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鬼滅の刃「炎」100円ショップで子供の合唱起きた…社会現象を研究する

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
コロナ禍の映画館に活気をもたらした(写真:つのだよしお/アフロ)

アニメ続編の放映が発表され、ファンの期待が高まる「鬼滅の刃」。昨年のコミック市場は6千億円を超えた。コロナ禍によるステイホームも後押ししたが、鬼滅の刃の大ヒットが影響しているという。映画の興行収入は2000年以降で最低だったが、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は365億5千万円となり、全体の2割強を占めた。

昨秋、娘のリクエストで無限列車編を見に行った筆者は、物語をよく知らなかったので圧倒されてしまい、消化できなかった。それから、小学生や保護者・知人に感想を聞き、コミックとアニメを少しずつ見て、社会現象の理由を探っている。

●「炎」の合唱が起こる

 先日、100円ショップに行くと、Jポップのヒット曲が流れていた。店内は、新学期の準備もあってか、家族連れも多かった。何曲目かに、無限列車編の主題歌でもある「炎」が流れると、一斉に子供たちが歌い始め、合唱に。私も歌いたかったけれど、大人だから心の中で…。サビ以外はよくわからないのだろうけれど「好き、知っている!」という勢いの男子がほほえましかった。

 筆者が鬼滅を知ったのは、昨春の休校中だ。きっかけは、娘のダンスのオンラインレッスン。先生が「鬼滅って、子供たちに教えてもらって好きになったの」と言って、放映されていたアニメの主題歌「紅蓮華」を使い、エクササイズをしていた。

 当時は「きめつ?流行っている、アニメだよね。いい曲だなあ」ぐらいの認識だった。次第に、娘が預かりの工作で描く絵や、もらう塗り絵に鬼滅のキャラクターが増えて行った。娘は児童館においてあるコミックを少しずつ読み、周りの人気もあって、秋の無限列車編を見たがった。

●PGは気にならないが消化不良に

 そして、映画館で娘と無限列車編を見た。事前に言われていたのは、「PG12」指定で、保護者のガイドがいるということ。「子供たちが見たいっていうけど、どうかしら」と戸惑うママもいた。娘は、コミックを読んで物語を知っているので、「大丈夫」という。血がどばーっとか、鬼の首が飛ぶ場面では、声をかけたが、むしろアラフィフの筆者のほうが怖かった。

 後で知ったが、無限列車編は、物語の途中だ。炭治郎たちがなぜこうなったのか、振り返る形で描かれていて、物語を追うのに必死。そしてアニメーションがきれいで、音楽も音響もいい。だから、ものすごい勢いで目に、耳に刺激が飛び込んでくる。年齢というよりは、敏感なタイプの人には、どーんとくる映画だと思った。

●キャラクターが好き・怖くはない

 筆者と同様、予備知識なしに、無限列車編を見た保護者に聞くと、「感動した」「号泣した」という。「兄弟愛や、悪者の鬼にもいろいろな事情があるんだというところが、小学生高学年には刺さる」との声も。昨年末、8歳の娘に、身の回りで起きている鬼滅ブームと、好きなポイントについてヒアリングした。

 ①クラスに鬼滅ファンの子がいて、ランチョンマットや塗り絵を持っていた。

 ②秋ごろ?児童館にコミックがあり、22巻まで読んだ。キャラクターが好きになった。炭治郎は、石頭でマジメ。禰豆子は鬼だけど優しくて、兄を助ける。人を食べない。

 善逸は、眠ると力を発揮する。臆病でかわいい。伊之助は、関節がやわらかくて強い。自分がいつも主人公で自己中。

 しのぶは、優しいけど怒るとこわい。姉と同じ鬼に殺される。自分の毒で鬼を殺す。蜜璃は、男にも女にもきゅんとする…。

 全員が好き。物語っていうより、それぞれのキャラが印象的。ところどころ、ギャグやおもしろい場面がある。無限列車で煉獄さんがお弁当を食べて「うまい!うまい!」というところとか。

 気持ち悪いシーンはあるけれど、怖いとは思わない。悪い鬼を退治する話だから。映画のほうが迫力はある。

 闘いのシーンがかっこいい。「●●の呼吸」と型がいい。何もない闘いだったらつまらない。小さい子はごっこ遊びするだろうけど、小学生はしていない。

 ③映画を見た子は、クラスの3分の2ぐらい?折り紙、塗り絵、キーホルダー、鉛筆などグッズを持っている子がいる。男子も絵を描いてどっちが上手?と聞いたりしている。自分も絵を描くし、預かりの先生に鬼滅の絵を描いてと頼む子が多い。

●アニメとコミックを見始めたら…

 この話を聞いた当時は、「小学生ながらに、キャラクターをとらえて、好きになっているんだな」と感心したけれど、まだぴんとこなかった。

 小学生の子たちに聞くと、それぞれ「推し」のキャラクターがいるようだった。推しが身に付けている衣装柄のマスクや、キャラグッズを持って楽しんでいる。キャラの顔がプリントされたお土産品のクッキーを配った子もいて、大人気だった。

 冬休みのあたりから、娘と児童館に行った際に少しずつ鬼滅のコミックを読み、Amazonプライムの無料アニメを見た。そうしているうちに、48歳の筆者も、すっかりハマってしまった。

(つづく) 

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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