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チームを救った三笘と組織力破綻の関係性とは? 万策が尽きた日本の現状【オマーン戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

森保ジャパンは神頼みでW杯を目指す

 伊東の2試合連続ゴールにより、0-1で勝利を収めたアウェイでのオマーン戦。相変わらず攻撃が停滞していた日本を救ったのは、後半開始から起用された三笘だった。

 代表デビューにもかかわらず、三笘は最大の持ち味であるドリブルの仕掛けをファーストプレーから実行。その後も果敢に仕掛けることで、それまで安定していたオマーンの守備網に穴を空けた。

 個人の力に頼るサッカー。三笘の活躍ぶりとこの試合における功績は称賛してしかるべきだが、裏を返せばそういうことになる。これまで組織力を重視しながら強化を図ってきた森保ジャパンにとって、だから今回の勝利はある意味で皮肉な結果とも言える。

 これまで森保監督は、三笘を招集できる時も招集せず、メンバーに選んだ東京五輪の時も、負傷が癒えてもジョーカー起用しかしなかった。招集するかしないかは監督の好みの問題かもしれないが、招集しておきながら、攻撃が手詰まりしていたベトナム戦でも三笘というカードを切らなかった。

 ところが、今回は0-0で迎えた後半開始から、柴崎に代えて三笘を起用。結果的に、それが勝利を呼び込む大きなきっかけになった。それによりW杯自動出場権内の2位に浮上したことは確かだが、これまで突き詰めてきたはずの組織的なサッカーが復活して勝ったわけでは決してない。

 そこに、今回の勝利を手放しで喜べない理由が潜んでいる。

 実際、三笘を起用して布陣を4-2-3-1に変更しても、終了のホイッスルが響くまで連動性のある攻撃を一度も拝むことはできなかった。むしろ、三笘の突破ありきのスタイルが色濃くなり、中央への縦パス本数は前半よりも減少。

 攻撃が活性化したことは間違いないが、守備と攻撃の分業制とも言えるサッカーに様変わりした印象も否めない。

 今後も三笘は攻撃の起爆剤であり続けることができるのか。時間の経過とともに突破成功率が低下したこの試合を見る限り、そこにはまだまだ疑問は残る。当然、プレータイムが短いため、守備面の不安も残る。

 現状で言えば、攻撃の打開策がない時のジョーカー起用が指揮官の考えか。これまでの森保監督の采配を見る限り、そう見るのが妥当だろう。

 しかし最大の問題は、これまで貫いてきた4-2-3-1が機能しなくなったことと、窮地に追い込まれたオーストラリア戦からシフトチェンジした新布陣4-3-3も、組織的に機能していないことだ。

 そして、中盤に3人のボランチタイプを配置する4-3-3は、守備では確実に安定性を高めた一方で、攻撃では連動性のかけらもなくなってしまい、いよいよ個人に頼るサッカーに傾きつつあるということだ。

 親善試合を組めないスケジュールでW杯予選が続く以上、おそらく新布陣の4-3-3が突如として機能することはないだろうし、組織的なサッカーが復活することもないだろう。

 つまり、持っている10の力を組織力で11、12と上げていくのではなく、いかにして10の力を7、6と低下させないように戦えるか。森保ジャパンは、その作業を繰り返しながら残り4試合に挑むことになる。

 あとは、吉田と冨安の両CBが欠場することなく、伊東と三笘が相手に研究されてもそれを凌駕するだけの力を発揮し続けられるかどうかが、日本の行方を左右する。

 いずれにしても、ほぼ万策が尽きた状態の森保ジャパンは、まさに神頼みの状態でカタール行きの切符を目指すことになりそうだ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.5点

後半早々には連続したクロス対応で積極性と確実性を披露。その他、危なげないパフォーマンスを最後まで持続した。最終予選に入ってから大きなミスもなく、安定感が目立つ。

【右SB】山根視来=6.0点

後半に突破を許した場面もあったが、開始から斜め方向のくさびのパスにトライするなど積極性が目立った。伊東との兼ね合いでクロス本数は少なめだが、違和感なくプレーした。

【右CB】吉田麻也=6.0点

ロングフィードや攻撃時のセットピースで物足りなさを感じさせたが、守備では目立ったミスもなく安定したパフォーマンスを披露した。主将としての責任感もにじみ出ている。

【左CB】冨安健洋=6.0点

いつもと比べると縦パス供給などフィード面での貢献が控えめだった印象。守備では相変わらずの安定感で、綻びはなかった。所属クラブでの状況を考慮して、右CBに戻る手も。

【左SB】長友佑都(62分途中交代)=5.0点

前半23分にクロスから決定機を演出したのが唯一の大仕事。高い位置をとる役割を担っていることは理解できるが、中途半端な位置取りにより味方にカバーリングを強いる場面も。

【アンカー】遠藤航=5.5点

疲労の積み重ねもあるだろうが、4-3-3布陣を変更してから明らかに攻撃面で存在感が失われつつある。ボールを刈り取る作業は相変わらずだが、攻撃の起点になれないのが悩み。

【右インサイドハーフ】柴崎岳(HT途中交代)=5.0点

中盤のバランスを意識しすぎて本来の実力を発揮できないまま試合を終えた。ポゼッション型のスタイルではない時の振る舞いが目下の課題。周囲との連係も改善の余地がある。

【左インサイドハーフ】田中碧=5.5点

攻守両面で強度の高いプレーが求められるインサイドハーフで先発出場したが、テンポを作るという得意の作業をできないままハーフタイムに退いた。序列は確実に下がっている。

【右ウイング】伊東純也(82分途中交代)=6.5点

後半81分に値千金の決勝ゴールを決め、2試合連続でチームを勝利に導いた。ただ、立ち上がりから厳しいマークに遭い、決定機を逃すなどパフォーマンスは決して良くなかった。

【左ウイング】南野拓実(62分途中交代)=5.0点

中央に人数が多い相手の布陣も影響し、中央にポジションをとりすぎてボールを引き出すことができず。チャンスも演出できず、自らフィニッシュもできず、ベンチに下がった。

【CF】大迫勇也(89分途中交代)=5.5点

ベトナム戦のように下がってボールをもらう選択をせず、前線に張ってボールを受けようとしたが、効果的なプレーは少なかった。味方の位置が遠く、孤立する傾向は変わらない。

【MF】三笘薫(HT途中出場)=6.5点

柴崎に代わって後半開始から左ウイングでプレー。代表デビュー戦にもかかわらず、停滞していた攻撃を活性化。ウイングらしい仕掛けで相手守備網を破壊し、アシストも記録。

【MF】古橋亨梧(62分途中出場)=5.5点

南野に代わって後半途中から1トップ下で、その後は1トップでプレー。相手ボックス内で危険な動きをして可能性を感じさせた。スタメン出場が少しずつ近づいている印象。

【DF】中山雄太(62分途中出場)=6.0点

長友に代わって後半途中から左SBでプレー。決勝点のシーンでは、前からプレスをかけてボールを刈り取り三笘に預けた。プレー時間も増加し、次戦はスタメン出場の可能性十分。

【FW】浅野拓磨(82分途中出場)=採点なし

伊東に代わって後半途中から左ウイングでプレー。出場時間が短く採点不能。

【MF】原口元気(89分途中出場)=採点なし

大迫に代わって後半途中からインサイドハーフでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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