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ふなっしーに息づく志村けんさんの魂

中西正男芸能記者
今の思い、そして、今後への思いを語るふなっしー(すべての撮影・倉増崇史)

2011年から活動を始め、今年で10年の節目を迎える人気キャラクターのふなっしー。「ご当地キャラ総選挙2013」で優勝し、テレビ出演やCMなど多忙を極める時期を経て、活動を直撃することになった新型コロナ禍での苦悩。さらに、志村けんさんから受け継いだ魂とは。今の胸の内を吐露しました。

新型コロナ禍が直撃

 今の活動としては、基本的にファンサイト向けの動画を撮るのがベースになってるなっしなー。あと、船橋と原宿、名古屋、大阪にお店も運営してるので、その会議をしたり。そんな中で月に1~2回くらいテレビに出る。それが今の平均的な動きになると思うなっしー。

 新型コロナ禍になって、仕事への影響はすごくありましたなっしー。コロナ禍前の仕事量を100とすると、今は30くらいになっていると思いますなっしなー。

 キャラクター業界全体が壊滅的な打撃を受けたと言っても過言じゃないなっし。そもそも、キャラクターというのは人を集めてナンボ。それをやっちゃいけないとなると、何をしたらいいの?となってしまいますなっし。

 あと、キャラクターが呼ばれるような大きなお祭りはだいたい自治体が運営するので、より一層、気を使うところもありますなっしな。万が一にも、そこがクラスターになるようなことがあったらダメなので。

 今はキャラクター業界全体で、本当に大変な時期だと思いますなっし。なので、それぞれがご当地の名産品などを紹介するオンラインバスツアーを開いたり、いろいろと工夫しながらやってるのが今の状況なっしなー。

何年も続くとは

 去年から状況は大きく変わったけど、ここまで10年やってこられたことには感謝しかありませんなっし。

 2011年から活動が始まって、忙しくなったのは2013年頃から。そこから3年ほどは馬車馬のように働いた気がするなっしなー。

 忙しすぎて記憶が飛んじゃうというか休みもなかったし、イベント、番組収録、打ち合わせのハシゴなんかは当たり前。毎日がバタバタのうちに終わっていたなっしよ。

 あと、ふなっしーの場合はメディアに出る仕事だけじゃなくグッズの監修もやるし、会議にも出るし、マネージャーさんもいないのでスケジュール管理も、メールのやり取りも、ギャラ交渉も全部一人でやってたので、よりてんてこ舞いだったなっしなー。

 もともとは、こんなに長くやるとは思ってなくて。なので、すごく大きな芸能事務所さんからもいくつかお話をいただいたんですけど、事務所というのは、これから先もずっと活動を続ける人が入るもので、そんなに長くなることはない自分がそこに入るという発想がなかったというのも大きかったなっしな。

 テレビに出る時も、毎回「もう、これが最後だろうな」と思いながら出てたし、何年も活動が続くなんて思ってなかったのが本音なっしなー。

 それが10年経った今でも、ちょこちょこ呼んでもらえている。それは純粋にありがたいし、皆さんに感謝してますなっしー。

誰のためなのか

 お声がけをいただけることはもちろんありがたいし、それが続くなんて思ってもみなかったんですけど、どちらかというとガチガチの肉体労働なので(笑)、その意味の苦労はあったなっしなー。

 何もかも自分がやるしかなくて、替えがきかない。どれだけ体調がつらくても、現場に行ったら「ひゃっはー!」とやるしかないなっしよ。「元気良くやる!」の一択(笑)。しっとりと話を聞かせるみたいな現場はないですからね。

 一回、メキシコにロケで行った時には、熱中症でフラフラになってもプロレスで投げられてましたし、その時は梨汁じゃない別の汁が出そうになったこともありますけど、それでもやるしかなかったなっしな。

 そのうち、少しずつ「テレビに出ること」について考えるようにもなっていきましたなっしな。そのきっかけは“テレビの出方”で、最初はマットで前転をするくらいの動きを求められていたところから、おもりをつけて水に沈められるとか、爆破されるとか、いろいろなことを求められるようになったなっしよ。

 そうやって衝撃的な映像を伴うような体を張る仕事をするうちに、ファンの皆さんが心配してくださった部分が強くなりまして。Twitterとかを見ても「もう、ムチャしないで…」というような声がたくさんあって。

 そういう露出きっかけで面白いと思ってふなっしーに興味を持ってくださった方もいらっしゃるとは思うんですけど、ずっと好きでいてくださる方々が心配になってしまっている。となると「いったい、誰のためにやってるんだろう…」と思ったのが、立ち止まるきっかけになったと思うなっしな。

