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元モー娘。吉澤ひとみも? 女性のアルコール依存症を体験者が語る

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
依存症に苦しみ、現在は女性の回復支援施設で働く容子さん なかのかおり撮影

元モー娘。吉澤ひとみの飲酒運転・ひき逃げ事件で、アルコール問題が指摘された。子育ての大変さは多くの人が味わっており、彼女の背景に同情できるという話ではないが、「自分もアルコールで紛らわしているかも」とドキッとした女性はいるだろう。依存症の体験があり、女性のための回復支援施設で働くオーバーヘイム容子さんに、女性の依存症について話を聞いた。

●やめたくてやめられないなら依存症

ー彼女は依存症なのでしょうか?

「吉澤さんとお会いして話を聞かないと本当のところ依存症なのかどうかはわかりません。ダメな事と知りながらもしてしまうのは誰しも経験があるでしょうが、交通事故を起こしながらそのまま去ってしまったのは残念です。飲酒運転をした人が、全員が依存症なのかというと、そうではないと私は思います。しかし、やめたくてもやめられない状態だったならば、依存症の傾向があると思います」

「吉澤さんが、日頃からアルコールを飲む状態だったのか、たまたま飲んでいたのか。そして、アルコールをどのような目的で飲んでいたのかが気になります。お酒が好きで飲んでいたのか、ストレス発散なのか…と。もし彼女がストレス、悩みや心の痛みを感じていて、アルコールで紛らわせ発散させようとして飲んでいたのであれば、根本の悩みや心の痛みは解決されないので飲酒量が増していくばかりかと思います。万一アルコールと一緒に安定剤や睡眠薬を飲んでいたとしたら、さらに状況が悪化すると思います」

●行為は許されない「でも話せる場を」

彼女をおもんばかる意見に批判があるかもしれないが、容子さん自身も依存症の体験者でどん底を知っている。現在は女性のための回復支援施設で毎日、問題を抱えて罪を犯した女性たちと向き合う。

「保釈後の彼女の心境が気になります。芸能人としての仕事、妻として、母親として、女性としての役割もありますし、罪悪感や後悔の念を持ちながらどのように向き合っていくのだろうか…と考えてしまいます。自分の内心や感情、気持ちを話せる場所が1つでも彼女にあることを祈っています」

オーバーヘイム容子 1981年生まれ。依存症の体験を経て、女性のための回復支援施設「フラワーガーデン」(奈良県橿原市)代表に。2女の母

ー女性のための回復支援施設ってどんなところ?

「物質(アルコールや薬物など)、行為(ギャンブルやインターネット、買い物など)、人間関係(異性やDVなど)への依存症に苦しむ女性の回復支援が目的で、現在は全国から20~50代が集まり、規則正しい共同生活をしながら、専門の回復プログラムを使って問題を解決しています。段階が進んだ人が新しく入った人をサポート。アメリカの団体が確立した『治療共同体』という考えが手本です」

「基本は入寮してのプログラムですが、通所のみの利用も場合により可能。依存の対象を使わなくても生活や仕事ができること、社会復帰や家族の再生を目指します。子どもや配偶者など、当事者と同じように苦しんでいる家族のケアにも力を入れています」

【1日の流れ】

寮で朝食

デイケアで掃除

朝の集会

午前プログラム

昼食と休憩

午後のプログラム

夕方の集会

夕食

自助グループに参加

リラックスタイムなど~就寝

「プログラムは、感情を表現したり、依存につながる考え方や行動パターンを見直したり。仲間との生活の中で、なぜ依存しなければならなかったか、理由を知り自分と向き合います。先生が来てくれて、フラやヨガの時間もあり、体を動かして心が満たされる体験をする。家賃、生活費、プログラム経費などを総合すると月に20万円ぐらいで、生活保護を受けている人も利用できます。スタッフが通院の付き添いもしています」

「入所の際、家族からの相談が多く、本人が納得していない場合はスタッフが介入して話を進めます。2年ぐらいで入所を終えるのが目標で、長期・短期で目標を見直していく。弁護士と連携し、就労支援プログラムも用意。ハローワークで仕事を探し、アルバイトから正社員と段階を踏んで資金をためてから独り立ちする人もいます」

容子さんからのアドバイス

依存症の背景にあるのは生きづらさで、誰もがなりうる病気。もしストレスを感じているなら、状況を書き出してみる。おなかがすいている、イライラする、寂しい、疲れているといった『状況』がストレスを招くと知っておくことです。考えられなかったら、歩いてみる。ストレスを感じやすい状況や危険信号、自分の限界を知ることも大事です。そして自分をほめてあげる。10できて当たり前ではない。10のうち2ができなくても、『8もできた』とリフレーミングしましょう。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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