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鎌田大地は出場減少も「信頼できる」 新加入組の評価上向き、ラツィオの補強は成功?

中村大晃カルチョ・ライター
9月23日、セリエAミラン戦での試合前の鎌田大地(写真:REX/アフロ)

鎌田大地は公式戦ここ5試合で先発出場が1試合だけだった。だが、ラツィオの新戦力たちは全体的に評価を高めつつある。

セリエAで開幕から2連敗を喫し、4戦3敗と大きく出遅れたラツィオ。一時は監督と会長の対立も騒がれたが、公式戦ここ4試合では3勝をあげており、結果に関しては復調の兆しを見せている。特に、開始11分間で2得点を奪い、難敵アタランタを3-2で下したリーグ前節は、チームの士気を高めたはずだ。

■ラツィオ新戦力は監督の「強み」に

そのアタランタ戦で活躍したのがバレンティン・カステジャノスだ。初ゴールを決めただけでなく、終盤にはマティアス・ベシーノの決勝点をお膳立て。1得点、1アシストを記録し、主将チーロ・インモービレの負傷欠場を忘れさせた。

右ウィングのグスタフ・イサクセンは、先発出場こそ1試合だけだが、10試合中9試合に出場。終盤の投入が多いものの、活気と躍動感をもたらしており、今後の起爆剤となることが期待される。

ケガで出遅れを余儀なくされたニコロ・ロヴェッラも、リーグ戦ではここ3試合で先発出場。マウリツィオ・サッリ監督が期待したアンカーの新レギュラーの座を射止めつつあるところだ。

そのロヴェッラがルイス・アルベルトと一緒に先発すると、鎌田の居場所がなくなる。指揮官はチームバランスを理由に、この3人を中盤のスタメンにすることはできないと話した。選ばれるのは、フィジカルの強さで勝るマテオ・ゲンドゥジだ。

『La Gazzetta dello Sport』紙は10月11日付の紙面で、「序盤は難しかったが夏の新戦力がサッリの強みになりつつある」と、ラツィオ新加入組の調子が上向いていると報じた。

カステジャノスについては、インモービレと特徴が異なるだけに有益な存在になると期待。アタランタ戦のゴールが「ターニングポイント」になり、あとは継続性が鍵と伝えている。

ロヴェッラは、やはりケガの影響でスロースタートになったことを指摘しつつ、「チームの不動の存在になることが運命づけられている」と大きな賛辞を寄せた。

イサクセンに関しては、出場時間が新戦力で最も少ないものの、「おそらく最も魅了した」と称賛。ゴールこそないものの、「このまま続ければすぐに決められるだろう」と太鼓判を押している。

ゲンドゥジはデビュー戦でナポリを相手に躍動も、その後苦しんだと指摘。だが、先発出場した直近2試合は「明らかに良くなった」とし、「もっともっとやれる」と評価した。

■鎌田大地はやや下り坂?

しかし、鎌田は開幕当初と比べて出場時間が減っている。

ラツィオはここまで公式戦10試合で4勝2分け4敗。開幕からの前半5試合は1勝1分け3敗だが、ここ5試合で3勝1分け1敗という成績だ。徐々に調子が上向いていることが分かる。

これに対し、鎌田は開幕から5試合で出場時間が325分だったが、ここ5試合は139分。うち2試合は出場機会がなかった。ターンオーバーや軽傷の影響もあったとはいえ、チームと対照的にやや下り坂と言わざるを得ない。

チャンピオンズリーグ(CL)のセルティック戦では、大黒柱のルイス・アルベルトがベンチに呼び戻された中で初のフル出場を果たした。だが、直近は存在感が薄まっているのは確かだ。

それでも、『La Gazzetta dello Sport』紙は、鎌田をゲンドゥジとともに「信頼できる」存在と表現。「サッリは戦術面で最も準備できているとの考えだ。それですぐに起用し、良いパフォーマンスとナポリ戦での決勝点で返してもらった」と伝えている。

同紙は「彼とルイス・アルベルトがいる中盤を支えるのにチームは苦しんでいる」と、鎌田の出場機会が減っていることも指摘。そのうえで、「もっとうまく調和したら、さらにやれるはず」と、伸びしろがあると報じた。

■不動の魔術師との共存が課題

『La Gazzetta dello Sport』紙も指摘したように、鎌田にとって重要なのは、ルイス・アルベルトといかに共存していくかだろう。「魔術師」の異名を持つ技巧派は、ラツィオにとって絶対の存在だからだ。

開幕当初は、アンカーにダニーロ・カタルディを置き、両脇を鎌田とルイス・アルベルトが務めたが、チームの成績につながらなかった。そしてロヴェッラがアンカーに入れば、鎌田とルイス・アルベルトを同時に起用できない(とサッリが考えている)のも前述のとおりだ。

そのため、鎌田の役割は徐々に「ルイス・アルベルトの交代要員」のようになりつつある。ベシーノが好調でロヴェッラも株を上げているだけに、序列を覆すのは容易ではないかもしれない。

ただ、鎌田は日本代表から外れたことで、インターナショナルウィークにサッリと密に練習できる。最も必要なのは時間と言われていただけに、この機会をどれだけ生かせるかは重要だ。

10月21日のセリエA次節サッスオーロ戦では、ウルグアイ代表で長距離移動を余儀なくされるベシーノのコンディションも考慮されるだろう。直後にはCLフェイエノールト戦も控えている。これから鎌田の出場機会が増えていくのか注目したい。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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