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あのW杯ベルギー戦の教訓はどこへ? 悪化する日本サッカーの悪しき習慣【キルギス戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

圧勝したキルギス戦で森保ジャパンが反省すべきこと

「アジアカップ前の最後の試合でしたが、準備としてどれだけものになったか分かりません。ただ、我々がより高いレベルを目指して戦うことを選手が示してくれたことで、アジアカップに向けて良い準備ができたと思います」

 森保監督が試合後の会見の冒頭で語った通り、4-0で勝利したキルギス戦は、森保ジャパンにとって本番前の最後の準備試合としては微妙なものとなってしまった。

 近年の日本代表戦で、これほど明確なハーフコートゲームを見た記憶はない。この試合結果と内容をどのように評価すべきかと言えば、評価対象外の試合として捉えるのが妥当。それが、試合後の率直な感想だ。

 キルギスは、来年1月のアジアカップに初出場を果たしたFIFAランキング90位の好チーム。それがこの試合の煽り文句となっていたわけだが、それに無理があることはキックオフ直後に証明された。

 そもそもこの試合のキルギスは、この試合に登録された23人のうち3人が所属クラブなしというチームだった。そのうち1人がスタメンに名をつらね、19分の原口の直接フリーキックによるゴールを演出したGKが、その無所属選手だった。

 日頃はどのようにしてトレーニングを行っているのか? そこにある種の興味が沸いたが、とにかくキルギスが3万人を超えるアウェイ戦、しかも日本独特の雰囲気の中で行われる超アウェイ戦の中で、平常心を保ってプレーすること自体に無理があった。

 開始2分の山中の代表初ゴールも、明らかにキルギスの選手たちが地に足がついていない状態で生まれた代物だった。

 

 もっとも、それは対戦が発表された時点である程度予想はできたこと。森保監督が、ベネズエラ戦をレギュラー組による本番前の総仕上げとして臨み、このキルギス戦をサブ組のテストに使った理由だろう。

 ただ、そんな格下相手に完勝した中でいただけなかったのは、森保ジャパンのゲーム運びだった。

 日本のサッカーは、テンポは速いが、90分間の中でリズムが変わることがなく、つねにフルパワー、フルスピード。要するに、試合をコントロールできない“伝統的な悪癖”がある。

 それは、後半59分に3人の選手交代を行い、大迫、堂安、柴崎が投入されて以降も同じだ。さらに言えば、3-0、4-0と加点した後の約20分間も、踏んだアクセルを弛めることなく、ただ一辺倒にギアを上げたままプレーし続けていた。

 もちろんこれまでの日本代表も、同じ傾向はあった。しかし、「与えられた環境で最善を尽くすこと」をモットーとする森保ジャパンにおいては、森保監督の誠実で真面目なパーソナリティを象徴するかのように、特にその傾向が強くなった印象を受ける。

 思い出されるのは、ロシアW杯のベルギー戦だ。後半開始後に立て続けにゴールを決めて2-0とリードしながら、ゲームをコントロールできなかったことでベルギーの反撃に飲み込まれ、最後の最後で逆転負けを喫した試合である。

 喉元すぎれば熱さを忘れる。あの試合の教訓は、一体どこに消えてしまったのか?

 多くのファンが詰めかけた試合で、できるだけ多くのゴールを決めてその期待に応えたいという姿勢自体は理解できる。アジアカップ前に、各選手が全力でアピールしたい気持ちを抑えることが難しいことも、分からないわけではない。

 しかしながら、少なくとも4-0とした後の約20分間は、意図的に横パスやバックパスを使って相手をいなし、ゲームをコントロールして終わらせることは、決して“手抜き”のサッカーなどではないことは知っておく必要があるだろう。

 それが相手の戦意を喪失させ、ゲームをパーフェクトに終わらせることにつながるからだ。強いチームのそつのないゲーム運びであり、強者のしたたかさでもある。

 後半になって持ち直したかに見えたキルギスに対し、レギュラーメンバーを矢継ぎ早に前線に投入して2点を加えながら、さらに最後までゴールを奪いにかかったことを評価するのか、それとも最後のゲームの終わらせ方を問題視するのか。

