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3バック採用でも攻撃機能不全。なぜ同じ過ちは繰り返されてしまうのか?【パナマ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
写真提供:日本サッカー協会

 年内最後となる代表ウィークで、森保ジャパンは13日のパナマ戦を1-0で勝利した。10月のカメルーン、コートジボワール、そして今月17日のメキシコと比較すると、パナマは明らかな格下だ。

 そういう意味で、南野のPKによる1点だけに終わったことは、寂しい限り。とりわけ相手が10人になってから多くのゴールチャンスを作っただけに、追加点が奪えなかったことは、大きな課題としてクローズアップされる。

 逆に、もし1-0で終えるなら、最後の10分は敢えて追加点を狙わず、試合をコントロールするという選択肢もあったはず。そうであるなら1-0でも何も問題はないが、そうしなかった中での1-0は、やはり問題だ。

 一方、この試合で最大の注目ポイントとなったのは、森保監督が試合開始から3バックを採用したことだった。

 10月の2試合では、4バック時の本職左サイドバックがいない中、メインの4-2-3-1にこだわってオプションの3バックはカメルーン戦の後半だけしか使わなかったが、今回の試合では、90分を通して3-4-2-1を採用した。

 そのこと自体は評価したいが、それにしても内容が悪すぎた。

 特に前半はパナマが前から組織的に守備を行ったため、ダブルボランチが消されて再び攻撃が機能不全に。これまで何度も見た光景が、3バックでも繰り返されたわけだ。

 相手がダブルボランチ経由のビルドアップを消すための守備をしてくることは、予め想定できていたはずなのに、今回もプレスを回避して「ボールの出口」を見つけ出す工夫がほとんど見られなかったことは、大きな問題点と言える。

 唯一、柴崎がポジショニングで工夫を見せた場面もあったが、周囲との連係がなく、ほとんど効果なし。橋本が最終ラインに加わったり、植田や板倉がドリブルで持ち上がったり、方法はいくつか考えられるが、課題修正の跡は見せられないままだった。

 5バックになってしまう時間が長くなった要因のひとつだ。

 もっとも、同じ問題が繰り返される最大の原因は、選手任せの指揮官の方針にある。選手だけで問題が解決できないなら、指揮官がアイデアを提供し、具体的指示を与える必要があるだろう。

 後半はパナマの運動量が落ち、前線からの守備が機能しなかったため、日本はリズムをつかむことができたが、親善試合は前半の重要度が高いことを考えると、現状、3バックはまだオプションになり得ないレベルと言える。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

相手のミドルシュートに対して落ち着いて対処した。それ以外のプレーも危なげなく及第点のパフォーマンスだったが、ビルドアップ時の関わり方はまだ改善の余地が残される。

【右DF】植田直通=6.0点

精度をもっと磨く必要はあるものの、前半から積極的にフィードを試みて、そのいくつかがチャンスにつながった。守備面でも大きなミスはなく、上々のパフォーマンスだった。

【中央DF】吉田麻也=5.5点

自らのミスでピンチを招いたシーンもあったが、守備面では3バックの中央で全体を統率。周りへの指示も含め、ビルドアップ時にプレスを受けた際の回避で工夫が求められる。

【左DF】板倉滉=5.5点

3バックの一角に抜てきされた中、落ち着いたプレーを見せて守備面における評価を高めた。ただ、持ち出しやフィードなど、ボールの出口を見つけ出す引き出しをもっと増やしたい。

【右ウイングバック】室屋成(82分途中交代)=5.5点

前半は得意の攻撃参加が影を潜めてクロスは0本。時間の経過とともに基本ポジションが最終ラインまで下がってしまった。後半は攻撃に絡み始め、59分にはシュートを放った。

【左ウイングバック】長友佑都(58分途中交代)=5.5点

前半は相手に突破を許してピンチを招き、後半は身体を張ってシュートブロック。コンディションも含め、全体的に低調なプレーに終わった。歴代2位となる123キャップを記録。

【右ボランチ】橋本拳人(HT途中交代)=5.5点

全体的にそれほど悪いパフォーマンスではなかったが、存在感は薄かった。ビルドアップ時に相手にマークされた際、最終ラインに加わるなど、プレスを回避する必要があった。

【左ボランチ】柴崎岳(82分途中交代)=5.5点

相手のプレッシャーを回避しようとポジションを高めにとる工夫も見せたが奏功せず。逆にボールを失うシーンなどミスの方が目立ってしまった。先月に続き、調子が上がらない。

【右シャドー】三好康児=5.5点

スタメンに抜てきされてフル出場。前半はパスを受けられず影が薄かったが、後半からは縦パスを受けてチャンスに絡んだ。試合終了間際に得たビッグチャンスは決めたかった。

【左シャドー】久保建英(72分途中交代)=6.0点

出場した過去の試合の中では最も良いパフォーマンスだった。南野がPKをもらったシーンは絶妙なパスを供給した。ただ、細かなミスも散見され、まだ違いを見せるには至らない。

【1トップ】南野拓実(72分途中交代)=6.0点

慣れない1トップで前半は孤立する場面もあり苦労したが、後半は多くのチャンスに絡み、61分に自ら得たPKを決め、それが決勝点になった。マークを外す工夫が求められる。

【MF】遠藤航(HT途中出場)=6.5点

後半開始から橋本に代わってボランチでプレー。守備面では相手の攻撃の芽を摘み、危険察知能力の高さを証明。攻撃では素早い縦パス供給でチャンスを演出し、評価を高めた。

【MF】原口元気(58分途中出場)=6.0点

長友に代わって左ウイングバックでプレーし、相変わらずのユーティリティ性を示した。積極的に攻撃にも参加し、クロスボールも供給。広範囲に動いて守備にも貢献した。

【MF】鎌田大地(72分途中出場)=6.5点

久保に代わって途中出場し、左シャドーでプレー。相手が10人になってからは中盤のスペースを自由に動き、抜群のタイミングで浅野を生かすパスを供給。調子の良さを示した。

【FW】浅野拓磨(72分途中出場)=6.0

南野に代わって1トップでプレー。相手CBの間を狙って、持ち前のスピードを生かしたランニングでチャンスを作った。77分には相手GKの反則を引き出し、退場に追い込んだ。

【MF】中山雄太(82分途中出場)=採点なし

柴崎に代わって途中出場。出場時間が少なく採点不能。

【DF】酒井宏樹(82分途中出場)=採点なし

室屋に代わって途中出場。出場時間が少なく採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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