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鎌田大地に大手紙が「チームワースト」選出 勝ってもラツィオはファンからブーイング

中村大晃カルチョ・ライター
11月12日、セリエA第12節ローマ戦での鎌田大地(写真:REX/アフロ)

鎌田大地の34分間には、厳しい声も寄せられた。

ラツィオは12月2日、セリエA第14節でカリアリに1-0で勝利した。前半8分と早い時間帯に均衡を破ると、これが決勝点となっている。

■鎌田大地はアクシデントで途中出場

鎌田は56分に投入された。だが、84分から出場した4日前のチャンピオンズリーグのセルティック戦に続き、マウリツィオ・サッリ監督が意図していた起用ではない。

セルティック戦では、足をつったルイス・アルベルトとの交代だった。そしてカリアリ戦でも、鎌田が投入された理由はアクシデントだ。ルイス・アルベルトが負傷で自ら交代を要求した。

代役として左インサイドハーフを務めた鎌田は、グスタフ・イサクセンのクロスから好機となった71分など、ボックス内に飛び出す場面も見られた。前にいこうとする姿勢も散見された。一方で、思い切りのよいプレーでなかったことも否定できない。

サッリが最後の交代に踏み切った83分からは、左ウィングの役割を振られた。この位置でのプレーは、82分から出場した11月12日の第12節ローマダービーに続いて2回目だ。

だがやはり、本職ではないウィングで印象的な仕事をするには至らなかった。

■カリアリ戦の鎌田大地の評価は?

現地メディアの採点は様々だ。

『Sky Sport』や『Sport Mediaset』、『TUTTOmercatoWEB』、『La Lazio Siamo Noi』といったメディアは、及第点の6点をつけた。

ただ、及第点とはいえ、寸評ではあまり好ましい評価をされていない。『TUTTOmercatoWEB』は「ミスせずにマネジメントするにとどまった」と伝えている。『La Lazio Siamo Noi』は「スペースを見つけるために自分を再改革しなければいけない」と辛口の評価だ。

5.5点とした『calciomercato.com』は、「何度かエリア内に飛び出したが、特別な幸運なかった。影響及ぼせなかった」と、存在感の薄さを指摘。『Eurosport』は「まったく危険ではなかった」とし、終盤は「あまりボールが来なかった」と報じている。

大手紙『La Gazzetta dello Sport』は、アダム・マルシッチと並ぶ5点と厳しい採点。「インサイドハーフでもウィングでも水から飛び出た魚」と断じ、さらにチームワーストに選出した。

馴染めずに苦しむ様子を表現する「水から飛び出た魚」は、以前から鎌田の状況を伝える際に用いられている。鎌田が溶け込んでいないとの認識は、加入4カ月が経っても変わらないままだ。

やはり5点をつけた『cittaceleste』も、同様の印象を受けた様子。鎌田が「試合に入れなかった」とし、「正しいポジションを見つけられずにピッチをさまよい続けた」と指摘した。

ルイス・アルベルトが出場停止でフル出場した前節サレルニターナ戦で、鎌田が先発のチャンスを生かせずに批判を浴びたのは周知のとおりだ。

カリアリ戦の出場34分は、サレルニターナ戦を除けば、先発落ちしてからの最長時間。だが、再び評価を上げるには至らなかった。

■ラツィオもチーム全体の不調継続

しかし、低調な出来は鎌田に限った話ではない。

散々だったサレルニターナ戦では、試合後にサッリが怒り、辞任もいとわない姿勢を見せた。クラブ幹部からも喝を入れられ、チームはセルティック戦で意欲を見せ、ベスト16進出を決めている。

カリアリ戦でも、出だしは悪くなかった。ペドロの先制点だけではない。27分と早い時間帯に相手が退場者を出したこともあり、ラツィオは快勝も期待された。

だが、今季のラツィオに爆発力はない。アドバンテージを生かせず、特に後半は開始から緩さも散見された。鎌田の投入前から、不穏な空気が感じられたのだ。

結局、後半のラツィオは数的優位とは思えないパフォーマンスに終始。アディショナルタイムには、守護神イヴァン・プロヴェデルの好守がなければ失点していた決定的ピンチもあった。

終了の笛が吹かれると、勝ったにもかかわらず、本拠地オリンピコのファンからブーイングを浴びせられたほどだ。

■鎌田大地は逆風にあらがえるか

主将チーロ・インモービレは試合後、「もっとこういう試合で勝たなければいけない」と、内容が悪くても結果を残すことが大切と強調。サポーターの不満に理解を示しつつ、継続して結果を出せるように助けてほしいと話した。

実際、特にリーグ戦でラツィオに必要なのは、安定して勝ち点を積み重ねることだ。10月に3連勝したが、その後は3試合白星なし。中位から浮上するには、着実にポイントを増やすしかない。

ただ、チームの低調な出来は、連係が重要なスタイルの鎌田の立場を難しくするばかりだ。

ルイス・アルベルト不在で好機だったサレルニターナ戦は、“格下”相手ということもあってか、チームに緩みがあった。気合を入れ直したセルティック戦、立ち上がりは良さげだったカリアリ戦では、鎌田がベンチスタートだった。

カリアリ戦で決勝点をあげたペドロと絡む時間が少ないのも、鎌田にとっては痛手かもしれない。サレルニターナ戦で組んだマッティア・ザッカーニと違い、ペドロとは良い連係を構築できる兆候が感じられる。だがこれまで、ペドロと同サイドでプレーした時間はごくわずかだ。

あらゆることが不利に働いていると思わずにいられない逆風だが、もちろん鎌田からのアクションも必要だ。味方からパスが来ないのは明らかなだけに、自ら信頼を得るための行動が期待される。

カリアリ戦の85分の場面もそのひとつだろう。マテオ・ゲンドゥジがエリア内からクロスを入れたシーンだ。ゲンドゥジの狙いは鎌田ではなかったと思われる。だが、反応が遅れた鎌田がファーサイドの奥深くを突いていたら…と思わせるプレーだった。

鎌田の狙いと違うところは多々あるかもしれない。だが今は、鎌田が合わせにいかなければならない状況だ。少なくとも、このラツィオで事態を好転させるためには…。

チームは来週5日、コッパ・イタリアのラウンド16でジェノアと対戦する。ルイス・アルベルトの状態はまだ不明だが、無理をさせることはないだろう。再び鎌田に先発の機会が訪れるかもしれない。そのとき、苦境を抜け出す光は見つかるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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