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【板倉滉】 フローニンゲンでの2年半で積み上げてきた信頼は、たった一度のミスで崩れない

中田徹サッカーライター
後半、主将を務めた板倉は、チームを代表してテレビインタビューに応えた 【中田徹】

■失点に絡んだ板倉に後半、キャプテンマークが渡った

 板倉滉の所属するフローニンゲンは3月20日、RKCに1対3で敗れた。立ち上がり5分、板倉のパスミスから許してしまった失点が痛かった。

 最終ラインで板倉がボールを保持したとき、RKCのMFタヒリがプレスをかけに来ていた。それでも、板倉には味方へのパスコースが見えていた。しかし、結果的には、目の前の敵にボールを渡すことになり、FWオースティンに先制弾を許してしまった。

「開始5分で、こんなミスをするなんて初めてのことだから……。そこからは、あんまり崩れずにできたと思います」

 試合後、そう言った板倉だったが、私の目には30分ぐらいまで動揺が残っているように感じられた。

「そうですね。嫌でも(ミスしたことを)考えちゃうから。その中でも自分のやるべきことを整理していた」

 フローニンゲンは14分にも、DFファン・ヒンティムの板倉への横パスをRKCに狙われて、オースティンに2点目のゴールを献上してしまった。前半は1対2で終わった。

 主将のファン・ヒンティムは前半いっぱいでベンチに下げられた。後半のキャプテンマークは板倉が付けた。

 副将の順番が決まっていたわけではない。それでも、フローニンゲンのコーチングスタッフは、失点に直接絡んだセンターバックに後半の腕章を託したのだった。それは、昨季から積み重ねてきた信頼は、たった一度のミスで崩れないことを意味した。

「キャプテンマークというのは軽いものではないから、『自分がブレてはダメだ』と改めて思ったし、チームを勝たせることだけにフォーカスして臨んだ後半でした」

■バイス監督「選手はロボットではない。板倉は素晴らしいシーズンを過ごしている」

 後半の板倉は、普段どおりのプレーをした。その姿は、2019年のコパ・アメリカ、対ウルグアイ戦(2対2)で試合途中から立ち直った時のようだった。

「こうやって負けてしまったのは悔しいけれど、もう一回盛り返して自分のプレーをしっかりできていたというところは、こっちに来て成長できた部分であると思います。もし、日本で(=若い時に)同じことをやっていたらメンタル的に『ヤバいな』となっていたと思います。今日はミスをしたけれど切り替えることができた。起こったことはしょうがない。しかも、それが開始5分だった。残り85分間というのは長いけれど、そこで引きずっていたらしょうがない。ともかくチームのためにやるしかないという思いでした」

 フローニンゲンの番記者も「板倉のこんなミスは初めて見た」と驚いていた。しかし、バイス監督は穏やかに「選手はロボットじゃありません。人間なんです。こういうミスだってあるでしょう。板倉が今シーズン、素晴らしいパフォーマンスをし続けていることは間違いありません」と語っていた。

 U24日本代表は3月26日と29日にU24アルゼンチン代表と試合する。

「今回の遠征は短い期間だけれど、せっかくこうやって集まれるので、みんなでキュッとね、(引き締まった)いい合宿にして、オリンピックに向けてチームが成長できるようにやっていきたいです」

 そう言って板倉がチームバスに向かうと、失点直後に板倉を励ましていたGKパットが乗車口で待っていて、そこでもなにか言葉をかけていた。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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