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能登地震 中国のアナウンサーが「日本への報い」と発言 一方で被災地へボランティアに向かう中国人も

中島恵ジャーナリスト
(提供:防衛省統合幕僚監部/ロイター/アフロ)

中国海南省のテレビ局の男性アナウンサーが、石川県能登半島で発生した大地震について、福島第一原発の処理水放出の問題とからめ、ネット上に「(地震が起きたのは)日本への報いか。日本に7.4級の地震が発生。2024年、日本は暗雲に覆われるだろう。核汚染水を海に排出してはならない」という趣旨の動画を投稿していたことがわかった。この動画を受け、勤務先のテレビ局は1月2日、調査のため、このアナウンサーを停職処分にしたと発表した。

SNS上にはさまざな投稿が飛び交う

中国のSNS上でもこの動画は大きな話題となっており、物議を呼んでいる。SNSの投稿を見ると、男性アナの発言を「よくぞ言った」と支持するような発言や、日本の大地震を揶揄したり、喜んだりするようなコメントがあった。

大地震の翌日には羽田空港で日本航空(JAL)の旅客機が海上保安庁の航空機と衝突し、炎上する事故が起きたが、これについても重ねて日本の不幸を喜ぶようなコメントが増えた。

だが、「メディアにいる人間がこのような発言をしていいのか」「他人の不幸を喜ぶなんてひどい」「2日連続でこのような惨事が起きて、いま、日本人はどれほど悲しんでいるだろうか。これ以上、被害が大きくならないように願っています」という発言や、お祈りの絵文字などを投稿する人も多かった。

とくに、日本に住む中国人は、被災情報を中国語に翻訳し、ウィーチャットやウェイボーなどのSNSに積極的に投稿。北陸地方の地図などを示しつつ、被災地に住む中国人の情報や日本での報道内容、余震、避難所などの情報を中国に住む友人らに発信するメディアの役割を一生懸命つとめている。

JAL機からの脱出を称賛

日本航空の旅客機(516便)から乗客乗員379人の全員が無事に脱出できたことについては「さすがは日本だ」「日頃の訓練の成果。これは奇跡だが、奇跡ではない。なぜなら、これが日本人だからだ。本当によかった」と日本を称賛。

機内で客室乗務員や乗客が冷静に対応している姿を撮影した動画に「大震災のときもそうだが、いざというときの日本人の行動は本当にすばらしい」というコメントを添えて、中国の友人に流している人もいた。

能登の大地震について、東京に住む筆者のもとにも、北陸地方と東京との距離感がよくわからない友人から「大丈夫ですか?無事ですか?」との直接メッセージが多数入った。日本に友人がいる中国人、日本留学経験者、日本に旅行に来たことのある中国人などはとくに心配してくれている。

被災地にボランティアに向かう中国人も

在日中国人の中には、大地震の一報を受け、早速ボランティアのメンバーをSNSで募り、1月2日の深夜に支援物資を調達して、東京から石川県に向かった人もいる。

また、昨日から、彼らをはじめ、在日中国人のSNSには「山川異域 風月同天」という言葉が、まるで合言葉のように飛び交っている。これは2020年、新型コロナウイルスが最初に中国で流行したとき、日本から中国に寄贈したマスクなどの物資の段ボール箱に書かれていた漢詩だ。この言葉に多くの中国人は感動した。

意味は「山河は異なるが、風、月、天は同じ=離れていても、私たちは繋がっている」で、唐招提寺を創建した鑑真和上につながる。被災地となった石川県、富山県、新潟県などの人々にも、あのとき、自分たちが受け取った言葉と同じ気持ちを届けたい、恩返ししたいと感じ、SNSにこの漢詩を多数書き込み、一刻も早い復旧を祈っている。

日航機と海保庁の衝突炎上事故で、中国人が乗務員の冷静な避難誘導以上に感動した「あること」

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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