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50歳から俳優の道へ。“超遅咲き”の注目新人・パラゴンつよしが体現する人生訓

中西正男芸能記者
会社経営と役者。二つの人生を生きることになったパラゴンつよしさん

 自動車販売業・不動産業の経営者という顔を持ちつつ、50歳から俳優の道に入ることになったパラゴンつよしさん(55)。26日から放送がスタートした動画配信サービス「Disney+」の連続ドラマ「拾われた男」(NHK BSプレミアムなどでも放送)にも出演するなど“超遅咲きの新人”として注目度が急上昇しています。社長と俳優という二つの顔を持つ意味。そして、そこから得た人生訓とは。

 今から5年前、いつもお世話になっている兄貴のような先輩社長さんがいて、その方と食事をしていたんです。

 その場にいらっしゃったのが石原貴洋監督で、何をどうお感じになったのか、そこで「作品に出てみますか」という話になったんです。

 それまでは芸能界なんて全く縁のない世界で仕事をしてきましたし、まさかの展開だったんですけど、これも一つの経験なのかなと。そう思って出演させてもらったのが石原監督の映画「大阪少女」でした。

 お話をいただいたのが2017年。ちょうど50歳の頃でした。そこから何をどう評価していただけたのかコンスタントに役者のお仕事をいただけるようになり、現時点で映画7本ほどに出していただいています。

 今回「拾われた男」という「Disney+」さんの作品に出してもらうことになったのも、ホンマにビックリという感じです。

 事務所に打診があり、ある種ダメもとで資料を送ってもらったようなんですけど、何がどうなったのか、主演の仲野太賀さんの友人役・大東駿介さんの父親役で出してもらうことになりました。僕こそが、まさに「拾われた男」みたいなもんですけど(笑)。

社長と役者

 本当にご縁の力としか言いようがないんですけど、役者の仕事をさせてもらう中で、あらゆる感情をいただいてもいます。

 最初の作品「大阪闇金」の時に撮影現場で中野英雄さんとご一緒する機会があったんです。これまでも作品の中では拝見していて、なんと自然な演技をされる方なんだろうと素人ながらに思っていたんですけど、実際に間近で見ると、カチンコが鳴った瞬間にパッと空気が変わる。その瞬間、完全にその役になっている。

 そして、本当にその人として生きているようにどこまでもナチュラルなんです。水が高いところから低いところに流れて、川になって、海に出ていく。そんなイメージが思い浮かぶくらい本当にその役の人に見える。これがプロなんだなと。

 それぞれの仕事にプロはいますが、プロのすごみをダイレクトに見ることができる。それが役者の世界でもあるんだなと思っています。

 あとね、普段の社長としての空間だとなかなか得られない気持ちをつかむことができる。これも、本当に大きいなと思います。

 自分の会社にいたら、すごく雑に言うと、自分の意見が通ってしまうんです。逆に言うと、責任をもって自分の判断で進んでいかないといけないんですけど、自分がAだと思えばAになる。

 ところが、役者の現場では僕なんてのは一兵卒も一兵卒。一番下なんです。この感覚が本当に大切だということを改めて痛感しています。

 もともと自分もそこから上がってきた人間ですし、そこの気持ちを思い出すとともに、会社での振る舞いにも生かすようになりました。端的に言うと、会社であまり怒らなくなりましたね(笑)。いろいろな立場や気持ちを慮るというか。

 こんなナリをしてますんで、ものすごく怖いと思われるところもあるんですけど(笑)、実はそんなに怒りもしてないつもりなんですけどね。そこがさらに強くなったかなと思います。

刻み込まれた人生訓

 ありがたいご縁で、50歳を過ぎてからもう一つの人生を生きさせてもらっていて、その中でいろいろと感じることもあります。

 人生何一つ無駄なことはない。そして、何をするにも遅すぎるということはない。よく言われることですけど、ホンマにそれを強く思うようになりました。

 役者としての経験は何もないまま50歳になってました。ただ、人生の経験としてはあらゆることをしてきた。つらいことも、苦しいことも、そしてうれしいことも、いいのか悪いのか、人の何倍もしてきたと思います。

 そこの物量みたいなものが何かの形でにじみ出る。それがスクリーンに映った時に、他の役者さんとは違う異物感になる。それを味ととっていただく方がいる。

 もしそんな流れが今の仕事量につながっているならば、それこそありがたいことですし、無駄なことはないし、遅すぎることもない。とことん、そう思います。

 ただ、僕もエエ大人ですから、僕が主役をするとか、そんなことは天地がひっくり返ってもないことくらいは分かります。

 でも、50歳を過ぎてから役者の仕事をさせてもらうようになった自分だからこそ出せる色があるならば、それを求めていただけるなら本当にうれしいことだと思っています。

 そしてね、これはものすごく個人的なことになりますけど、ウチは娘二人、息子一人いるんです。娘たちはそれぞれ立派な仕事を持って結婚もしました。息子はまだ大学生でまさにこれからの人生を考えている最中なんです。

 その息子に生きることの可能性を示す。親として恥ずかしくない背中を見せる。それが僕が会社を経営しつつ、役者として生きる一番の意味だとも思います。

 役者として認知される。それはすなわち息子に一つの道を提示することにもつながるんだろうなと。だからこそ、本気でできているんだろうなとも思います。

 そのためには、役者としてもっと、もっとステップアップしないといけないんですけどね。できれば、何の役でもできる役者。そこを目指したいと思っています。今のところは、なんでなんですかね、圧倒的にヤクザの役が多いんですけど(笑)。

 なんとか少しでも皆さんに楽しんでもらえる役者になる。そこを目指して何とか努めたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■パラゴンつよし

1967年2月21日生まれ。大阪府出身。近畿大学卒業。本名・中西毅。中古車販売会社勤務を経て、2002年に大阪府堺市に自動車販売業及び不動産会社を設立。19年公開の映画「大阪少女」(石原貴洋監督)で俳優デビュー。芸能事務所「プロジェクトコア」に所属し映画「静寂」「大阪闇金」などに出演してきた。現在放送中の「Disney+」の連続ドラマ「拾われた男」(NHK BSプレミアムなどでも放送)にも出演している。同作の出演者は仲野太賀、草彅剛、伊藤沙莉ら。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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