 ほとんど収穫が得られなかったこの試合において、唯一日本が学ぶべき点があるとすれば、おそらくそこにあるのではないだろうか。その解釈の仕方によって、将来にまた過去と同じ過ちを繰り返すかどうかの分かれ道になるような気がしてならない。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

ピンチらしいピンチもなく、プレー機会においては無難に対処した。ただ、ゴールキーパーにとっては難しい展開で、ほぼ採点不能と言えるような試合になってしまった。

【右SB】室屋成=6.0点

積極的に攻撃に絡み、右サイドからのクロスを何度も入れるもゴールに結びつくことはなかった。とりあえず、酒井宏樹のバックアッパーの地位は確保している。

【右CB】三浦弦太=6.0点

試合展開が試合展開だったので、守備では難なくプレー。セットプレー時は惜しいヘディングシュートもあったが、冨安とのポジション争いでは逆転された印象も。

【左CB】槙野智章(61分途中交代)=6.0点

キャプテンとして出場。積極的にビルドアップに絡んだが、後半61分に自陣ゴール前での接触プレーで負傷。大事をとってベンチに下がった。

【左SB】山中亮輔=6.5点

代表デビュー戦ながら、開始早々のファーストタッチで完璧なシュートを突き刺して代表デビュー最速得点記録を樹立。ただ、それ以外のプレーに特筆すべきものはなかった。

【右ボランチ】守田英正=6.0点

大迫のゴールの起点となった北川へのくさびは高評価。攻守両面において及第点の出来ではあったが、プラスアルファの部分はほとんどなかった。

【左ボランチ】三竿健斗(59分途中交代)=6.0点

状況に応じた的確なポジショニングを含め、中盤をオーガナイズした。試合勘が戻らない柴崎の出場機会を与えるべく、後半途中に退いた。

【右ウイング】伊東純也(59分途中交代)=6.0点

この試合では外に張ってのプレーより、中間ポジションを意識してプレー。攻撃に絡んで相手守備陣を揺さぶったが、それによって自身の良さが影を潜めてしまった印象。

【トップ下】北川航也(72分途中交代)=6.0点

72分にゴール前のワンタッチパスで大迫のゴールをアシスト。十分なプレー機会を与えてもらったが、あまりインパクトを残すことはできなかった。

【左ウイング】原口元気(72分途中交代)=6.5点

相手GKのミスではあったが、前半19分に自ら得たフリーキックを直接決めた。この試合のスタメンでは唯一のロシアW杯レギュラーだったが、印象はやや薄め。

【CF】杉本健勇(59分途中交代)=5.5点

この試合で平均以下の採点は気が引けるが、山中の先制点のアシスト以外は明らかに及第点以下の出来だった。また、決めるべきシュートを決められなかったのもFWとして減点対象。

【FW】大迫勇也(59分途中出場)=6.5点

ベネズエラ戦ではシュート0本に終わったが、この試合では1本のシュートで1ゴール。停滞しかけた試合を活性化させたという点も含め、プラス0.5ポイント。

【MF】堂安律(59分途中出場)=6.5点

73分の中島のゴールシーンでは、抜群の判断力とテクニックでお膳立て。非凡な才能を改めてアピールしたが、その一方で、はやる気持ちが空回りするシーンもあった。

【MF】柴崎岳(59分途中出場)=6.0点

無難にプレーしてクオリティの高さを見せたが、存在感を発揮するには至らなかった。所属クラブでの状況が変わらないようだと、アジアカップに向けて黄色信号が灯る。

【DF】吉田麻也(61分途中出場)=6.0点

負傷交代の槙野に代わって緊急出場。予定外の出場となったにもかかわらず、安定感のあるプレーを披露した。

【MF】中島翔哉(72分途中出場)=6.5点

出場直後に代表2ゴール目をマーク。森保体制下では初ゴールだった。スタメン出場のみならず、途中出場で流れを変えられる駒であることも改めて証明した。

【MF】南野拓実(72分途中出場)=6.0点

中島のゴールシーンでは、アシストした堂安にパスをつなげた。途中出場ながらハードワークも欠かさず、この試合でも貪欲なプレーでチャンスに絡んだ。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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