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チェコ選手だけじゃない 「日本のお菓子は世界一美味しい」と訪日外国人が賛美する理由

中島恵ジャーナリスト
チェコ戦での佐々木朗希投手(写真:CTK Photo/アフロ)

3月11日、WBCのチェコ戦で、侍ジャパンの佐々木朗希投手がチェコのエスカラ内野手に死球を当ててしまった件で、佐々木投手がエスカラ内野手の宿泊先ホテルを訪れ、お詫びに日本のお菓子を持参したことが大きな話題になっている。

報道によると、佐々木投手は13日早朝、エスカラ選手をたずね、自ら購入した両手いっぱいのロッテのお菓子を手渡し、改めて謝罪したという。

これに対し、エスカラ選手は「謝罪にきてくれるなんて信じられない。日本人は本当にすばらしい。朗希に会えてよかった」とコメント。

その後、チェコの監督、選手全員でお菓子を分けて食べ、「日本のお菓子は本当に美味しい」と喜んだことが伝えられている。

佐々木投手がマウンドで謝罪しただけでなく、わざわざお菓子を持参してお詫びするという心配りに、チェコ選手だけでなく、日本人も感激しているが、今回、持参したお菓子の中身にも注目が集まっている。

袋いっぱいのお菓子を持参

報道によれば、お菓子はロッテの『コアラのマーチ』などのチョコレート菓子やキャンディーなどだったという。

透けているビニール袋からは、ほかに『アーモンドチョコ』、『キシリトールガム』、『ガーナチョコレート』『パイの実』などのパッケージが見える。ロッテの商品の中でも定番で、とくに人気のお菓子ばかりだ。

もちろん、佐々木投手は千葉ロッテマリーンズの所属なので、ロッテの商品を持参するのは「当たり前」かもしれないが、持参したのが高級なお菓子ではなく、コンビニやスーパーで誰でも買える庶民的なお菓子だったことが、より一層さりげなく、相手が恐縮しないように気遣いをしている、として注目されている。

今回、WBCで日本を訪れた他国の選手たちも、日本の焼き肉弁当やお菓子、食事を「美味しい」と絶賛しているといわれるが、これは日本のインバウンドの魅力として、日本人が改めて認識するべき事柄だといえるだろう。

コンビニで買えるお菓子が外国人に人気

コロナ禍前の2019年、訪日外国人観光客は約3188万人だったが、最も多かったのが中国(約959万人)だった。次いで2位が韓国(約558万人)、3位が台湾(約489万人)、4位が香港(約229万人)、5位がアメリカ(約172万人)の順だった。

とくに中国など東アジアからの観光客が多いことが目につくが、彼らが日本で買っている食べ物の中で、意外に人気があるのが、コンビニなどで気軽に購入できる低価格帯のお菓子なのだ。

もちろん、出国の際、空港などで『白い恋人』など有名な箱入りのお菓子も買っているのだが、それはあくまでも誰かにあげるプレゼント用だ。

自分や家族のための土産として人気なのは、コンビニやスーパー、『ドン・キホーテ』などの店で大量買いできる「立派な箱に入っていないお菓子」なのだ。

数年前、上海に行く際、現地の友人に「日本のお土産は何がいいか?」と聞いたところ「コンビニで売っているお菓子全部」という答えが返ってきて、驚いたことがある。

その友人は以前、日本に住んだことがあり、「日本のお菓子は世界一美味しい。それに、コンビニでお菓子を数百円以上買うと、無料でもらえる限定のおまけも好き。あれは海外では絶対に手に入らないものだから」といっていて、感心したことがあった。

日本人がいつでも買えるものこそレア

昨今、中国でもネット通販で日本の箱入り菓子などは手に入るようになった。日本の空港で売っているお菓子は彼らにとって見飽きたものだ。

だが、コンビニのお菓子や、駄菓子などは中国のネットではあまり手に入らない(一部、日本の菓子メーカーが中国で現地生産しているチョコ菓子などもあり、それらは手に入るが、味が微妙に違うと彼らはいう)。その上、新商品も次々と発売されるので、目新しい。

そのため、日本人にとって、いつでも、どこででも買えるお菓子などの商品こそ、逆にレアであり、外国人に喜ばれるのだ。

今回、佐々木投手がチェコの選手に渡したプレゼントは、本人の「謝罪したい」という気持ちから自然に生まれたものだが、奇しくも、日本のすばらしいお菓子文化を海外にアピールすることにもつながったのではないだろうか。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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