隔離撤廃の中国 今年の春節、中国人観光客は日本に戻ってくる?
1月8日、中国はゼロコロナ対策として入国の際に義務づけていた隔離措置を撤廃した。これにより、早くも中国人の海外への出国ラッシュが始まっている。
1月21日から始まる春節の大型連休中、果たして中国人観光客は日本に戻ってくるのだろうか?
出国が始まったが……
1月8日、中国のSNSや動画などを見ると「3年了」(3年だ)という言葉がさかんに飛び交っていた。
「3年経った(3年も過ぎた)」「3年も待ったんだ」といった意味合いを含んでいるようだ。タイやニュージーランドなど、海外の空港で中国人家族が再会して抱き合い、感動の涙を流している動画などが中国では拡散されている。
北京や上海の空港でも、出国カウンターに長蛇の列ができ、この日を待ちに待っていた中国人が次々と海外へと出発した。
日本へ行きたいという人も多い。
日本は人気の旅行先
1月5日、中国のインターネット旅行最大手、トリップドットコム(携程集団)の発表によると、春節期間中、海外旅行予約件数は昨年比で6.4倍に増えた。
同社が発表した「2023春節旅游市場予測報告」によると、人気の海外旅行先は、タイ、オーストラリア、日本、フランス、カナダ、ニュージーランド、香港、マカオなどとなっている。ほかに、シンガポールやマレーシア、カンボジアなども人気だ。
日本については、品質がよく、安い商品を「爆買い」したい、日本の温泉旅館に泊まってリフレッシュしたい、といった欲求が非常に強い。
ただし、そこにはまだ足かせがある。
中国政府は海外旅行の規制を100%解除しているわけではない。日本に関していえば、団体の観光旅行はまだ再開されていない。
コロナ前の2019年、日本への観光客の7割はすでに個人客だったので、団体客は主流ではない。だが、個人客もコロナで停止していた観光ビザの申請を新たに行う必要がある。新規の観光ビザの発給はまだ開始されていないので、取得には時間がかかる。
そのため、観光ビザを取得してやって来られるのは、早くて3月のお花見の頃か、5月のゴールデンウィークの頃になるのではないか、と現地では見られている。
中国での隔離撤廃の決定後、すぐに来日できるのは、パスポートを所持しており、航空券が高額でも、日本に住む家族や親戚を訪問したい人や、有効なビジネス関連のビザやマルチビザなどを所持している比較的富裕層が多いことが想像される。
まだ様子見の段階か
また、今はまだ中国国内のコロナの感染状況が深刻化している最中だ。
1月9日、内陸部の河南省では、感染率が89%に達したと発表。すでに北京はピークアウトしているものの、8割以上の人が感染し、上海も感染爆発中だ。街には大勢の人が繰り出しているが、同時に病院の病床は逼迫し、高齢者を中心に死者も増加している。
そのため、「まだ(海外に行くのは)早い。様子見をしている段階」といった意見もある。
1月9日の人民網の記事によると、各航空会社と研究機構の分析では「今年の春節期間中の出国は、大幅には増えないだろう。フライトの便数は6~7月にかけて増えることが予想される。その頃になれば、コロナ禍前の水準に戻るだろう」とある。
私の友人、知人も「この春節はまだ感染拡大が終わらない。久しぶりに実家に帰るか、できるだけ人の少ないところに旅行するか、自宅の周辺で過ごす」といった人が多い。
むろん、若者の中には今年こそ春節に遊びに行きたいという人もいるだろうが、中高年以上は慎重だ。
今年の春節の民族大移動(春運)は昨年の2倍の約21億人に上るといわれており、前述の報告書によると、人気の国内観光地トップ10(北京、上海、三亜、広州、成都など)も発表されている。しかし、コロナ禍前の2019年(約30億人)の水準に比べれば、まだ7割程度と少ない。
移動の規制がなくなったとはいえ、国内線の航空券の価格やホテル代もかなり高騰していることもあり、やや控えめな帰省や旅行になりそうだ。
日本旅行に関しては、日本側の水際対策の影響もあるだろう。
日本政府は中国からの直行便を成田、羽田、関空、中部の4空港のみに限定し、入国者に対し、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出の義務づけ、抗原定量またはPCR検査を実施している。陽性となった場合は、5~7日間の隔離措置となる。
このような理由から、春節の訪日旅行、そして「爆買い」はまだ本格化する可能性は低いが、一定程度、人数は増える見込みだ。
冷え切ったインバウンド市場にとっては、ゴールデンウィークや夏休みに向けて動き出すための試運転の時期、といえるかもしれない。