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三浦春馬さん最後の主演作「天外者」応援するファンの心に寄り添う言葉

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
2019年、韓国での三浦春馬さん(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

三浦春馬さん最後の主演映画「天外者」(てんがらもん)が12月に公開され、劇場に何度も足を運ぶファンも多い。上映にメイキング映像が追加になり、ある女性は「春馬さんの素顔を見て、涙ぐんだ」という。春馬さんを前向きに応援する一方で、傷ついた心を抱えるファンもいる。このたび、天外者の応援を通して起きたファンのムーブメントと、心のサポートについて取材した(広がるグリーフワークの輪 、Forbes JAPAN)。記事はYahoo!ニュースに転載され、およそ300件のコメントをいただいた。その中から、心に寄り添うことができればという趣旨で、読者の言葉をシェアする。

〇共有できる「優しさにあふれた場」

 「天外者」の上映をめぐり、春馬さんへのメッセージが東京新聞の広告を埋め尽くしたり、SNSで応援が広がったり…。記事では、こうしたファンの行動と、喪失体験の対応など情報として心の専門家の言葉を紹介した。寄せられた声の中で目立つのは、「悲しみを共有することにより、救われている」というものだ。

「確かにSNS上で悲しみを共有できるのは、かなりの救いになってると感じます。彼の作品からも、大切な力強いメッセージを受け取ってます。彼が生きれなかった今日を、生きている自分達は無駄に過ごさないよう、生きがいを全身で感じ感謝して豊かに1日1日を過ごしたいと心底おもいます。でもやっぱり春馬くんのいない今日が味気なく、たまらなく寂しいです」

「身内を亡くした時は、心の準備ができているかどうかにかかわらず、悲しくて寂しくて辛い想いをするものです。お通夜の席や、区切りの法要の度に涙を流して、時には笑い話もでたりしつつ、思い出話を語り合う中で気持ちに折合いをつけていくものかと思ってます。会って辛い胸の内を聞いてもらいたい、しかしこのご時世、人が集まり語り合う事が難しくなってしまいました。

そんな中、手元にあるこの小さなスマホの向こう側には、同じ様な心境の方が各々に気持ちを吐露し、またそれを読み共感し、知らず知らずに励まされたという方は少なくないかと…。悲しみは消える事は決してないけど、優しさに溢れた場所ならばどんな形であれ、集う事で悲しみは和らぐ様な気がします

〇自分だけじゃないと思う心強さ

 時には誹謗中傷など、難しさもあるSNSの世界。リアルな世界で本音を言いにくい場合、閲覧して共感したり、匿名で支え合ったりというポジティブな方向に利用されているようだ。

「あまりにも素敵な人柄に魅了され、亡くなってからどんどん好きになる。こういった場所にコメントするようにもなり、同じ思いの人のツイートを読み漁る。自分だけが、辛いんじゃないんだ…と確信しながら、あの日から毎日を過ごす。

周りに、春馬君の事を話せる人がいない私。いつまでも引きずっておかしいと思われるような気さえして、何気ない顔して過ごしてる。本当は常に春馬君の事で頭が一杯。でも、自分だけじゃないと思えるのって心強い」

「三浦春馬さんが10代の頃からドラマや映画楽しみに拝見していました。会ったことなんてないけれど、テレビで見れるだけでいつも元気をもらっていました。秋からドラマがスタートすると聞き、また楽しみができた!と喜んでいた矢先の悲報でした。亡くなってからずっと気持ちが沈み、でもこの気持ちを話せる人も理解してくれる人も周りにはいません。

今までSNSでコメントしたことなんてないけど、余りにも辛く、同じような方と話すようになり、すごく救われました。春馬さんのような人がいなくならなければならない世界は辛いです。けれど、大切に大切に自分の時間を生きた春馬さんを見習って、残りの自分の人生を悔いのないよう生きようと思う

「SNSでファンの誰かと共有などはしなかったけど、同じ気持ちでいる方のコメントを読みながらザワザワした気持ちを落ち着かせたり、涙を流したり、春馬くんエピソードを読んでホッコリしたり…助けられました」

