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「休校1か月」学習・習い事・ごはん・学童保育・子供の健康…現状は

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出の自粛が続く(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、突然の休校になって1か月。加えてイベント中止・外出の自粛、衛生面でピリピリ…と、これまでに体験したことがない生活が続いている。誰もが感染の可能性がないとは言えず、志村けんさんという世代を問わず親しまれていたスターが急逝したことで、衝撃を受けた人も多い。子どもをめぐる現状は?

学校

2月28日、突然の休校が決まり、現場は大混乱した。子どもたちは、転校する友達とお別れし、荷物を抱えて下校。親は「卒業式は?子どもの居場所は?」と焦った。先生たちも戸惑いを隠せず、自治体や学校によって対応はまちまち。東京都港区のように、居場所のない子どものために、全公立小で預かりをするところもあった。

学習に関しても、宿題を渡され、休み中に先生とコミュニケーションの機会がとれる学校もあれば、何も指示されない学校も。様々な企業で、オンラインの教材提供が始まった。娘の通う小学校では、休みに入ってから「この部分を復習しましょう」というお便りが学校ウェブサイトに掲載された。それに気づいた保護者に聞いて、知った。

3月半ば、健康観察のため学年を分けて登校する日があり、そういった学習のお知らせを渡された。その後、一斉メールにてオンラインの教材が利用できると案内があった。卒業式は歌なし・在校生なしで開催。修了式は体育館には集まらず、校長先生の話をクラスごとに放送で聞いたそうだ。通知表を受け取って終わりだったが、先生や友達と会って区切りをつけられたのは、子どもたちにとってもよかった。

〇新学期にもフォローが必要

3月下旬になると、娘は「学校に行って、6時間授業を受けたい」と言い出した。「初めは休みで嬉しかったけど…。学校に行けば友達や先生に会える」と言う。勉強のほか体育・音楽・英語といった刺激もあり、バランスのいい給食が食べられる。学校が好きな子にとっては、決まった時間に登校する生活のほうが、留守番や密集した学童保育より、心身にいいのではないかと思った。

すでに東京都立学校の休校延長が報道され、新学期を心待ちにしている小学生も、4月に登校できるかはわからない。再開する際、特に新1年生や、クラス替えのある場合は、新しい環境に慣れるのに加えて、換気やマスクの着用・接触を避けるなど、気をつけなければいけないことが多い。現場に丸投げではなく、先生や児童へのフォローがあればと思う。

オリンピック・パラリンピックのため、前倒しの予定だった夏休みも、どうなるのだろうか。

学童保育

公立の学童保育は、朝から子どもたちが密集してしまい、様々な対策をしているそうだ。在宅できる保護者に「利用の自粛」を呼びかけたり、昼食を食べる際は、間隔をあけて座ったりしている。4月1日から利用予定だった新1年生の保護者には、連絡があり、自粛の説明を受けたという。

民間の企業が運営する学童保育は、ニーズにこたえて運営を続けるところも少なくない。ある民間学童保育は、休校になって朝から利用する家庭が多いため、急きょスタッフを集めた。当初はお弁当の持参を呼びかけたが、要望が多く、注文弁当を用意した。

○民間学童が居場所、温かい昼食も

さらにスタッフを増やして通常の長期休みのように、温かい食事を出すようにした。マスクの着用や、海外に渡航後の利用自粛を呼びかけ、感染者が出れば一定期間の閉鎖といった対応を随時、保護者に知らせている。

リスクはあるものの、慣れた場で昼食・おやつが確保され、外遊びもできて、子どもたちは楽しく過ごしているという。公立学童は満員で入れず、留守番が不安な家庭にとって、民間学童保育は大事な居場所の一つだ。

子どもが在宅している家庭の保護者からは、「YouTubeばかりで」「退屈だよね…毎日、何している?」と本音を聞いた。

習い事

習い事は、子ども向け・大人向けにかかわらず、対応が分かれた。ある音楽教室のスタッフは「グループレッスンを1か月、休んでいる。数百人の月謝がなくなり、どうしたらいいか…。休業補償も、小学低学年の子がいる家庭だけですし」と話していた。

ある塾は休校後、2週間ほど休みになったという。オンライン授業で対応したが、「指定された時間に見られなかった」「大量のプリントがよくわからない」と混乱したようだ。その後は、春季講習が開かれている。

〇屋外で・振替…継続にジレンマ

ほぼふだん通りに開講していた習い事も、意外に多い。休講にしてしまうと、運営側の収入が途絶える。居場所としての役割も大きく、学童保育がわりに子どもを預かり、レッスンは半数ほど続けるダンススタジオもあった。

休止しなくても、スケジュール表を何度も書き換え、先々に振替えざるを得ない。休講したのち再開したものの、公的な施設が借りられなくなり、屋外での開催を検討中の指導者もいる。

