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【菅原由勢】AZで知った『世界基準』

中田徹サッカーライター
AZ対ヘーレンフェーン。引退するフラールに、ささやかながら感謝の横断幕【中田徹】

 今季のオランダリーグは首位アヤックスが独走態勢に入ろうとしている。開幕スタートに失敗したAZが優勝するのは難しいだろう。しかし、まだ2位(=チャンピオンズリーグ予備戦出場権獲得)の可能性は残されている。長らく中位をさまよっていたAZは少しずつ順位を上げていき、今は暫定ながら3位。2位PSVの背中が視界に見えてきた。

■ 菅原のゴールが必然だった理由

 ここ7試合のAZは、まったく変わらぬメンバーがスタメンに名を連ねている。彼らは3連勝の後、2連敗を喫してしまったが、この『選ばれし11人』に対するヤンセン監督の信頼は揺るがずスタメンは固定されたまま。AZは直近のエメン戦(1対0)、ヘーレンフェーン戦(3対1)に続けて勝ち、ウイニングムードが再び戻ってきた。

 菅原由勢は12月に入ってから先発として13試合連続で試合に出ているので、当然、この固定されたメンバーに入っている。

「チームとしては(メンバー固定の)良し悪しがあります。サブの選手たちがそれをどう捉えるのか大事ですし、僕自身も、間もなくヨナス(スベンソン)選手【※1】が戻ってくるので、まだまだアピールしないといけません。こんなところで満足していてもダメです。今はすごく充実してます。もっと中身(=プレーのディテール)を見て、いろいろ改善していきます」(ヘーレンフェーン戦後の菅原)

 メンバー固定後のAZを菅原が救った一戦があった。2月6日のエメン戦がそれだ。

AZは格下相手に攻めあぐみ0対0のまま前半を終えてしまった。ロッカールームに引き上げるFW&MFグドムンドソンは、チームメートに怒りを思いっきりぶつけていた。チームの雰囲気が決して良くない中、71分に菅原が右45度の位置から右足を振り抜いて、AZに1対0の勝利をもたらした。

 一週間前のゴールを「あれはたまたまです」と菅原は振り返る。しかし、菅原は得点シーン以外にも、強烈なシュートでエメンゴールを脅かしていた。“たまたま”であるはずがない。

「チームを救うことが何よりでした。俺自身が勝ちたかった。あそこ(ペナルティーエリア内右45度辺り)が空くのはわかっていたので狙ってました。そこにボールが来たので、あとは振り抜くだけでした。ラッキーというのもありましたけれど、あそこにいたことに意味があります」

 AZの攻撃陣が湿っているとき、総じてペナルティーエリアの中に入っていく積極的な姿勢が足らず、菅原がクロスを上げようとしても受け手の人数が足りないことがあった。こういうときに菅原は自らハーフスペースに飛び出して行って、ゴールを奪いに行く気持ちをプレーで示し続けていた。この繰り返しが、エメン戦の決勝ゴールにつながった。

※ヘーレンフェーン戦のスタメンを告げるAZの公式ツイッター。7試合連続不動のメンバーだ

■ 「フラールと一緒にプレーしたことは、僕の財産」

 2ヶ月半に渡ってレギュラーの座を保っている菅原は、「チームに影響を与えることのできる選手」への脱皮を図っているのではないだろうか。

 7試合連続固定スタメンの一人、ボアドゥ(20歳)は「オランダ1部リーグ10代選手、最多ゴール歴代3位【※2】」という期待のストライカーで、今季も6ゴールを記録しているものの、今はフォームを取り戻すのに苦しんでいる最中だ。同年代の菅原も、「彼の力はこんなものじゃない」と感じている。

「彼にはちょっと自信をつけさせてあげる必要があるから、サイドバックの自分がシュートを打てたとしても彼にパスを出してあげたりとか、僕自身もすごく考えてます。彼が去年、どれだけチームに貢献してきたかわかってますし、クラブにとっても大事な選手というのもわかってます。(ボアドゥの不調は)個人だけの問題ではないと僕は思ってます」

 2月10日、元オランダ代表のフラール(35歳)が現役引退を発表した。一緒にプレーしていた菅原は、フラールのことを「一緒にプレーして安心感が半端なかった。『ヤバいな。これが世界基準のディフェンダーなんだな』と感じました」と言う。

「ビルドアップもできる最先端の選手というか。堅いし、ゴツイし、うまいし、賢いし、対応力もある。ワールド・カップで3位になり、(アストン・ビラの一員として)プレミアリーグでもプレーした。『それでも世界チャンピオンにはなれないし、チャンピオンズリーグでプレーできないんだ』と(世界のレベルの高さを)感じました」

 練習でのストイックなフラールの姿勢、日々ジムで体を鍛える努力。こういったことも踏まえて、「彼と一緒にプレーできたのは、僕にとって財産です」と菅原は言った。

「チームにとってプラスになる存在感は勉強になりました。僕も外国籍の選手として、そういう選手になりたいです。自分も毎日ハードワークして、ひたむきにやり続ける。そのことが、チームにとっていい影響を与えることにつながれば、いいなと思います」

【※1】スベンソン:ノルウェー代表の右サイドバック。シーズン開幕からAZのレギュラーだったが負傷離脱した。間もなくチーム全体練習に復帰との報道

【※2】オランダ1部リーグ10代選手、歴代最多ゴール記録3傑:

1位 ファン・デル・ファールト 28ゴール

2位 ロベン 24ゴール

3位 ボアドゥ 21ゴール

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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