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夏休み明け「死にたいと思ったら電話して」

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
SNSが主流になっても、話すという手段を大事にしている(写真:アフロ)

夏休み明け、子どもの精神状態も心配される。自殺予防週間にともないNPO法人「国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター」は、9月1日午前0時から3日午前6時まで54時間連続の相談を実施する。通常は365日、夜間に訓練を受けたボランティア相談員が電話を取っているセンター。この54時間は昼間も開設され、フリーダイヤルで無料で電話できる。

●死にたい気持ちを尊重

東京自殺防止センターは今年、20周年を迎えた。1978年、子どもたちのいじめ自殺の増加に心を痛めた西原由記子さん・明さん夫妻が大阪で自殺防止センターを始め、イギリス発祥の自殺防止団体に「ビフレンディング」を学んだ。

専門家でない相談員が友達のように寄り添うという考えで、死にたい気持ちを尊重して受け止める。東京では中央線の飛び込み自殺が多いと知り、つてのない東京に引っ越して98年、新宿にある教会の一角を借りてセンターを開設。

●ボランティアが夜勤

西原さん夫妻は亡くなったが、筆者はたびたび取材させていただいた。宮崎や岩手など各地に、志を同じくしたセンターもできた。取材の中で出会った相談員は、明るくパワフルな女性、夜勤明けで職場に向かう会社員、ケアワーカー、退職後の男性など職業も様々で幅広い。

このセンターのすごさは、365日、死にたい気持ちが募る夜間に電話を受け付けていること。相談員は自費で厳しい研修を受け、ボランティアで月3回の夜勤に入る。運営は寄付で賄われている。

詳しくは関連記事に記した。生きてほしいとは言わない東京自殺防止センター(講談社現代ビジネス)

●電話という手段にこだわり

9月10日の世界自殺予防デーにちなんで毎年、10日からの1週間が自殺予防週間として設定されている。この期間に先駆け、昼間も含め54時間の連続相談をフリーダイヤルで受ける。費用の一部にあてるため、相談員らが先日、街頭募金に立った。

SNSがコミュニケーションの主流になる中、電話という息遣いの感じられる手段にこだわるセンター。今年1月、ツイッターとの連携で、センターの相談窓口が紹介されると、若い人からの相談も増えたという。

●相談窓口の情報シェアを

センターは相談員の研修や自死遺族の会、生きづらさを感じる人のための会も開いている。9月13日には、「体験傾聴講座」が東京都中央区のツイッタージャパンを会場に開かれる。相談員を講師に、深い悩みを打ち明けられたらどう関わるか考える。

相談員は、「学生の皆さんは新学期を迎える時期。とても嫌で苦しく、辛い日かもしれません」「今の苦しみ、死にたい思いを話してください」と呼びかけている。

周囲に悩んでいる人がいたら、情報のシェアを。

東京自殺防止センターのHPより

「もう生きていたくない、死にたい」

そんな思いのあなたに・・・。

自殺防止センターは死にたいと思っているすべての人、すべての年代の苦しい気持ちを聴きます。

あなたの今の気持ちを話してください。

9月1日(土)0時~3日(月)6時

自殺予防週間にともない、54時間連続相談を実施します。

この時間帯にはフリーダイヤル 0120-58-9090 を設置します。

あなたの周りでこの番号を必要とする方にもぜひお知らせください。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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