、市川森一脚本賞を受賞した際のコメントで黒岩は「『結末はどうなるの!?』というスポーツ中継のようなドラマにしたかった」と語っている。

 夫婦が殺し合うという殺伐とした展開で登場するキャラクターもほとんどクズでありながら、妙にカラッとしていて後に引かないのが『僕のヤバイ妻』の面白さだ。

 黒岩が描くドラマのキャラクターは善人も悪人も、極限状態の中で自分がやるべきことを判断して常に最適の行動を取ろうとする。

 その振る舞いがスポーツのアスリートのようにためらいがないため、各登場人物の動きから目が離せない。

 それは『マイファミリー』も同様だ。

 物語の推進力は「連続誘拐事件の謎」という「考察」を誘う欲望だが、毎話の面白さは各登場人物の心理的駆け引きで、そのやりとりの中にそれぞれの人間性が滲み出るため、ドラマとして見応えがある。

 仕事にかかりきりで、家庭をないがしろにするダメな父親という、男として最悪の印象だった鳴沢が、誘拐事件を通して少しずつ変わっていく姿を、二宮和也は好演しているのだが、鳴沢の成長ドラマとして、とても良くできている。

 妻の未知留を演じる多部未華子との冷え切った夫婦関係は、学園ドラマ『山田太郎ものがたり』(TBS系)で二人が共演する姿を楽しく見ていた立場からすると、観ていて苦しかったが、逆に言うとそれだけ芝居の力が圧倒的だったことの現れだろう。

 二宮の連続ドラマ出演は年々、少なくなっているが、これをきっかけに今後も頻繁に出演してほしい。そう思わせるハマり役だった。

ライター、ドラマ評論家

1976年生まれ、ライター、ドラマ評論家。テレビドラマ評論を中心に、漫画、アニメ、映画、アイドルなどについて幅広く執筆。単著に「TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!」(宝島社新書)、「キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家」(河出書房新社)がある。サイゾーウーマン、リアルサウンド、LoGIRLなどのWEBサイトでドラマ評を連載中。

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