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【菅原由勢】 オーストリアで誓った20歳の決意 「俺はもっと強くならないといけない」 

中田徹サッカーライター
11月の日本代表オーストリア遠征に参加した菅原由勢 (C)JFA

■ 「練習の雰囲気はいい。AZの調子はこれから上がっていく」

 この2年間でAZの選手が次から次へと各国のA代表にデビューしている。GKビゾットが11月11日のスペイン戦でオランダ代表デビューを果たしたことにより、AZのレギュラー級選手はMFデ・ウィット(U21オランダ代表)、ウインガーのカールソン(U21スウェーデン代表)を除く全員がA代表の経験者となった。

 選手個々の評価が上がっている割に、今季のAZはチームの調子が今ひとつ。フォルトゥナ戦の3対1、スパルタ戦の4対0、VVV戦の2対0のリードを守りきれず引き分けて、ADOデンハーグ戦では87分に追いつかれ2対2のドローに終わった。22日にエメンを1対0で下し、AZは順位を一つ上げて7位になったが、アヤックスと激しく優勝を争った昨季と比べると物足りなさを感じる。

 エメン戦のAZは後半に入ってから劣勢になり、相手に退場者が出ても危うく同点にされそうなシーンを作られながら、運を味方に付けて1対0でなんとか逃げ切った。

 この試合で菅原由勢の出場機会はなかった。試合後、私が「今日の試合はAZらしくなかったですね」と尋ねても「今日の試合に関しては、僕が話すことはなにもないです。外から見ていて思うこともいろいろありますが、試合に出てなんぼですから」と短く答えたのも、彼の悔しさをおもんばかると当然のことだった。

 11月に入ってから菅原の出場機会は14分間しかない。本職の右サイドバックではノルウェー代表のスベンソンの壁が高く、昨季のPSV戦、フェイエノールト戦、今年10月のナポリ戦のようなビッグゲームで勝利を呼び込んだ『戦術的ウインガー』としての抜擢も最近はない。

 それでも、「チームに“代表疲れ”があったんでしょうか?」という他愛のない質問をきっかけに、菅原はチームの現状を分析し始めてくれた。

「疲れではなく、選手個人個人がいいプレーをしようとしすぎたのかもしれません。選手たちがA代表を経験して自信を付けて、一人ひとりが『やれる』と思っていることが、うまくいかなかった可能性もあります。でも、練習は非常に良い雰囲気でやれてますから、ここからです。エメン戦の前は2日間しか練習が出来なかったということもありますし」

■ ヨーロッパリーグの経験が意味するところ

 菅原自身も10月、11月と日本のA代表に参加した。そこで「11月の日本代表に参加した菅原選手が、ここに持ち帰ったものはなんですか?」と訊いてみた。彼は「練習もそうでしたが」と言ってから続けた。

「吉田麻也さん(サンプドリア)のメキシコ戦後のインタビューなど、経験を積んできた選手たちが『もっともっと個人が強くなってレベルアップする必要がある』『同じベスト16でもメキシコとはあれだけ差があった』と言ってました。それは自分にも置き換えられるし、通ずるところがある。あの人たちが『強くならないといけない』と言っているということは、『俺はあの人たち以上にもっと強くならないといけない』という強いモチベーションになりました。もっと僕はチームでやらないといけないし、やらないといけないことが多すぎると思いました。そこは一つ得られたものだと思います」

――森保一監督は合宿中、ひんぱんにベルギー戦のことを言ってたらしいですね

「世界との真剣勝負で2対0で勝ってるシチュエーションをもっと増やしていけば、きっと(リードした状況下での戦い方を)モノにできると思います。所属チームでもそれはできます。AZはヨーロッパリーグでナポリ相手に1対0のリードを逃げ切って勝ちました。こうした所属チームでの経験を代表でも活かしたい。それがメキシコ戦後、選手たちが『個々がレベルアップする』と言ってたところにもつながってくると思います」

――川島永嗣(ストラスブール)さんが今日試合に出ました

「代表期間中、永嗣さんは僕と同じく試合に出ませんでしたが、毎日練習後、追加でトレーニングしてましたし、常に這い上がる気持ちと向上心を持ってやってます。そこはみならわないといけないですね」

 引き上げる菅原に「次はヨーロッパリーグのレアル・ソシエダ戦ですね」と声をかけると「ホームなんで、しっかり叩きますわ!」と威勢のいい言葉が返ってきた。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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