 求められることをする。もともとのファンを大切にする。この間でどうソフトランディングするのがいいのか。その考えは忙しい時には常にあったなっしなー。そして、結果的に「応援してくれるファンの方が喜ぶことはしよう」というスタンスに落ち着いていきましたなっし。

志村けんさん

 そうやって、見ている人に純粋に楽しんでもらう。本当に難しいことですけど、誰も傷つけずに、みんなに喜んでもらう。それを追い求めてきた10年間ということは言えると思うなっしなー。

 その中で、ふなっしーにとってとても大きな出会いもあったなっしー。それが志村けんさんとのご縁でしたなっし。

 志村けんさんにお会いした時は本当に実在するんだという気持ちで震えましたなっし。感動したのはわざわざ志村さんの方からこっちの楽屋まで来てくださって、いろいろなお話もしてくださったなっしよ。細かく指導もしてくださって。こんなぽっと出のふなっしーに。

 最初にお会いしたのは2014年で「天才!志村どうぶつ園」(日本テレビ)だったんですけど、ワンちゃんが出てくるコーナーで、そこにいきなりふなっしーが出て行って吠えられるというような場面でしたなっし。

 その時は外でのロケだったので、そこまで深くお話をうかがうことはなかったんですけど、後日、今度は「志村けんのバカ殿様」(フジテレビ)に呼んでいただいたんです。

 後からスタッフさんにうかがうと、ありがたいことに志村さんの意向でオファーをもらったみたいで。

 どんな流れになるんだろうと思いながら楽屋にいたら「ちょっといいかな?」とわざわざ志村さんが楽屋に来てくださったなっしよ。

 台本を読み合わせながら「ここはこうした方がいいと思うんだけど」と細かい動きにいたるまで手ほどきを受けて。まさに手取り足取りというか、いかに面白くなるか。いかに楽しい感じになるか。その極意みたいなところを細かく教えてもらったなしなー。

 その後も何度か番組でご一緒したりもさせてもらったんですけど、志村さんとの時間、接点から勉強させてもらったことは本当に大きかったと思いますなっし。

 言葉で丸め込むような笑いではなく独特の間でずっこけたり、子どもからお年寄りまで誰が見ても面白さが分かりやすい。それでいて、誰かを傷つけたりすることなく、みんなが純粋に楽しめる。

 これって、実はすごくキャラクター的というか、キャラクターに求められることとすごく重なっていると痛感したなっしなー。だからこそ、こちらもスッと心に染み込んでいくというか、深く響くところがありましたなっしな。

 志村さんがどんな思いで教えてくださっていたのか。今となっては確認することはできないけど、すごく大きなものを志村さんからいただいたという思いは強く、強く、あるなっしなー。

20周年に向けて

 なんとかいろいろな支えをいただいてやってきましたけど、次の節目となると、20年なっしーな。まさか、こんなに長くやるとは思ってなかったんで、ここまで来たらやれるところまではやっていきたいなと思うなっし。梨の妖精にも成長期があって声変わりするかもしれないけど(笑)。

 もちろん、人にも、妖精にも、それぞれの人生があるものなっしよ。つらいことも、大変なことも、もちろんある。その中で、20周年の時もみんなでイベントで笑えていたら、これは本当に素敵なことだと思うなっしなー。

 「みんな、歳取りましたなっしなー。ふなっしーも、もうジャンプできないなっしよ」なんて言いながらも、みんながみんなを許して、認めて、癒し合うみたいなことができていたら、長くやらせてもらう意味があるかなと思うなっし。

 以前「THE ALFEE」さんのライブに出してもらったことがあったんですけど、あの空間は本当に素敵でした。いくつになっても、お子さんやお孫さんと一緒に「THE ALFEE」さんの曲を楽しむ。あんな空間が作れたら理想なっしなー。

 そのためにも、少しでも体が動き続けられるように日々のトレーニングはしないといけないなっしなー。妖精がトレーニングというのは合わないかもしれないけど(笑)、喜んでくれる人が一人でも増えるように頑張るなっしー!

■ふなっしー

千葉県船橋市に住むご当地キャラ。船橋市非公認。「梨の妖精」として、2011年から活動を始める。13年に「アサヒ十六茶」のCMに出演し、そこから一気に注目度が高まる。「ご当地キャラ総選挙2013」で優勝。地域おこし活動のほかにメタルバンド「CHARAMEL」のヴォーカル・声優としても活動。YouTubeチャンネル「274ch.」、フォロワー約140万人のTwitterなどSNSも幅広く展開している。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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