誹謗中傷で命を落としてしまうこともある、SNSの世界ですが、利用の仕方により、こんなに素敵はネットワークが出来るものかとびっくりしています。私は春馬君のこと以来、テレビは一切観ず、毎日SNSで情報共有しています。これも春馬君が残していった同じ目的を持つ人と人をつなげ、少しでも良い未来へという遺言のようですね」

〇初めてSNSに「癒される」

 また、「初めてSNSにつながった」という体験談も多い。

「グリーフワークなんて言葉があるのですね。コロナ禍の殺伐とした中、7月からいろんなことを考えました。ヤフコメなんてしたことなかったのに、春馬ファンと繋がることで、春馬さんの死を乗り越えて来れました。清くて、真っ直ぐで、美しく、日本人らしい心を持った、美しい俳優がいたことを忘れず、私もそれに習いたいと思います。

また5回目の天外者観に行きます。それぞれの胸の中の春馬さんは、生きてます。素晴らしい仕事を遺してくれて拍手です。私は、最後のシーンでは手を合わせ、供養としました。春馬さんの分も生きて行きましょう。いや、生きて行かねば、です」

「初めは話もできないくらいショックだった。春馬くんのことを調べて行くうちにツイッターに辿り着いて、ビクビクしながら呟いたのを覚えています。操作も呟き方も上手くいかず、初めは孤独でした。でもいつの間にか居場所になっていました。同じ想いの仲間がいて、支え合って自然と笑えるようになったし、少しずつ前を向けるようになりました。あたたかい場所です」

「この記事、今まで触れた中で一番、腑に落ちました。春馬くんへの気持ちを、まわりの人に話したりする事ができない変な感覚がある。それはコロナ禍で、最後が謎に包まれていて、私達も現実を受け止められないから。

私も春馬くんの親世代ですが、SNSの世界に勇気を出して飛び込みました。繋がってくれる方々に本当に癒されます。頭の中では、芸能人だよ、会ったこともない人だよと理解しているのに、溢れる気持ちが抑えられなくなってました。皆さんも声に出して悲しみを分け合いましょう。春馬くんはこれからも心の中で生き続けるのだから」

〇否定せず、大事に聴くこと

 様々な人たちの看取りに向き合ってきたベテラン看護師は「春馬さんの映画を見て、泣いていい。声を上げていい」という。同じ気持ちの人同士で共有することの大切さを語っている。

 コロナ禍、離別や仕事・生活の変化などで、誰もが何らかの「喪失」を体験している。いつまでも引きずっている自分はおかしいのではないか。話したいけれど、話せない…。喪失体験をした時、自分を責め、大事にしている対象への繊細な思いが周囲に伝わらなくて苦しむ場合もある。身近な人にできるのは、否定せず、失った人への思慕を尊重することだと思う。

「春馬君のことを想わない日はないけれど、こんなにも悲しい事を、周りの人にはなかなか口にすることはできなかった。みんな感じ方は違うのだし、けれど自分自身では春馬君の事は大事にしたい事だった。一人で抱えている時はとても苦しくて、どう偲ぶ思いを持ってよいのか、この消えない気持ちは何かいけない事なのかなと恥じる思いもあった…

ある時、ある方に私が思いを少し吐露した時に、否定もせずに無下にもされずに聴いてくださった事にはとても救われました。画面の向こう側に居る方であったとしても、身近に居る方と同じように共感し、その彼の存在に励まされていた事、例えば偉人の方の本を読んで感銘を受け、それが自分の礎になって行く事もある。だから、その思いを大事にしてよいと思います…と。そんな風に言ってくださって、悲しい気持ちは決して消えなくとも、彼を尊敬し感謝し愛おしく想う気持ちを大切にしたいと思えました。

参加はしなかったのですが、東京新聞をネット購入させて頂きました。皆さんのたくさんの思いが載っていて泣けました。東京新聞に掛け合って下さった方、そして東京新聞の方に感謝します」

(いただいたコメントは、苦しい思いを抱える人たちの心のサポートになればという趣旨で、抜粋して紹介させていただきました。ありがとうございます)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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