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河川敷でヤミ畑、勝手畑を作っているのは中国人? 彼らはどこからやってきたのか

中島恵ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

テレビ局の情報番組などで、ときどき取り上げられる河川敷でのヤミ畑、あるいは勝手畑、不法耕作と呼ばれる問題。

テレビ局のリポーターがマイクを向け「どうしてここで畑をやっているのですか?違法ですよ」などと声を掛けるのだが、相手はリポーターを無視するか、平然としている。彼らは一体、どのような人々なのだろうか。

国有地での耕作は違法だが

番組内では、相手の顔はぼかしており、わからないようになっているが、放送される音声を聴くと、日本語がたどたどしい外国人であることが多い。日本人の場合もあるが、その発音や中国語交じりの日本語から、レポーターは推測で「中国人のようですね」という。

国有地である河川敷に入り、そこで勝手に畑を作ったり、果樹を植えたりすることは河川法違反にあたり、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられるが、こうした行為は全国各地で行われており、折に触れて、テレビ局や新聞などのメディアなどで取り上げられている。

行政の担当者が「ここに畑や小屋を作ることは違法です」という看板を立てたり、ひどい場合は直接警告することもあるが、違法な耕作があまりにも多いため、放置されている場合もある。

河川敷で勝手に畑を作ると、土が柔らかくなり、洪水などのときに水の流れが変わり、危険になることもあると言われ、取り締まりを強化している地方自治体もある。

こうした場所で畑を作っているのは本当に中国人が多いのか、公式なデータなどがないので実態はわからないが、中国人ならば、一体どのような人々なのだろうか。

労働者として来日

いくつかのニュース動画で確認してみると、「日本にきて20年くらい」などと答えていて、年齢は60代以上が比較的多いようだ。あるいは、その反応から、リポーターを無視しているわけではなく、日本語がほとんどわからず、答えられない場合もあるように見える。

このような人々について、複数の在日中国人に話を聞いてみると、「日本語が少しできるのであれば、80年代後半から90年代に労働目的で日本にやってきて、そのまま20~30年働き、日本に居ついた人々ではないか」と推測する。

バブル当時、日本にいる親戚や知人を頼って、出稼ぎ目的で来日し、飲食店や建設現場などの労働現場で働いていた人々だ。日本語学校などに通った経験はなく、日本語は簡単な会話しかできないという人々だ。

親族を頼って来日

もうひとつ、日本語がほとんどできないという人は、ここ数年以内に、日本にいる親族を頼って来日した人々だ。

中国人は国内、海外にいても共働きが多く、子育てを祖父母に頼ることが一般的で、そのために呼び寄せられた祖父母たちである可能性だ。年齢は若ければ50代で、60代や70代もいる。コロナ禍で一時、来日はストップしたが、いまは再び増え、中国人が多く住む団地などで、子守りをして暮らしている。

彼らは子どもに教えられたスーパーに行って買い物をしたり、孫の保育園の送迎をしたりしているが、それ以外の時間を利用して、畑を作っているという可能性だ。

考えられるのは、こうした場所で勝手に耕作をしているのは、中国でもかなり内陸部の農村出身者であることだ。

都市出身の中国人ならば、来日しても、畑仕事をしようなどとは考えないし、違法であることも当然わかっているが、農村出身者ならば、そうしたことがわからず、単純に、自分で野菜や果物を育てたいと考える人もいる。中国でもそうやって暮らしてきたからで、悪いことだという認識がない。

そこで思い出したのは、中国の地方の工場に足を運んだとき、工場内のわずかな空き地や植え込みの隅っこにキュウリやナス、トウモロコシなどを「個人的に」植えている人が少なくないことだ。

そこは工場の敷地内であり、中国でも勝手に耕作などを行ってはいけない場所だが、彼らは全然平気。とがめられることもないので、堂々と水やりなどをしていた。そうした経験から、日本でも同じようなことをしてしまうのだろうか、とふと考えさせられた。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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