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再び3バックを封印した森保ジャパンは4バックのままアジアカップへ【パナマ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

自分の色を薄めて西野路線を踏襲する森保監督

 新潟で行われた森保ジャパンの2試合目となったパナマ戦は、9月のコスタリカ戦と同じく、3-0でホームの日本が勝利した。

 まず、原口、大迫、長友、吉田、酒井、柴崎ら、ロシアW杯出場選手が新たに加わった今回のチームで注目されたのは、このパナマ戦と16日のウルグアイ戦を迎えるにあたって、それぞれの試合で森保監督がどのようなメンバー編成をするかという点だった。

 これについては、試合後に「今回の10月の2試合で、できるだけ多くの選手にピッチに立ってプレーしてもらい、それぞれの力を見せてもらいたい」と森保監督自身がコメントしたように、GK1名を除く22名を2つに分け、それぞれの試合に臨む腹積もりと見ていいだろう。パナマ戦で4人しか交代枠を使わなかったことも、その背景として考えられる。

 たとえば2つのチームをAとBに分けると、格下のパナマ戦はチームBで臨み、強豪ウルグアイ戦をチームAで戦うということになる。

 すなわちパナマ戦でベンチスタートだったメンバーがウルグアイ戦のスタメンになる可能性が高く、その場合、GK東口、DFは酒井、三浦、吉田、長友、ボランチは柴崎、遠藤、右MFに堂安、左に中島、FWは川又と北川となる。ただ、おそらくFWについては2人が追加招集の選手であることを考えると、再び大迫と南野が前線でコンビを組む可能性が高い。

 比較的経験の浅い選手をパナマ戦で多く起用し、ある程度実力が分かっている選手をウルグアイ戦で起用する。その中で、Bチームで活躍した選手をAチームに加えていく。そして、最終的に11月の2試合で最終的なテストと絞り込みを行い、来年1月のアジアカップのメンバーを選考する。

 当面の目標とされるアジアカップに向けて、限られた試合数の中でチーム作りを行う指揮官としては、実にまっとうなやり方と言える。

 その一方で、もうひとつの注目点だった森保監督のトレードマークとも言える3-4-2-1は、まだ封印されたままとなっている。パナマ戦で3バックを試みるのではないかという見方もあったが、蓋を開けてみれば、森保監督はコスタリカ戦と同じ4-2-3-1的な4-4-2を採用した。

 これについては、森保監督が試合後の会見で「チームの融合と、全体的な戦術の浸透とレベルアップは、次につなげることができたと思う」とコメントしているので、おそらくアジアカップまでは現状の4バックを継続させていく可能性が高いと見ていいだろう。

 どうやら、これまで西野前監督の名前を頻繁に口にしている森保監督は“自分の色”であるはずの3バックを敢えて封印し、西野スタイルのチーム作りを踏襲することを決意したと思われる。また、もし森保監督が3バックをアジアカップでのオプションとして考えている場合、おそらく11月の格下キルギス戦でテストするのではないだろうか。

 いずれにしても、当面の森保ジャパンのチーム強化は、少なくともアジアカップまではスクラップ&ビルド的なチーム作りではなく、ロシアW杯からの最小限のリフォームに限られそうだ。日本サッカー協会からアジアカップでのノルマについて発信されていない現状を考えても、しばらくは評価の判断基準が曖昧なまま試合が続くことになる。

 一方、試合については、パナマのステンペル監督が「パナマが0-3で負けるほどのパフォーマンスではなかったと思う」と試合後に語ったように、両チームにスコアほどの差がなかった試合だった。

 勝敗を分けたのは、「バカげたかたちで3失点した」(ステンペル監督)という相手のミスを、日本が見逃さなかったことに尽きるだろう。また、コスタリカ戦同様、後半のパナマが「30時間を超える移動で疲労もあった」(ステンペル監督)ことも、最終的にスコアが開いた原因となった。

