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ユヴェントス撃破の優勝で市場価値は4倍増、ラツィオが手にした「目には見えない収穫」

中村大晃カルチョ・ライター
12月22日、スーペルコッパ・イタリアーナを制したラツィオ(写真:ロイター/アフロ)

12月22日にサウジアラビアで開催されたスーペルコッパ・イタリアーナで、ラツィオはユヴェントスを3-1と下し、2年ぶり5回目の優勝を飾った。

イタリア国内で絶対的な力を誇り、強力3トップを擁するユヴェントスを倒したというだけでも偉業だが、わずか2週間前にもセリエAでユーヴェに勝利していたのだから、ラツィオが絶賛されたのは言うまでもない。

◆欧州で最も好調との声も

元イタリア代表のフランチェスコ・グラツィアーニは、『Radio anch’io sportiva』で「完璧なオーケストラ」だったと表現。ユヴェントスの指揮官として初のファイナルを落としたマウリツィオ・サッリ監督は、現在のラツィオが「欧州で最も好調のチーム」と話している。

実際、ラツィオは今季最初のタイトルを獲得しただけでなく、セリエAでも首位で並ぶインテル、ユヴェントスに続く3位につけている。未消化分のエラス・ヴェローナ戦に勝てば、トップの2チームとの勝ち点差はたった3ポイントしかない。

38得点はアタランタに次ぐリーグ2位で、16失点もインテルに次ぐリーグ2位。得失点差プラス22はインテルと並んでいる。攻守両面でクオリティーの高さを示しており、シモーネ・インザーギ監督の評価は右肩上がりだ。

◆攻撃陣を中心に価値はうなぎのぼり

当然、指揮官だけでなく、選手たちの価値も上がっている。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、スーペルコッパに先発出場したイレブンの市場価値は、約4倍に高騰しているという。

特に急上昇しているのが攻撃陣だ。

セリエAで得点ランク首位に立つチーロ・インモービレは、1000万ユーロ(約12億2000万円)だったのが6000~7000万ユーロ(約73億~85億2000万円)にアップ。セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチも、同じように1000万ユーロから7000万ユーロに跳ね上がった。

アシストランクでトップに立つルイス・アルベルトは、500万ユーロ(約6億1000万円)から4000万ユーロ(約48億6000万円)の8倍増。マリオ・スコンチェルティ記者が『コッリエレ・デッラ・セーラ』や『Calciomercato.com』で「パウロ・ディバラにも劣らない」と称賛したホアキン・コレアは、1600万ユーロ(約19億5000万円)だったのが3000~4000万ユーロ(約36億5000万~48億6000万円)と評価されている。

『コッリエレ・デッロ・スポルト』も、チーム全体の市場価値が1億1910万ユーロ(約144億8000万円)から5億1500万ユーロ(約6261000万円)に急騰と報じた。評価額にはばらつきもあるが、いずれにしても全体的にうなぎのぼりであることは変わらない。

◆目には見えない貴重な収穫

もちろん、プロとして市場価値が高まるのは重要なことだ。ただ、ラツィオの面々が2度のユーヴェ撃破で手に入れたのは、それだけではない。

『スカイ・スポーツ』のマッテオ・ペトルッチ記者は、「今回はトロフィールームにより重要な物が加わった。それは目に見えないが存在する物、自分たちがビッグになったという自覚だ」と伝えている。

「それこそが、最も重要な勝利である。これまで常に言われてきた最後の一段を上ることができたということだ。もう、ラツィオは『そうなりたいけどなれない』というチームではない。2度のファイナルを含め、ユーヴェとの過去7回の対戦で、4勝をマークした唯一のチームなのだ」

インザーギ体制のラツィオは、目標のチャンピオンズリーグ出場権に迫りながらも及ばないということがあった。それが今季は、首位で並ぶインテル、ユヴェントスに続く第三極としてのポジションを築きつつある。欧州最高峰への切符だけでなく、スクデットを期待する声もあるほどだ。

ただ、L・アルベルトは「理性的な目標ではない」と慎重だ。1月は未消化分やコッパ・イタリアもあり、年明け初戦の5日から26日までの22日間に6試合をこなすハードスケジュールとなる。決して層が厚くはないラツィオは、ウィンターブレイクを挟んでも勢いを保てるか。2020年のスタートから目が離せない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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