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ロナウド+ディバラ+イグアイン=「タキシード」? トリデンテ待望論高まるユヴェントス

中村大晃カルチョ・ライター
12月7日、セリエAラツィオ戦でのC・ロナウドとディバラ。イグアインもいるべき?(写真:ロイター/アフロ)

輝きを失いつつあったパウロ・ディバラは復活した。ゴンサロ・イグアインは献身的に貢献し続けている。そして、クリスティアーノ・ロナウドは、クリスティアーノ・ロナウドだ。

ユヴェントスが誇る強力攻撃陣が同時にプレーすれば、相手チームにとって脅威であることは間違いない。だが現在、彼らが同時にピッチに立つ機会は限られている。

マウリツィオ・サッリ監督は一貫して慎重な姿勢だ。チームバランスを考慮すれば、C・ロナウド、イグアイン、ディバラのトリデンテ(3トップ)はリスクが大きすぎると主張してきた。

◆同時出場はわずかだが好成績

実際、サッリはイグアインとディバラのどちらかをC・ロナウドと組ませ、トップ下にフェデリコ・ベルナルデスキを置いている。公式戦21試合のうち、出場試合数はディバラとイグアインが19試合、C・ロナウドが18試合。だが、3人が同時にプレーしたのは97分だけだ。

ただ、その97分間で、ユーヴェは5得点をマークし、失点はゼロという数字だ。3人そろって先発出場したことはなく、同時起用はあくまでスペースが生まれる後半の限られた時間帯だったことを考慮しなければいけないが、3人のうち2人が組んだ時間の平均データと比べて差は小さくない。

12月13日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
12月13日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
12月13日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
12月13日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

12月12日のチャンピオンズリーグ(CL)・レヴァークーゼン戦でも、66分のディバラ投入がターニングポイントになった。その背番号10のアシストからC・ロナウドとイグアインがそれぞれ得点し、ユーヴェは2-0と勝利している。

◆ファンやメディアからトリデンテを望む声

当然、魅惑のトリデンテを望む意見は増える一方だ。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』電子版のアンケートでは、1300人以上のユーザーの85%以上がサッリにトリデンテ採用を求めた。6800人を超すファンの約37%が、ユーヴェのトリデンテをCL優勝候補の中で最強と評価する。

サポーターだけではない。ジャンカルロ・パドヴァン記者は、『Calciomercato.com』でベルナルデスキを「2人のアルゼンチン人選手たちと同じ“言葉”を話せず、C・ロナウドともあまり分かり合えていない」と批判。トリデンテを導入すべきと主張した。

アルベルト・ポルヴェロージ記者も、『コッリエレ・デッロ・スポルト』で「ディバラのようなフェノーメノ(怪物)を外す選択を、バランスが取れていると言えるのか」と指摘。トリデンテにしないのは「サッカーに対する冒涜」とまで訴える。

また、同記者は、チーロ・インモービレやホアキン・コレア、ルイス・アルベルトらを組み合わせてラツィオのシモーネ・インザーギ監督が好調を保っていることを引き合いに出し、サッリにもできるはずと呼びかけた。

◆CL優勝経験者たちの意見

クラブOBのアレッシオ・タッキナルディも、『ガゼッタ』で「自分なら少なくとも試す」と、トリデンテにトライすべきと主張した。3人ともエゴイストではないとし、何よりも「一緒にプレーするのを楽しんでいるように見える。これは大切なことだ」と述べている。

確かに、レヴァークーゼン戦後、決めるのはサッリと前置きをしたうえで、C・ロナウドはディバラともイグアインともやりやすいと発言。3人が一緒のプレーを楽しんでいると口にした。

ユーヴェのレジェンド、アレッサンドロ・デル・ピエーロも、トリデンテは可能との見解だ。

もちろん、満場一致で賛成というわけではない。

やはりOBのファブリツィオ・ラヴァネッリは、『ガゼッタ』で「(サッリが)散発的にしか同時起用していないのには理由があるはず」とコメント。時間とともにトリデンテでも適切なバランスを取れるようになる可能性を認めつつ、「今は時折見られるだけで満足しなければいけない」と続けた。

タッキナルディは「チームの“服装”はまだ定まっていない。だったらなぜ、このパーティー用のタキシードを試さないんだ?」と話す。ただ、しゃれたタキシードを纏うのは限られた場だけだ。そして、散発的に試す現在のやり方は、いざという時の備えになる。

3人のOBたちは、現時点でクラブ最後となる欧州制覇を果たした1996年の在籍メンバーだ。特に、デル・ピエーロとラヴァネッリはジャンルカ・ヴィアッリと3トップを組む主軸だった。

それから24年。通算3回目のビッグイヤーを狙うユヴェントスは、再びトリデンテで欧州のライバルたちに挑むようになるのか。サッリの今後の手腕が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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