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中国で空前のパンダブーム 中国人に人気のパンダ「和花」は他のパンダとどこが違う?

中島恵ジャーナリスト
中国でいちばん人気のパンダ、和花(ホーファ―)(中国の百度図片より筆者引用)

大型連休はパンダのふるさと、四川省が人気

日本同様、中国でも4月29日からゴールデンウィークを迎えており、今年はコロナ前の水準を上回る、約2億4000万人が移動する見通しになっている。

中国の「大衆点評」の統計によると、今年の国内の人気観光地は重慶(四川省)、西安(陝西省)、長沙(湖南省)、成都(四川省)、武漢(湖北省)の順となっている。

このうち、四川省が2都市ランクインしていることが注目されるが、四川省といえばパンダのふるさと。今年、中国では、若者を中心に、かつてないほどのパンダブームに沸いており、パンダ見たさにわざわざ四川省を訪れる人が後を絶たないという現象が起きている。

中でも人気なのが、成都ジャイアントパンダ繁殖基地にいるメスの和花(ホーファー)だ。

和花がいる同基地は連休初日からの3日間で18万枚の入場券が完売した。

あまりの人気ぶりに、和花を見られる時間は「3分間」だけと時間制限が設けられたほど。和花はわずかの時間しか見られない「貴重なパンダ」となっている。

なぜ和花(ホーファー)だけが、そこまで人気となったのか。

丸々としていて、愛らしい

和花(ホーファー)の愛称は花花(ファーファー)。お花のように愛らしいという意味だ。

2020年7月に生まれたメスで、双子の弟に和葉(ホーイエ)がいる。父親はアメリカの動物園で生まれ、4歳のときに返還された美男の美蘭(メイラン)、母親は清潔好きな成功(チェンゴン)。今年2月に上野動物園から返還されたシャンシャンより約3歳年下だ。

和花の特徴といえるのが、かわいい顔立ちだけでなく、その身体だ。生まれつき、右後ろ足の裏が外に反っていたことから、歩くのが遅く、成長も遅かった。

パンダが得意とする木登りもあまり上手にできず、好物の竹を食べるのも、かなりゆっくり。そのため、他のパンダに竹を横取りされてしまうこともしばしばある。

歩く姿もヨチヨチしていて、見た目は双子の和葉に比べてずいぶん小さい。

だが、丸々としていて、かわいらしく、どっしりと座る姿はファンの間で「まるでおにぎり(飯団)やお団子のようだ」と形容される。性格は人懐っこく、観光客がそばに近寄っても、物おじせず、愛嬌を振りまいている。

他のパンダと違う

そうした見た目のかわいらしさ、身体の小ささ、足が不自由でも健気に遊ぶ姿が、ここ1~2年、「他のパンダと違う」「かわいらしさが群を抜いている」とSNSを通じて評判となった。

コロナの制限がなくなったことで現地を訪れる人が徐々に増え始め、中国でいま人気のインフルエンサーなどの投稿で火がつき、大人気となったといわれている。

中国のSNSには「『中国の若者の間に、弱いもの、小さいものを慈しみたい、応援したい』といった優しい感情が芽生えていることも花花人気と関係しているのでは」といった分析もある。

中国人のファンが投稿した和花の写真(芒果媽媽のSNSより筆者引用)
中国人のファンが投稿した和花の写真(芒果媽媽のSNSより筆者引用)

アイドル並みの人気ぶり

中国の微博(ウェイボー)や動画などで「和花熊猫」(パンダの和花)と検索してみると「外見」「歩くところ」「食べるところ」など“項目別”に分かれており、とくに歩く動画が人気がある。

SNSのフォロワー数は約65万人と人気アイドル並みで、ハッシュタグをつけて、自分が成都を訪れて撮影した和花の写真や動画、イラストなどを投稿している人が多い。

実際に成都を訪れた人の投稿を見てみると「こんなにパンダをかわいいと思ったのは初めて。花花は私にとって特別な存在」などと書かれていた。

中国には今年2月に日本からシャンシャンが、4月にはアメリカからヤーヤーが返還され、国内で大きく報道された。

日本ではシャンシャンが大事に育てられ、大勢のファンに見送られたことが中国でも評判となったが、皮膚病を患っていたヤーヤーには心配の声が上がるなど、パンダ自体への関心も高まっている。

中国で爆発的なパンダブームが到来?きっかけはシャンシャンの返還と日本人のパンダ愛

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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