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台風19号・子どもの体と心を守る方法・休校や自宅浸水にストレスも

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
台風19号、東日本各地に被害 長野県(写真:ロイター/アフロ)

台風19号の被害は、子どもたちにも大きな影響を与えている。17日午前5時までの文部科学省のまとめによると、少なくとも10都県の小中高校など145校が休校。住宅への浸水被害は、17都県で計4万棟近くにのぼることが、朝日新聞の集計でわかった。住む場や学用品をなくしたり、生活が変わったり、ストレスを受けている子どもも少なくない。子どもの体と心を守るには?

関連記事→災害時、子どもを守るには・気をつけたいストレスのサイン

〇居場所作り・学用品集めも

今回の台風で、河川の氾濫や堤防の決壊により自宅が浸水し、制服やランドセル・学用品・洋服がなくなった子どももいるという。保育園や学校・児童館など慣れ親しんだ場が被災して、休校・休館の地域もある。

そうした地域で、住民たち独自の支援も広がっている。福島県で子どもにかかわる活動をしている団体は、カフェを親子に開放し、被災の体験を分かち合った。断水している家庭のために、ベビーバスを用意する試みも。文房具や、不要な制服を集める呼びかけも始まった。学童保育の臨時受け入れをしているところもある。

日常生活が送れないと、子どものストレスもたまりがちだ。「いわきFCパーク」は、臨時に18日まで、フィールドを開放している。断水で休校になっている地域の子どもたちが、体を動かせるようにとの配慮だ。

〇思い切り遊べるスペースを

このように、子どもの居場所や活動は、かかせない。世界70カ国以上で活動する国際NGO「プラン・インターナショナル・ジャパン」は、世界各地で物資の支給だけでなく、子どもの心のケアの活動をしてきた。そのノウハウを生かし、2011年の東日本大震災以降は、国内の地震・豪雨の被災地でも「子どもひろば」を開設した。

プランは、災害時に子どもたちが遊びを通じ、ストレスを軽減できる子どものスペースの設置を提案している。

「子どもひろばに子どもを預けることで、保護者は集中して家の片付けなどをすすめることもできます。子どもの心のケアのためには、避難所や家庭での個別的な声かけだけでなく、安心できる場の存在も重要です。特に、災害を受けてイベントなどの娯楽が自粛されているとき、子どもたちが安心して思いきり遊べる場を確保する必要性は高まります」(ウェブサイトより)

〇被災地の映像を繰り返し見せない

災害時の子どもたちの心のケアについて、日本ユニセフ協会は、4つのポイントを挙げている。

1「安心感」を与える

2「日常」を取り戻すことを助ける

3 被災地の映像を繰り返し見せない

4 子どもは自ら回復する力があることを理解し、見守る

特に、「被災地の映像を繰り返し見せない」という項目に注目したい。ウェブサイトでは、以下のように説明している。

「乳幼児は、おとなのように言葉での理解ができないので、映像や画像が伝える事実を十分に把握できません」

「時間の感覚がまだ発達していない子は、過去の出来事を録画再生したものを、今この瞬間に起きていると思ってしまいます。自分を中心に世界や物事を捉えるので、見たものや聞いたものが自分と無関係とは思いにくく、同じような事が自分の近くでも起きるのではないか?とか、自分のせいでこの災害が起こってしまったんじゃないか?といったことを思ってしまいがちです」

対応としては、「日ごろよく観ていたテレビ番組や、お気に入りのDVDなどがあったら、できるだけそうしたものを観せてください」とのことだ。

実際に、ある親が、台風の影響を知りたいとニュース番組を見ていたら、子どもの目に入り、後になって心細さや不安を訴えた。映像だけではなく様々な要因はあるが、川が氾濫する様子は、大人が見てもショッキングで感情移入してしまう。子どもは感情のコントロールが難しいため、直接に被害を受けていない子でも、周囲の大人が配慮したい。

日本赤十字社の看護師・大西浩子さんに取材した、災害時に気を付けたい子どもの体と心のサインについて、改めて紹介する。子どもの世話をする親へのケアも大事だという。

【子どものサイン】

●発熱、下痢、便秘、腹痛、吐き気

●食欲がない、哺乳力の低下

●かゆみ、痛みなどの皮膚症状

〇体温調節のため室温や衣服の調整をする

〇脱水症状に注意

〇清潔に配慮

●寝付きが悪い、悪夢を見る

●1人になるのが怖い、親から離れない

●食べない、無表情、目をパチパチする

●泣く、怒る、かんしゃくをおこす

●落ち着かない

〇安心感を与える

〇大人が「大丈夫」と態度や言葉で示す

〇普段通りの生活ができるようにする

〇スキンシップを多くする

〇子どもができるお手伝いをしてもらう

〇子ども同士過ごせる遊びの場を

〇目を見てよく話を聞く

〇話したがらない時は無理に聞き出さない

〇できるだけ子どもの求めに応じて、普段よりも甘えることを許す

〇赤ちゃん返りや年齢に合わない行動を叱らない

〇おうちの中は危ないからここにいようね、などと適切な情報を理解できる言葉で伝える

【傷ついている親にも理解と支援を】

〇親身に話を聞く

〇相手の感情をありのままに受け止め、むやみに励まさない

〇がんばりを認める

〇話したくないときには、その気持ちを尊重する

〇子どものこれまでと違った行動や、保護者の不安や無気力感などの心の反応は「正常な反応で、心配ない」ことを本人や家族に伝え、見守る

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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