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インフルエンザ2015 〜今だから出来る予防法と今年の流行〜

中山祐次郎外科医師・医学博士・作家
(写真:アフロ)

結論から言えば、こうなります。

インフルエンザ予防・・・

・ワクチンを打つ

・人ごみではマスクをする

・外出後は手洗いうがい

・きちんと休養、しっかり栄養

遅めの冬がようやくやってきたところで、今年のインフルエンザ、流行が過去5年で最も遅いのではないかという話を聞きました。事実、厚生労働省発表のデータでも今年のインフルエンザ患者さんの発生はゆっくりとした増加を示しています。

筆者の周りでも、ちらほらインフルエンザにかかったという話を聞いています。少しずつ増えている実感はあります。

ところで、インフルエンザワクチンは受けたでしょうか。筆者は病院で勤務する外科医なので、病院からの通達で受けました。筆者の病院では医師・看護師のほぼ全員が接種を受けています。

かかってしまったら辛い、インフルエンザ。筆者も一昨年かかり、苦しい数日間を過ごしました。おまけに仕事を休まねばならず、職場に大変な迷惑をかけてしまいました。ポイントは、いかに予防するかです。

それでは始めに書いたインフルエンザ予防法について説明しましょう。

・ワクチンを打つ

ワクチンについて、簡単にご説明します。

あまり知られていませんが、インフルエンザのワクチンは、国内外のデータから「今年の流行はきっとこの種類のウイルスだろう」と専門家たちが予測して、3つ決めています。

ですから外れることも当たることもある。これは予測している以上仕方のないことです。この予測が少しでも当たる可能性が高くなるように、今年(2015年)からはターゲットの種類が3つ→4つになりました。これを「4価ワクチン」と呼んでいます。アメリカでも2013年に4価ワクチンが始まり、わが国でも今年から導入されました。これにより、さらに高い効果が見込まれています。

ちなみに、今年のワクチンの内訳は

A/カリフォルニア/7/2009 (X-179A) (H1N1)pdm09

A/スイス/9715293/2013 (NIB-88) (H3N2)

B/プーケット/3073/2013 (山形系統)

B/テキサス/2/2013 (ビクトリア系統)

出典:平成27年度インフルエンザHAワクチン製造株の 検討について(回答)

でした。

そしてとても重要なことですが、

「ワクチンを受けてもインフルエンザにかかることはある」ということ。

ワクチンを受ける意味は、

・インフルエンザウイルスが体内で増えてしまったとしても発熱などの症状を抑える効果

・もしかかってしまっても肺炎や脳症などの重症化を予防する効果

の二つです。

ワクチン接種を考えるのであれば、一月末からの流行を見据え年内のうちに接種をお勧めします。なぜならワクチンの予防効果が期待できるのは、接種した(13歳未満は2回目を接種した)2週後から5か月程度までと考えられているからです。

しかしながら、ワクチンは100%安全ではありません。副作用もありますし、毎年0~4人ほどの方がワクチン接種で死亡した可能性があります。死亡例のほとんどが重度の疾患をもつ高齢者でした。

なお、今年から4価になったことを受けワクチンの値段は少し高くなっていますから、例年よりも少し接種代も高くなっています。リスクと利益を天秤にかけ、ご自身で判断してくださいね。

・人ごみではマスクをする

インフルエンザは咳やくしゃみの際に口から発生されるつばなどによる「飛沫感染」で感染します。飛沫を浴びないようにすればインフルエンザに感染する危険性は減るでしょう。

「咳エチケット」という言葉がありますが、これは「咳をしている人は自主的にマスクをするのがエチケットですよ」というもの。

一歩進んで、学校や職場などで咳やくしゃみをしている人にはマスクを差し上げる「思いやりマスク」をしましょう。ひとつ100円で買える予防策です。

・外出後は手洗いうがい

これも手や喉についたウイルスを洗い流すために大切です。インフルエンザだけでなく風邪や、冬季に流行するノロウイルスの予防にもなります。

・きちんと休養、しっかり栄養

これこそが最重要の予防法かもしれません。

上記の方法でウイルスを100%防ぐことはなかなか難しいので、体の抵抗力に期待しましょう。

きちんと睡眠時間をとり、バランスの良い食事を食べることがあらゆる疾患の予防になりますので。

(参考)

厚生労働省「平成27年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」

国立感染症研究所

外科医師・医学博士・作家

外科医・作家。湘南医療大学保健医療学部臨床教授。公衆衛生学修士、医学博士。1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、大腸外科医師として計10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長、2021年10月から神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院で手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「医者の本音」、小説「泣くな研修医」シリーズなど。Yahoo!ニュース個人では計4回のMost Valuable Article賞を受賞。

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