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実はネイティブレベル 卓球・石川佳純の中国語 もちろん張本智和はバイリンガル

中島恵ジャーナリスト
石川佳純選手(写真:ロイター/アフロ)

東京五輪の種目の中でも、ひときわ注目を集めている卓球。残念ながら、卓球女子を牽引してきた石川佳純は準々決勝で、卓球男子の張本智和は4回戦で敗退してしまったが、2人は「あること」で注目を集めた。

それは流暢な中国語だ。

石川佳純と張本智和が自ら通訳 敗退後見せた神対応に「おもてなし」の心

28日、石川佳純は敗退後に受けた中国語の質問に対し、そのまま中国語でスラスラと答えた。本来、通訳される予定だったが、石川はその場で自ら日本語に訳した。張本も同様に、中国語での質問に中国語で答え、自分で日本語に翻訳した。

このことが「神対応」だとしてニュースになったが、これまでに行われた卓球の国際大会でも、2人は同様のことを行っており、今回の「通訳」は初めてのことではない。むしろ、2人にとってはごく自然に行った行為だった。

なぜなら、石川の中国語はネイティブに近いレベル、張本は日本語と中国語のバイリンガルだからだ。

10代後半から中国語がペラペラに

石川が中国語を話せることを知っている人は多いと思うが、彼女がいつから、どのように中国語を学んだのか。過去の報道を見ても、明確なことはわからない。

これも、すでに多くの人が知っているように、石川は卓球選手だった両親の影響で、幼い頃から卓球を習い始めたが、福原愛や伊藤美誠のように、2~3歳から徹底的な英才教育を受けてきたわけではなく、とくに中国との「深い関わり」があったわけでもない。

しかし、これまでのインタビュー映像などを振り返ってみてみると、石川が試合前後の記者会見などで中国語を話しているのは2010年頃から、つまり、石川が17歳くらいだった10年ほど前からのようだ。

むろん、正確にいつから、ということは断言できないが、10代になって、本格的に卓球の練習をしていく過程で、中国人コーチと接する機会が増えていき、中国語をマスターしなければならない状況になっていったと思われる。

石川自身も、インタビューなどで「中国語を特別に学んだことはない」と話しており、わざわざ学校で学んだというよりも、卓球用語を中心に、独学で実践的に学ぶうちに、自然と身に着いたようだ。

彼女が中国語を話す動画などを改めて見てみると、ほぼネイティブに近いレベルだ。

福原のように、幼い頃から中国に行く機会があったわけではないが、石川も試合などで中国を訪れ、中国人コーチや中国人選手と交流したことで、自然な表現を学んでいったのだろう。石川は中国のウェイボー(微博)も開設。57万人以上ものフォロワーがおり、中国語が流暢な石川のファンも多い。

張本の両親は中国出身

一方、男子卓球の張本智和の場合、両親が中国出身であることは、すでに多くの人々に知られている。

両親は四川省出身で、父親は卓球コーチ、母親は元卓球選手で、張本は日本で生まれた。張本は2014年に日本の国籍を取得しているが、家庭では中国語を話す機会も多く、インタビューを聞いてみると、当然ながら、中国語はネイティブだ。

また、仙台市の小学校に入学し、学校教育はすべて日本で受けているため、日本語もネイティブ。つまり、張本の場合は2か国語が流暢なバイリンガルとして育った。そのため、日本語も中国語も問題なく、インタビューはどちらの言葉でも受けることができる。

日本には現在、約100万人の中国人(日本国籍を取得した人も含む)が住んでおり、張本のように、日本生まれ日本育ち、という若者も少なくない。

しかし、そのような状況の場合、学校の授業は日本語、周囲の友だちも日本人であることが多いので、日本語のほうが流暢になり、両親の母国語である中国語はどちらかといえば苦手、というケースが多い。

しかし、張本は両親から卓球の英才教育を受け、中国との関わりもずっと深かったことからバイリンガルになったのだろう。このようなことから、今回の五輪でも「通訳を買って出る」といった行為が、自然とできたのではないだろうか。

参考記事:

世界最強なのは変わらないが…金メダル獲得の陰で中国人が心配する「国技・卓球」人気の衰え

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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