 そんな中で、出場した選手が「現時点でベストなことはやってくれた」(森保監督)ことは確かであり、同時に「攻撃も守備もまだまだ上げていかなければいけない」と森保監督が語ったように、両チームともに個人のミスが多く、プレースピードの遅い低調な試合になってしまったことは否めない。特に日本は、相手がフレッシュでコンパクトに戦っていた前半に課題を露呈した。

 結局、典型的な親善試合となってしまったパナマ戦は、それ以上でもそれ以下でもなかった。おそらくAチームで戦うであろう次のウルグアイ戦が、森保ジャパンの本当の意味での初陣となりそうだ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一(GK)=6.0点

クラブでの好調ぶりを代表でも証明。これと言ったピンチがなかった中でも、安定感のあるプレーを見せた。

【右SB】室屋成=5.5点

積極的な攻撃参加で右サイドを活性化させた。ただ、23分の場面は自らシュートを狙うべきだった。存在感はあったが、クロスの精度、守備対応など細かい部分の課題を残した。

【右CB】冨安健洋=6.0点

スタメンで代表デビュー戦を飾った。前線へのフィードを意識するプレーが目立っていた。ポジショニングや1対1の対応など、まだ粗削りな面は否めず、今後の成長に期待。

【左CB】槙野智章=6.0点

初めて富安とセンターバックコンビを組み、無難にプレー。ただ、相手のフィニッシュにつながるプレー精度の低さに救われた面もあり、太鼓判を押すには至らない。

【左SB】佐々木翔=5.0点

2試合連続のスタメン出場。クロスの精度、原口とのコンビネーションを含めて攻撃面で目立ったプレーはなかった。守備でも1対1の対応、ポジショニングに課題を残した。

【右ボランチ】青山敏弘(88分途中交代)=6.0点

プレッシャーが厳しかった前回のコスタリカ戦と異なり、相手が自由にさせてくれた分、先制点をアシストするなど得意のフィード力を発揮した。ただ、守備面の修正点は多い。

【左ボランチ】三竿健斗=6.0点

前半は存在感が薄く、後半に何度か“らしさ”を出した。攻守のバランスの良さを見せたが、レギュラー獲得には明確な武器を示す必要がある。当面のライバルは遠藤か。

【右MF】伊東純也(81分途中交代)=6.0点

前半はほとんど攻撃に絡めず、存在感がなかった。後半に入って少しずつ周囲とのコンビネーションが上がり、後半65分に2点目を決めた。得点を記録した分が0.5点。

【左MF】原口元気=5.0点

以前のようにサイドに開いてプレーするより、中央寄りにポジションをとってプレーする時間が長かった。左SB佐々木との連携も良くなく、後半は単独のプレーが増えた。

【FW】南野拓実(66分途中交代)=7.0点

試合開始からアグレッシブにプレー。時間が経過するに従ってプレーに正確性が出てきて、42分に相手のミスを突いて先制点をマーク。伊東の得点も、南野のシュートが生んだ。

【FW】大迫勇也(66分途中交代)=5.5点

移動の疲れもあってか、いつものようなプレーの正確性を欠く場面が目立っていた。とはいえ、他の選手と比べて別格の雰囲気を醸し、要所で“らしい”プレーを見せた。

【FW】北川航也(66分途中出場)=5.5点

おそらく緊張感に加えて周囲とコンビネーションの影響もあったため、印象的なプレーはできずに終わったが、彼にとっては大きな意味を持つ代表デビュー戦となった。

【FW】川又堅碁(66分途中出場)=5.5点

南野に代わって途中出場し、前線で積極的にプレー。やや空回りしている嫌いもあったが、エネルギッシュな動きを見せて3点目のオウンゴールを誘発した。

【MF】堂安律(81分途中出場)=採点なし

負傷した伊東に代わって緊急出場。そのまま右ウイングに入ってプレーした。プレー時間が短く採点不能。

【MF】柴崎岳(88分途中出場)=採点なし

青山に代わって途中出場。そのままボランチでプレーした。プレー時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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