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解任危機もささやかれるモンテッラ、ミランに最適のコーディネートを見出せるか

中村大晃カルチョ・ライター
10月19日、EL第3節AEKアテネ戦で指揮を執るモンテッラ監督(写真:ロイター/アフロ)

「似合う服」を見つけるだけの時間は残されているのだろうか。現地時間10月19日のヨーロッパリーグ(EL)でAEKアテネと0-0で引き分けたミラン。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督が、いよいよ崖っぷちに追い込まれつつある。

ラツィオ相手に今季初黒星を喫したときも、サンプドリアに敗れてフロントから叱責されたときも、ミランは欧州の舞台で白星を取り戻した。だが、ミラノダービーを落とし、セリエAで3連敗と苦境にある中で迎えたAEKアテネ戦は勝ち切れず、サン・シーロの観客からブーイングを浴びせられた。

予選からの連勝こそ6で途絶えたが、ELではグループ首位を保っている。だが、セリエAでは首位ナポリの半分の勝ち点(12)で12と低迷。何より、至上命令とされていたチャンピオンズリーグ(CL)出場ラインに勝ち点7差をつけられているのは痛い。

◆妥当な中位

終盤の失点まで奮闘したローマ戦、2度のビハインドを跳ね返しながら90分のPKで敗れたダービーと、“情状酌量”の余地もある。だが、数字を見れば、批判は避けられないだろう。リーグ上位10チームで最多となる黒星の数(4)だけではない。得失点差はトップ10で唯一のマイナス。総得点は9位タイ、失点数が10位タイと、中位が妥当な成績なのだ。

チーロ・インモービレ(ラツィオ/11得点)、パウロ・ディバラ(ユヴェントス/10得点)、マウロ・イカルディ(インテル/9得点)、エディン・ジェコ(ローマ/7得点)、ドリース・メルテンス(ナポリ/7得点)と、上位勢のエースがこぞって好調なのと比べ、ミランはスソの3ゴールが最多。ニコラ・カリニッチと“うれしい誤算”パトリック・クトローネが2得点で、アンドレ・シウバはまだ得点できていない。

レオナルド・ボヌッチの加入で期待された首脳陣も大苦戦。18日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』によると、8試合で13失点は、13-14シーズンと並び、2015-16シーズンの14失点に続く過去20年のミランでワースト2位の数字だ。

ラツィオ戦で4失点した際は、ボヌッチを生かす3-5-2にフォーメーションを変えるべきとの声が高まり、モンテッラ監督もELオーストリア・ウィーン戦から実践した。だが結果は、公式戦でそれまで7試合5失点(平均0.71)だったのが、8試合で11失点(同1.37)と悪化している。

◆定まらない土台

直近の公式戦5試合で1勝1分け3敗という成績に、これらの数字が加われば、指揮官が矢面に立たされるのもやむを得ない。特に指摘されるのが、モンテッラ監督がメンバーを固定できていないことだ。

例えば、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のセバスティアーノ・ヴェルナッツァ記者は「10月もだいぶ過ぎており、モンテッラの責任は明白」と指摘。『calciomercato.com』のダニエレ・ロンゴ記者は「10月22日(次節)になるというのに、シーズンを築いていく土台となる11人をまだ見つけていないなんて考えられない」と断じた。

実際、モンテッラ監督は18日の会見で「チームにとって正しい服を見つけているところだと確信している」と、まだ模索中なのを認めている。3バック続行か、4バックに戻すべきか、右ウィングがベストとされるスソの起用法、中盤のメンバー構成…課題は山積している。

◆上層部に漂う暗雲

大半の顔ぶれが変わっただけに、時間が必要なのは言うまでもない。だが、結果が伴わなければ、その時間がなくなるのもカルチョの常。ダービー敗戦後に指揮官への信頼を強調したミラン首脳陣だが、AEKアテネ戦の試合前には、ミラベッリSDが「誰しも時間は限られている」「リスクは我々の仕事」と、モンテッラ監督にとって重圧となるコメントを口にした。

さらに、試合でもミラベッリSDは後半途中にスタンドからピッチサイドに降り、ベンチの近くで行方を見守った。現場の面々にとってプレッシャーになったことは容易にうかがえる。サンプドリア戦後の叱責に批判の声もあったミラベッリSDだが、今回の一連の言動も議論を呼びそうだ。

一方で、モンテッラ監督もフロントに苦言を呈している。ミラベッリSDが「サンプドリア戦やダービーの前半は存在せず、ローマ戦は70分でピッチを去ってしまった」と不満をこぼしたのに対し、「同意できない」ときっぱり。「誰だって試合を通じてベストでいてほしいが、グループとはたくさんのステップを経てつくり上げるものだ」と反論した。

ミラベッリSDとの関係は良好と強調したモンテッラ監督だが、上層部の空気が重くなっているのは想像に難くない。少なくないメディアが、モンテッラ監督の立場が危うくなり出したと伝えている。

◆次戦は勝利必須?

現実には、直近の監督交代は良策ではないだろう。来週はミッドウィークにもリーグ戦が開催される。過密日程の中での指揮官変更は、さらなる混乱を招きかねない。ただ、ショック療法を狙う幹部が存在するのも事実だ。なにより、何が起きるか決して分からないのがサッカー界だ。

確かなのは、22日のジェノア戦で白星が求められるということ。モンテッラ監督はこの苦境を乗り越え、中身が一変したワードローブからベストのコーディネートを探し当てられるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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