特に運動系のレッスンでは、子どもたち自身、ストレス発散とスキルの維持をしたいし、保護者や指導者も機会を作りたい。でも安全が第一、というジレンマがある。

子どもの健康

もちろん、「学校は休校すべき」「習い事なんて」という意見もある。ただ、休校が続くとして、子どもの心身の健康は見過ごせない。仲間や先生と会って体を動かすことで、元気になれる子もいる。3月中だけならガマンしよう、と思って頑張ってきた子も指導者も、長期化するなら別の方法を…と思い始めている。

ツールの発達で、オンラインのレッスンや動画もたくさんあり、有り難い。いくつかトライしたところ、子ども向けの短いエクササイズなら小学生にもやりやすかった。大人向けのものだと、小さな画面を通して説明が伝わらず、子どもに長い時間は難しい。「リード役がいて、体を動かすと気持ちが前向きになる」ということは実感した。

〇ドラマ・動画も助けになる

休校後、無料のドラマ配信にも助けられた。娘と、あるシリーズに決めて、パソコンで1日1話ずつ楽しみに見た。家庭によっては、時間割を作って毎日、勉強や料理をしているという話も聞く。そこまできっちりできなくても、「勉強」「お手伝い」「ドラマ」「なわとび」などと少しずつテーマがあれば、変化がつく。

在宅の子どもに向け、様々なメッセージを出す著名人も多い。ジャニーズのタレントが「手洗いダンス」や、ファンを元気づけるライブを無料で見せてくれる動画があり、ニュースで知ってアクセスしてみた。動画も、見過ぎはよくないけれど、こういう趣旨なら社会勉強になる。

ごはん問題

給食がないと、子どもの食事をどうするかは大きな問題だ。各地の「子ども食堂」は多くが中止になり、その代わりにお弁当・食材の配布活動が始まった。孤立しがちな子どもが顔を合わせて、地域でのつながりを保つ目的が大きい。感染拡大を受けて、配布会をやめ、配達に切り替える地域も出てきた。飲食店のテイクアウト割引サービスも一気に増え、4月以降に継続のものもある。

確かに、食費はかかる。3月は、スーパーやドラッグストアでの買い物が増えた。以前なら、余分な食材は買わないようにしていたのに…。休校になった時と、東京都の小池百合子知事が3月25日に外出自粛の要請をした後、買い占めが起きた。ある母親は、26日の朝にスーパーに行って1時間並んだという。別のスーパーに行った母親からは、入場制限が起きていると連絡があった。

〇買い占めに冷静でいたいけれど

筆者も26日夕方、出先でスーパーに行くと、日持ちする玉ねぎや卵、パン、牛乳が売り切れていた。物流は問題ないとわかっていても、店内の緊張した空気に圧倒された。近所の親どうし、「中立の心でいたいけれど、子どもに食べさせるものがなくなったら困るから、自分も買わざるを得ない」と話した。

自宅では給食ほどのバランスがとれないので、栄養の偏りも気になる。

いまできること

大人のピリピリした空気を、子どもも敏感に感じている。小学生だって、トイレットペーパーの棚がカラなのは知っているし、小池都知事の会見を見て「お出かけしちゃダメなんでしょ?」と理解はできたけれど、消化しきれない部分もあるようだ。

志村けんさんは、テレビの「園長」や「バカ殿」で子どもたちにもおなじみのスター。その志村さんが亡くなったというニュースを見て、不安になっていたところに寂しさを感じ、落ち込むのは、大人も子どもも同じだろう。

筆者も、手洗い・消毒・マスクをしているかどうか、口うるさく言ってしまう。小学生は、なぜそれらが必要なのかわかる年齢だが、子どもなので注意が及ばないときもある。不安やストレスが増しているのか、甘えたり、反抗したりの子どもと小競り合いも起きる。

「子どもの不安を、親が受け止めて」というアドバイスもあるけれど、ある程度は「ママもこうなんだよ」と伝え、子どもなりにわかっていくこともあると思う。

〇大変な状況にあると自覚する

いまできるのは、「みんな、経験したことのない状況にある」「大人も子どもも、ストレスを感じて当たり前」と、現状を客観的に見てみることだろうか…。それができたら、少しだけ違うかもしれない。

筆者は20代のころ、ホスピスケアや周産期医療の現場を取材し、「いまを生きる大切さ」を発信していた。自分が親になり、このような状況になると、きれいな言葉では表せない、緊張感でいっぱいの毎日だ。状況が刻々と変わっていくし、仕事や自分たちの健康を考えると、心配がふくらむときもある。それでも、一日一日を有難く思って、生活することを目標にしたい。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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