2021年12月23日からロックダウンが続いている中国・西安市で、市民の間から不満や批判の声が高まっている。それでも市政府や行政担当者は規制を強めている。背景には何があるのだろうか?

ドアを溶接して閉じ込める

2022年1月4日、西安市から30キロほど離れた咸陽(かんよう)市で、住民が西安市から戻った人の家のドアを勝手に針金で固定し、溶接して閉じ込めている動画が中国のSNSで拡散された。

中国メディアによると、その家の住人が隔離期間中なのに西安まで外出したため、地元の人がこのような強行に出たという。

これを問題視した村役場の担当者の指示で封鎖は解かれたが、公開された動画には批判が殺到した。

公開謝罪文の読み上げ

1月6日には、西安市内の団地から外出した男性が、団地の前で謝罪文を読み上げている動画が中国のSNSに投稿された。

この男性は外出制限されているにもかかわらず、食料を買いに外に出た。そのことを団地の担当者から厳しく注意されたが、それだけでなく、大勢の人がいる前で反省の謝罪文を読み上げさせられたのだ。

「何度も外出したのは、家に食べ物がなかったからです。コロナと戦っている皆さんに対し、本当に申し訳ありません」

この動画が拡散されると、「食料がなくてみんな困っている……あまりにもかわいそうだ」「わざわざ公衆の面前で謝罪させるなんて、まるで文革時代のつるし上げと同じではないか」といった批判が殺到。

また、「団地の担当者にも責任がある。担当者こそ謝れ!」とこの男性を擁護するような声も挙がった。

病院が妊娠8カ月の妊婦を拒否

悲劇として報道されたのは1月1日、妊娠8カ月の妊婦が、体調を崩して市内の病院に駆け込んだが、PCR検査の陰性証明を所持していなかったことを理由として、病院の外で2時間待たされた挙句、死産となったことだ。

この問題を妊婦の身内がSNSで告発。病院の前に置かれた小さな椅子にうずくまる妊婦と、足元に流れる血だまりの写真を投稿すると、SNSでは「非人道的だ」「行きすぎだ」という批判が大量に書き込まれた。

この投稿はすぐに削除されたが拡散され、我慢を強いられている多くの西安市民の怒りに火をつけた。

これ以外にも、食料が足りず外出しようとした人と団地の担当者や警備員、コロナ担当者などが団地の入り口付近で小競り合いをしたり、住民が殴られたりした事件が各地で頻発している。

問題の多くは各家庭に食料が十分に行き届いていないこと、コロナ以外での病院受診がほぼ禁止されていることなど、市民の日常生活がいちじるしく脅かされていることにある。

感染者数は徐々に減少する傾向に入っているといわれているが、それでもなぜ、政府の規制はどんどん強まっているのか。

背景には地方政府や町・村の担当者、その末端組織である団地の担当者などの責任問題がある。

処分を恐れる当局の担当者

妊婦の事件で西安市政府は「広範な懸念が生じ、社会に悪影響が及んだ」として妊婦を拒んだ病院の院長を停職処分、関与した診療担当者を解任したと発表した。

ここまで批判が挙がっていても当局が規制の手を緩めないのは、もし、さらに感染が拡大した場合、組織の担当者自身が厳しく責任を問われ、解任などの処分を受けるからだ。

つまり、自分が処分されることを恐れて、自分がかかわる組織の規制をどんどん強めてしまうということだ。

前述したように、ドアを溶接するなどの行為がSNSで拡散され、批判を浴びた際、村の担当者はそれをやめるように指示したが、もしそこまで批判されなかったとしたら、担当者はこの問題を放置していた可能性もある。

規制を厳しくすればするほど、村の担当者は自分を守ることができて「安心」だからだ。

今回、西安市でロックダウンが始まった際、市の幹部と担当者は中央政府から厳しい処分を受けた。2020年にロックダウンされた武漢市でも同様だった。

中央政府から省、市、さらに町や村、各団地の担当者に到るまで、末端の行政組織であればあるほど、処分による打撃は大きく、彼らが受けるプレッシャーも大きくなる。

そのため、市民の声にかかわらず、末端組織は自らの保身のため、規制を厳しくしてしまうという構造なのだ。

北京冬季五輪の成功のため

むろん、もう1つの大きな理由として、2月4日から開催される北京冬季オリンピックへの影響を懸念しているということもある。

西安市から北京市までは1000キロ近くも離れているが、西安の感染が拡大している中で五輪を開くわけにはいかない。政府のメンツがかかっているのだ。

こうした背景があり、西安市でのロックダウンは厳しいものになっている。中国人のSNSには「すべては北京五輪の成功のため、ゼロコロナのため、西安で悲劇が起きている」という声もある。